本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== もうだいぶ前になりますが、犬の飼育場にかんする事件を扱ったことがありました。日本に輸出する犬をしばらくアメリカ側管理しているビジネスがあったのですが、犬が怪我をしたり、病気にかかったりして、日本側で引き取り手がいなくなってしまったのですね。そんな事件にかかわっていたのです。詳しいことは書きませんが、事件はこじれて、日本側では引き取らない、そしてアメリカ側では引き取ってもらわなくては困るということで、押し合いへし合いになりました。 また、時間が経つにつれ、両当事者とも「いらない」という態度をあらわにしてきました。何度も交渉を続けましたが決裂、ミーティングも平行線になりっぱなしです。 日本側の主張は、いったん病気や怪我をしてしまうと「商品価値」がないというのですね。私は勝手にそんなに深刻な病気や怪我だと最初は勘違いしていました。 事件の進行にあわせて、その問題の焦点となっている犬を見に行くことになり、出張をしました。その飼育場にはたくさんの犬がいました。私や他の弁護士が入っていくと、警戒したのか「わんわん」の大合唱です。アメリカだから「バウワウ」でしょうか。しっぽをふっているやつもいれば、じっと見ているやつもいます。一通り、日本側の「引き取りたくない」という立証のための飼育場の衛生面や設備などを観察しました。 びっくりしたのは、思っていたほど汚くないし、逆に管理に重大な過失があったとは一見しては見えなかったことです。もちろん口には出しませんが、目にとまる点をじっくり検分しました。 次は問題となっている犬を観察しました。ところが、すべての犬は元気なんですねぇ。大きいのも小さいのもしっぽをふって人なつっこく振る舞っています。怪我をした犬というのも元気に走り回っていました。病気で毛が抜けたという犬もほとんど治っているようです。「証拠」であるし「商品」であるからと触らせてはもらえませんでしたが、遊べるものならすぐにでも遊んであげたい犬ばかりでした。 出張から帰ってきて、記録を整理していると、どうみても犬の「商品価値」というものは、病気もなし、怪我もなしというまったくパーフェクトな状態でないと劇的に下がってしまうという記述を見つけました。私はそれを見て考え込んでしまいました。 犬の「価値」って何なんだろうって。なんでも、コンテストなどに参加するには「厳しい」基準があるんだそうです。人なつっこいだけではダメなんですね。「犬の世界」というのは厳しくて、例えば一回ドッグフードの宣伝に出ると何年間かは他の広告の対象にはなれないなどというルールもあるのです。これでは「人間の欲の世界」ですよね。裁判の記録を読めば読むほど気が滅入ってきてしまいました。検分してきた犬たちのことが頭から離れなくなってしまったのですね。人間が犬を「商品」として扱うために、人間の欲のために、裁判をしているのです。考え込んでしまいました。犬にとってはいい迷惑ですよね。 私は動物が一般的に好きなのですが、特に犬が大好きです。私の家では私が生まれたときから、雑種のゴローちゃんというのがいて、私が赤ちゃんの時に突然病気になったらしいのですがゴローちゃんは家の人に吠えて知らせてくれたそうです。私が良く覚えているのは、シロちゃんという秋田犬のことです。私が小学生の頃からもらわれてきて、家の庭でよく走り回っていました。毎日、朝晩は私が散歩に連れて行き、近かった多摩川の河原で時間を忘れて遊んだものです。いつも一緒にいました。そのシロちゃんが私の家が引っ越すのを境にもらわれていきました。最後にもらわれていく朝、私がドッグフードをいつものようにあげると、おいしそうに食べましたが、悲しそうな顔をしていました。車の後部に載せらたシロちゃんは、見送る私の顔をじっと見ていました。以後、シロちゃんとは会っていませんが、もう他界したのではないでしょうか。 今でも夢でシロちゃんがよく出てきます。一緒に遊んでいたり、ご飯をねだっていたり。シロちゃんがいなくなった時を境に、私はもう犬を飼えなくなってしまいました。お別れをするのがあまりにも辛すぎます。あんな思いをするのはもうだめだと思います。年をとって、私の方が先に死ぬくらいになったら、また飼いたいと思っています。 話を戻して・・・そんなバックグラウンドがあるため、この事件に対して私は自分がなぜか「冷めている」部分があるなと思いました。結局は「お金で」片づきましたが、事件が当事者間で解決しても、なんとなく私の心にはしこりが残っていました。人間たちは満足していたみたいだけど、犬たちはどうなっちゃったんだろう・・・。しばらく経って、その飼育場に人を介して連絡してもらいました。話ではなんとか飼い主が決まったようで、安心したのを覚えています。あの人なつっこい犬たちが今でも幸せに暮らしているといいな、なんて思い出します。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== この原稿が出る頃は、母の日が過ぎているのでしょうか[過去記事担当注:本記事は最初、母の日の頃に配信されました]。皆さんはお母様がいらっしゃったら、何をしようと考えていらっしゃいますか。また、お母様がいらっしゃらない皆様はどのような思い出を思い浮かべられるのでしょう。私は日本にいる母親に、何を送るかもう考えてはいるのですが、なかなか照れくさいものですな。それでもできるときにするのが親孝行。私が見ている範囲ですけれども、母親というのは本当に大変な役割です。本当に、気持ちと体力が必要ですから、頭がさがります。母親の皆さん、ご苦労様です。 今回はお金の貸し借りについて考えてみましょう。福沢諭吉は「貸すんだったら、あげるものと思え」といったと記憶していますが、個人的になにか経験があったからそういうことを言い出したのかも知れませんね。お金の貸し借りというのは、弁護士をやっていると本当にたくさん出会う人間のつながりの一つです。お金の貸し借りが、人間関係のトラブルの元になることが少なくありませんが、詰まるところ、お金の問題というのは貸す人の度量と借りる人の信用という人間関係に集約されます。社会というのが成り立ち、経済活動を各人が営んでいけるのは、この貸す人と借りる人の利害関係が一致して、お金が転々としているからなのです。信用にもいろいろな形があります。たとえば、銀行というのはどんなにフレンドリーでもドライなところがある機関ですが、それは「お金の価値」を業とするからです。信用貸しは、日本のバブルでない限りほとんどしない、つまり必ず担保を取るのですね。ところが、一般の人達は銀行のように頭が回らないですから、「貸す側」は「借りる側」の人となりを見ることになります。そうすると、どういう商売をしているのか、過去にちゃんと借りたものは返したか、といったポイントを見て判断しようとします。一般の人達は担保を取るということはあまりしません。担保というのは、連帯保証人をつけたり、不動産や動産のその物の価値を把握して、返せない場合にはその価値から返済するということです。要するに担保のない一般的なお金の貸し借りは信頼関係によって築かれているわけです。人間社会というものは、お金を貸した側と借りた側の信頼関係に拠って動いているのですが、日本のバブルのつけが今でもとんでもない人間を生み出しています。 私も事件をやっていると唖然とするような人に出会ってしまいます。 それでも、人間生きていれば、細かくても大きくても人にお金を貸したり、借りたりするわけです。では、お金を貸し借りするときに何に気をつければよいのかを考えましょう。つまるところ、相手が信用できるかできないか、ということはさておいて、担保を取るということに尽きます。土地を担保に取れれば、土地は、歩いてどこかに行きませんから、非常に有効な担保となります。また、貸した金額に見合うもの、たとえば宝石や証券などを実際に預かるというのも一つの手かもしれません。 ちょうど質屋さんのようなものですね。また、借りる人が、なんらかの財産を持っていて、その財産を借りる人が持っていたいが、担保として提供する意思があるのなら、UCCファイリングといって、州の政府に、どの動産に担保をつけたかということを登録しておくことができます。現金を担保に取ることが一番、良いですが、現金を持っている人が人からお金を借りたりすることはあまり無いですよね。銀行口座にお金があれば、その銀行はすぐにその口座を担保にお金を貸してくれますが、それは担保があるからなのです。 担保がなければ、お金の貸し借りは「賭け」になります。生活に必要なお金なら、貸さない方が賢明です。人を信用して貸すとよく言いますが、信用できる借り主だったら基本的になんらかの担保を提供しますよね。担保がない人であれば、どんなに良い人でも、それは賭けになりますから、返してもらうのを期待しないで貸す度量がある方は、そうされたら良いと思います。 弁護士に相談される案件で、ちゃんとした担保があれば、打つ手はいくらでもあるのですが、信用貸しをしてしまうと、何かしてあげたいけど、うむ、とうなってしまう案件が多いものです。また、友情や長年の人間関係も瞬時に崩れてしまうので、お金の貸し借りは本当に気をつけてくださいね。 母の日ということで、私の母の思い出をひとつ。薬というかサプリメントを母から大量にもらったことがあります。忘れもしません、私が弁護士になる試験を受ける数ヶ月前でした。私はあまり、母から手紙やものをもらったことが無いのですが、私が試験の追い込みをするということで、日本からわざわざ錠剤を私に送ってきてくれました。当時、貧乏でしたから、食事も不規則でしたし、2つの法律事務所を掛け持ちして、お金を稼ぎながらの受験でしたので、今から思えば、一日3時間位しか寝る暇がなかったように思います。高い受験予備校と試験費用を働いていた事務所で負担していただいたので、仕事も辞めたくありません。それでも、勉強をよくやった記憶がありますが、何かおいしいものを食べたかといえば、まったく記憶がありません。そんな状況を母に知らせるような野暮な私ではありませんが、毎日の食生活にこの栄養剤はプラスになりました。母は、通院している病院の先生から自分がもらった栄養剤を飲まずに、貯めて私に送ってくれたのです。優しいじゃないですか。ありがたく、朝起きては2錠のみ、昼に2錠のみ、寝る前に2錠のみ、試験も余裕で一発合格できました。母親も喜んで、その栄養剤を私に「横流し」していたことを医師の先生に告白したそうです。そのご老体の先生は、腕を組み、頭をかしげながら、「おかしいな、おかしいな」といったそうなんです。その先生いわく、母に出していた薬は「更年期障害の薬で、私に効くはずがない」。その時は笑って済ませましたが、今考えると何ヶ月もまじめに飲み続けていたので、今後の私の人生になんらかの影響がでないかと、不安が頭をよぎってしまいます。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== アメリカでビジネスを行う上でどのような形にせよ、まず相手方の会社と交わさなくてはいけないのが機密保持契約だ。 機密保持契約によって守られる内容というのは当事者間で設定できるため多岐にわたる。ビジネスの交渉をしているという広汎な内容から、ビジネスモデルや申請を考えている知的財産権の内容など特化したものも考えられる。 どのようなビジネスの展開を考える上でも、実質的なビジネスの内容を協議する段階になったら、まず機密保持契約を結んでおくことが安心だ。 機密保持契約書は一般的にNon-Disclosure AgreementまたはConfidentiality Agreementと呼ばれている。 表題はどのようなものにせよ、必要な情報が組み込まれていれば一応、機密保持契約が成立すると考えてよい。 次にどのような内容が必要か考えよう。 まず、どの当事者間で機密保持を課すのか、当事者を特定する必要がある。 個人でも法人でもよいが、名前だけではなく住所などで特定がされていると安心だ。 次にもっとも大事な内容かもしれないが機密保持の対象となる事柄がすべてカバーされているかチェックしたい。 ビジネスの内容が商品であれば商品名、および商品の属性や性質なども加えておくと明確さが増してよいかもしれない。 会社と機密保持契約を結ぶ場合にはその会社の担当者だけではなく、他の被用者やコンサルタントなど、情報にアクセスしうる人間も機密保持に含ませておくことが望ましい。 機密保持によって相手方に渡した書類、および情報の載ったCDやフロッピーなどもビジネスの終了に伴って返却または廃棄をするという条項も載せておくとリスクの回避になるであろう。 機密保持契約書によって、広汎な範囲の情報が守られるであろうが、基本的に3つのパターンにより、情報が機密保持の範囲外とされる場合がある。 一つ目は相手方が独自に、機密条項に頼らずに開発した情報、2つめにすでに公に周知の事実となった情報、3つ目に機密情報を開示した段階で、すでに相手方が知っていた情報が考えられる。 契約書によっては裁判所から情報開示の命令が出された場合も4つ目の事例として挙げているものもある。 機密保持の契約内容は以上が主要なポイントとなるが、機密保持に違反した場合の処理についても、契約書によって定めておいた方が抑制効果があり、望ましい。 まず、機密保持契約書について解釈の基準となる法律、すなわちカリフォルニア州法によって解釈されるなどという法律の選択を規定する必要がある。 加えて、話し合いで解決できない問題が発生した場合には、訴訟にするのか、仲裁にするのかなどの紛争解決に必要な手段を決めておくことが望ましい。 法廷で争うことになると、基本的にはすべての争いにおける書面などは一般に公開されてしまうので、いくら絞りをかけても公開されてしまう事実があるわけだ。 それに比べて、仲裁(MediationやArbitration)などの方法をとり、訴訟の代わりとすれば、第三者に知られずに、またフレキシブルに解決策を得ることができる。 機密保持契約書はフォーマルな契約書である必要はない。 以上の要件に見合っていれば、通常のビジネスレターのようなフォーマットでも効力は充分であるし、裁判所でも機密保持の内容を認めてくれる。 しかし、重要な商品やビジネスのアイディアを開示する場合には、機密保持の対象を的確に表現するすることが非常に重要になる。 また、契約書が必ずしも長文でなくてはならないという理由はない。 必要な条件が揃っていれば、一ページでも二ページでも充分な機密保持契約書ができるであろう。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 今回は、国際ビジネスの契約上非常に大切な条項とその実務について考えていきたいと思います。 契約書における裁判管轄権(Jurisdiction)と法律の選択(Choice of Law)に関して考えましょう。二国間以上のビジネスにおいて契約書を作成する場合、問題が発生した場合、どの国のどの裁判所で紛争の解決をし、どの国の法律を適用しようかという論点が発生します。例えば、日本とアメリカの企業が契約を締結しようとするとき、できれば自国の法律を使い自国の裁判所で紛争は解決したいということを駆け引きする場合です。もちろん、自分のホームで闘う方がアウェイで闘うよりも心理的・経済的にも有利に働くと考えるのが普通です。ところが、この論点の駆け引きがヒートアップしてしまうと、実際の契約内容とは直接関係ない部分で物別れになってしまう可能性があり、あまり建設的ではありません。 一休さんではありませんが、裁判管轄権と法律の選択の問題を解決するために、いろいろな形でクリエーティブな解決策があります。もちろん、大事な契約書に関して、最悪の事態、つまり訴訟になったときの経験がある弁護士に相談する必要がありますが、企業としても、ある程度のチョイスを用意しておくと、交渉がスムーズにいくことがあります。基本的に以下のポイントを参考にしてください。 まず、裁判管轄権や法律の選択に関する条項のみを見ないで、実際どのような契約の内容なのかを大きな目で見ることが必要です。ものの売買契約、供給契約などでは、契約におけるどちらの当事者がより危険を負担にする事になるのかを考える必要があります。例えば、ものを買う側の当事者としては、ものを受け取りどのようなものかどうかを確認し、瑕疵(カシ)や債務不履行がなかったことを確かめてから代金を支払うという契約であれば、裁判を起こしてまで相手方の債務不履行を争うというシチュエーションにはなり難いわけです。そのような場合には、相手方に裁判管轄権や法律の選択条項を譲ったとしても危険を負担する可能性は非常に低い訳です。 次に、アメリカの裁判所を第一審としての裁判管轄として契約上指定したとしても、法律の選択が第三国、例えば日本などの法律を適用するなどとした場合には、見た目には、当事者間で五分五分のようにも見えます。ところが実際の法廷係争になったときに非常に時間もコストもかかる可能性があります。アメリカの裁判所で、日本の法律を適用しようとする場合には、州の裁判所では陪審裁判を前提とすると非常に難しい場合があり、説得力を欠く場合があります。そういう意味では、実質的に統一した方が両当事者にとって有利という場合がたくさんあります。 第三に、裁判の管轄を決めるということに関してですが、ゼロ・サムという硬直な形で紛争解決を図ることは両者にとって不利益をもたらす可能性があります。契約書というのはいろいろな形で条項を決める事ができますから。まず、陪審裁判は除外するという形で、契約を締結することができます。いかんせん、一般の陪審員にとって契約書の条項の解釈を行うというのは実際的ではありませんし、陪審による裁判の結果というのは往々にして、不安定な場合があるからです。 次に、契約によって生じた損害とその他の場合(不法行為)によって生じた損害を分けて、それぞれの紛争解決方法を指定するという方法もあります。 また、裁判で解決する位であれば、仲裁に持っていくという方法もだいぶポピュラーになってきました。私が最近相手方と詰めた事例では、テレビ会議を開きながら、日本とアメリカでリアルタイムで仲裁をしようという方法も取り入れ、法律の選択も、インコターム(INCOTERM)などの国際通商に関する中立的な手続を使うという形で仲裁を行おうという試みもありました。また、アメリカや日本でまず仲裁をし、不服ならば他の形での解決策をするという二段、三段にもなる方法を指定するということもフレキシブルで良いと思います。また、仲裁をすることにより、裁判で闘うよりも将来の関係がぎくしゃくしなくてよかったという話もよく聞きます。 以上が、非常に基本的になりましたが紛争解決をするにあたり、考えておきたいポイントです。企業の法務部が裁判管轄や法律の選択ということで交渉を行う場合には、大きな目で契約の内容を考えて、さらにフレキシブルな解決方法を詰めていくというのが良い関係を築く第一歩なのでしょうね。 それではまた来月新しいトピックを考えていきましょう。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 今回は「解雇」について考えましょう。ベイエリアで、今直面しているのが不況によるビジネスの縮小、ひいては従業員の解雇という事実です。もちろんベイエリアのみにかかわらず、アメリカでは景気の低迷ということが問題になってきましたね。失業率も増加して、利率を政府が一生懸命下げても火に油状態でした。困ったことですが、一番困るのは、この不況で解雇に直面する従業員、それにその家族などでしょう。最近では「解雇されたのだけど納得がいかない」といった相談の電話をたくさん受けます。それではどういうところに「納得がいかない」のか詳しく聞いてみると、あまり時間を置かずに解雇された、とか収入がなくなり不安となった、といった内容の場合が少なからずあります。ベイエリアではドットコム企業でバブった数年があったわけで、わけがわからず会社が大きくなり、人を雇い、高価な器具を揃えていました。そういう意味で、現在の解雇の波にインパクトを受けているのがベイエリアなのです。 解雇になる前提条件として「雇用契約」というものがあります。雇用契約とは、要するに、労務を提供して、その対価として賃金を受け取るという契約です。労務というとピンとこないかもしれませんが、朝起きて、会社に行き、コンピュータの前で仕事をし、電話の応対をして、上司に報告をして、ミーティングに出席して、時間が来れば家に帰るといったことで、最初の契約時のストライクゾーン内の仕事と考えてください。そういった会社のために行った業務を労務といいます。その労務の対価としてもらう賃金ですが、一時期はストックオプションという形も流行しましたが、基本的には金銭ですよね。各州の政府はこの賃金の支払いに関しては非常に厳しくモニターしています。カリフォルニア州ではDepartment of Fair Employment and Laborなどが賃金の支払いを間接的に監視しています。賃金の支払いに関しては、法律上優先的に支払いを受けられるようにもなっているのです。 賃金支払いは厳しく法律でコントロールされていますから、たとえば、解雇時には、その時までに行った労務に対する賃金は即時に支払いがなされなくてはなりませんし、支払いが遅れた場合には、州政府に申し立てを行い雇用主の支払いを促すということもできるのです。このように、雇用契約には法律上の規制があるのです。 では解雇されるというのは雇用契約を解除されるということですが、どのような内容の解雇が許されるのか、許されないのかを考えましょう。日本では基本的に、30日相当の余裕がなければ解雇はできません。つまり30日前に通知されることになります。カリフォルニアでは基本的に、即日解雇が許されています。雇用契約はすぐに解除できるということなのですね。これはもちろん契約書ではっきり規定されていない場合です。契約書が存在し、解雇の場合は30日前とか、60日前とかに通知をするということが明記されていたらその条項を遵守しなくてはなりません。また、期間が決まっている雇用契約、たとえば1年間などと決まっている場合はその期間中は解雇されるということは基本的にはないわけです。もちろん、他の条項で、解雇事由が記載されていればその条項に沿った解雇は可能ですね。 契約書がなく口約束での契約(契約書がなくても雇用契約は成立します)に基づいて解雇された場合には、雇用期間を明確に知らされていない場合などは、即日解雇が可能ですが、明らかに法律的なクレームを出せる場合があります。たとえば、今まで働いた賃金を払ってくれない場合(上述)、違法な理由、たとえば、人種差別、性差別、などがある場合、それにセクハラが絡んでいるような場合、違法な会社の行為を指摘したために逆に解雇になる場合などが考えられます。 ただ、良く相談を受けるのですが、ただ上司とウマが合わない、とか会社の業務内容に不満があるというだけでは法律上「違法」となることは難しいことも覚えておいてくださいね。 解雇というのは会社側にとっても気持ちの良いものではありません。「同じ釜の飯を食った」仲なわけですからね。雇用契約というのは継続的に業務を共にするわけですから、ただ単にお金をもらうためだけに仕事をするというのもちょっぴり寂しい気がします。私の事務所では本当に皆さん良く働くのですが、それに加えて皆さん本当に仲が良いのですね。仲間が良いと、仕事もはかどり、対外的にもメリットばかりです。ひとりひとりは個性が強く、髪を染めている人もいれば、お酒が大好きな人もいたり(これは私かもしれない)、サンダルで事務所内をうろうろしている人もいます。ところがいざとなると一人残らず仕事の鬼になるのですね。夜遅くまで、「この株式発行の問題をクリアーしなければ資本充実の原則に反するんだけどなぁ」とか、「この判例によるとこの事件は勝てそうな理由が付けられそうですね」なんて弁護士だろうがアシスタントだろうが喧々諤々で議論しています。あまり夜だらだら飲みにいって話をするということもしませんし、個人の生活は生活として誰も口は出しません。自由な雰囲気だけれどもみんな仕事が好き、そして環境も好きという良い信頼関係ができています。なんか、サザエさん一家みたいなんですね、タラちゃんが走る音は聞こえませんけど。他の法律事務所ではパートナーが実は仲が悪かったり、弁護士が理由もなくえばっていたり、会社のような体系の中で不満を持ったり政治があったりなどと裏では良く聞く話ですが、事務所が信頼関係で結ばれていない状態でよくクライアントとの信頼関係が語れるな、と皮肉に感心することはあります。働く環境ってつくづく大事だな、と最近特に思うのでした。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 今回は、読者の方から「アメリカの契約書では弁護士の費用は裁判に負けた側が払うということがどのような契約書でも含まれていますが、どのような意味があるのでしょう」というご質問をいただきましたので、皆さんと一緒に考えていきましょう。訴訟になると裁判にかかる費用というのは、なかなか高額になるのが通常ですね。ある意味では、訴訟のコストという部分もあるのですが、弁護士の報酬というものも安くない場合が多いのですね。 さて、今回の質問を考える上で、皆さんに知っていただかなくてはいけない法律の一般論があります。まず、契約と契約外の人間関係を簡単に考えたいと思います。民事事件では大きく分けて契約、すなわち約束をしたのに守ってくれないというケースと、契約などはないのだけれど、車を追突されたりして、損害を被った場合に相手方に請求をしていきたいケースにわかれます。 まず、契約に基づかない関係から考えます。 契約に基づかない関係から生じる民事上の請求では、不法行為というコンセプトが代表的なものとして考えられます。 不法行為(Torts)とはなんだというと、世の中にいるだれかが故意や過失を持って、第三者に損害を与えた場合には、因果関係がある限り償いをしなくてはいけなくなる行為をさします。もちろん契約外の関係には、いろいろな人のしがらみを考えられることができます(事務管理、不当利得など)が、ここでは不法行為のみを取り上げて考えていきます。不法行為の代表的な例として挙げられるのは交通事故でしょうか。皆さんが車を運転していますよね。信号待ちをしていると後ろから、車を突っ込まれたとしましょう。この場合、皆さんは怪我をした場合、後ろから突っ込んできた人に怪我の治療費や働けなかったことによって生じた損害を請求することができますね。最初から約束や契約などがないのに、事故が起こったことで皆さんと、後ろから突っ込んできた人の間に不法行為という法律関係が生じるのです。この不法行為というのが契約外関係の代表的な例なのですね。この不法行為などで損害を負った場合には、アメリカでは原則として合理的な範囲で相手方に弁護士の費用を請求することができます。ですから、訴えるときに裁判所に提出する書類の訴状などには、請求の欄に必ず「弁護士費用を請求する」という文章をいれておくのです。 これに対して、契約関係(Contractual Relationship)という法律関係があります。契約といってもいろいろな契約が存在しますが、売買契約などが代表的です。売買契約とは簡単にいってしまうと、皆さんが「ペンを一本100円で売りましょう」と私に言い、私が、それでは「そのペンを売ってください」と言い約束をすることです。100円のペンで訴訟にはならないかもしれませんが、単価が100円でも100万本になればすごい金額になりますよね。もし、皆さんと私がこのようにペンの売買の約束をしたとして、私がお金を払わなかったり、皆さんが私に売ってくれたペンがかけなかったりした場合には、もともと予定していた約束と違いますね。このような「約束が違う」場合には債務不履行責任という責任が生じる可能性があります。自分がやらなくてはいけないことをやっていない場合に責任が生じるのです。アメリカでは、伝統的にこの契約関係がある場合には、契約書などできっちり「訴訟になった場合には、敗訴者が相手方の弁護士費用を負担する」ということを明記していない場合には、基本的に自分が支出した弁護士費用は請求できません。ですから、契約書を作る場合には、多くの場合、弁護士費用を請求する一文をいれておくのですね。 このように、契約関係では弁護士の費用というのは基本的に相手方に請求できませんので、弁護士費用についても事前に決めておくのがアメリカでは通常になったのですね。契約関係や契約外関係ではこのように弁護士費用の違いがあるのですが、ほかにも様々な法律論的な違いがあります。代表的な例は懲罰的損害が請求できるかどうかという問題です。契約外関係に基づく請求では懲罰的損害を請求することができますが、契約に基づく請求では、損害額を予定しない限り懲罰的損害を請求することができません。懲罰的損害とは簡単に言ってしまえば、相手方が「悪い」行いをした場合に、その相手方の資力に応じて、損害金を払わせることを指します。あまり日本ではなじみのないコンセプトですが、アメリカでは契約外関係に基づく請求事件ではよく見かけるコンセプトなのですね。 以上のような契約関係と契約外関係という二つの大きな違う法律関係が存在しているので、弁護士費用の相手方に対する請求もできる場合とできない場合がでてくるのですね。契約関係と契約外関係というすみ分けはアメリカでも日本でもあまり変わりはありませんので、興味があるかたは、民法入門のようなものをみてみると良いかもしれません。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 最近、ちょっと体を動かさなければいかんと思い、スポーツクラブに入会しました。水泳をするのが目的です。子供の頃はよく海やプールで泳いだものですが、ふと考えると、大人になってから、特に仕事をしだしてからはあまり泳ぐ機会がなかったなと思いました。最初は、ちょっと自分に対しての「義務感」も感じましたが、泳げば泳ぐほど、体力も復活して、体の調子もよくなりました。泳いでいるときは何も考えずにただひたすら泳ぐというのも精神的に良いようです。皆さんもなにか運動されていますか? 今回は、コマーシャル・リース、すなわちビジネスや商店などをするに関しての不動産賃貸借契約について考えましょう。「今度、新しくビジネスをはじめる計画をたてています。その一環として、オフィスを借りる契約をしなければなりません。注意点を教えてください」という質問です。 ビジネスが実体をもつには、オフィスや公に対するプレゼンスを示すために、店を構えたりしなくてはならないですよね。もちろんホームオフィスなどを持つ場合はありますが、リース締結という問題は少なからず発生しますね。リースを締結するにあたり、大家さん側から、分厚い契約書がでてきますが、やはり注意しなくてはいけないというポイントはあるわけです。以下考えていきましょう。また、住居用の賃貸借と商用の賃貸借では、法律での規制に差があります。ここでは商用の賃貸借に限って考えていきます。もし、住居用の賃貸借に関して、質問がある場合には、私まで電子メールをいただければ、回答させていただきます。 さて、商用リースで気をつけなくてはいけないのは、大きく分けて、契約期間、賃貸料などの総額、保険といったものが考えられます。 まず、契約の期間について考えましょう。通常、商用リースは一年とか、長ければ10年などというものもあるのではないでしょうか。この契約された期間は基本的に途中で解約したいと思っても、期間中の全額の責任を一応、賃借人は負うことになっています。ですから、契約するときにはポテンシャルのリスクとして、毎月どのくらい払うかを検討する前に、総額でいくら支払うのかという点を見落としてはなりません。実際の場合、もし中途で解約をしたい場合には、もちろん申し入れることはできますが、契約上、または話し合いで、どういった責任を賃借人が負うのか決定していかなくてはなりません。他の会社または個人に転貸借をすることも考えられますね。大家さんは、すぐに他の賃借人を見つけられる場合には見つけて、損害を緩和する義務を負うことにもなります。 それから、契約に、どの程度のオプション権が与えられているのかも確認しなければなりません。オプション権とは契約期間が終了する場合、加えて何年か、リースを存続させたければ、賃借人の意思表示のみで決定できる権利です。よくあるのは、3年リース、3年オプションといった内容の契約です。見落としやすいですが、必ず覚えておかなくてはいけないのは、このオプション権を行使するためには、契約終了の、たとえば6ヶ月前までに、大家さんに書面で通知しなければならないという条項があることです。このような条項が契約にある場合には、期限をしっかり覚えておく必要があるわけです。 次に契約料を考えましょう。いろいろな賃貸借の対価としての契約料というのが考えられますが、住居用(Residential)の賃貸と違い、毎年契約書によって契約料が上昇したりするわけです。ですから、毎月の賃貸料を考慮するだけではなく、毎年の賃貸料のどうかはどの様にして行われるのか、確認する必要があります。また、大事になるのが、共有部分(Common Area)に関する費用や、電気代、セキュリティーなどの費用がどのように決定されるのか、毎月どの程度負担になるのかを考えておく必要があります。注意したいのは、賃貸借に付帯する共益費などが別に書かれている場合が多いのが通常です。毎月どの程度の支払いが必要であるか計算する上では重要なので、必ず共益費などを明らかにしておくことが大事でしょう。 3つ目は、保険への加入を義務付けている契約書が多いですから、必ずどのような保険に加入する必要があるのかを確かめましょう。火災保険だけではなく、事故などで起こった損害などについても填補する保険が求められている場合が多いですから、どのような保険を要求されているのか、契約の締結時に保険会社とも話し合いをしつつ決定していく必要性があります。契約書によっては契約上、保険の種類にもうるさかったりします。必ずどのような保険が要求されているのか、賃貸借契約を結ぶ前に、保険屋さんと話しあわれておく必要があります。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 前回からLimited Liability Company、有限責任会社について考えはじめました。前回は、主にどのようなメリットがあるのかということを考えましたが、今回はどのように有限責任会社が運営されていくのか、前回に引き続き考えていきましょう。前回は株式会社である株主の代わりにメンバー(社員)と呼ばれる人達が有限責任会社では存在することを考えて紙面がなくなりました。 このメンバーは株主と同じように、有限責任のみを負います。すなわち、会社に対して投資した額を上限として、会社や第三者に対して責任を負うことになります。 では運営について考えていきましょう。 基本的には会社と同じように、マネージャーという運営・経営者を設定して、そのマネージャーがメンバーを代表して運営するという形にできます。また、メンバーが全員で運営することも可能です。特に、少人数のメンバー制であれば有効かもしれません。多数決などで経営を決めていくのですね。 もし、なにか責任が生ずるような問題があれば、運営している人が責任を負います。マネージャー制ではマネージャーが責任を負います。メンバーによって運営されている場合には、メンバーが責任を負います。 この場合、メンバーが責任を負うという理由は、ただ出資したからという訳ではなく、会社の運営をしていたからという理由で、決して有限責任の原則が崩されている訳ではありません。二つ違う責任の所在があるわけです。マネージャー制を利用する場合、通常のメンバーは運営に関しては投票権は予定されていません。マネージャー(複数可)が会社の運営に関しては投票して進めていく形になります。 有限責任会社のメンバーシップを譲渡したい場合などもあるかもしれません。この場合、株式会社とほぼ同じように扱われます。たとえば会社の定款で会社のメンバーシップを譲渡することについては、他のメンバーの一致した承諾が必要というように設定することもできます。少人数でLLCを運営するにあたっては非常に大事な定款条項ですが、株式会社でも有限責任会社でも有効に機能します。 有限責任会社を運営するにあたり、毎年の書類の作成などは、株式会社とほぼ同じです。すなわち、会社の役員構成に関する書類、メンバー総会を開いたという議事録などです。有限責任会社だからといって特別な書類が要求されるということはまずありません。 ではメンバーは誰がなれるのか考えましょう。有限責任会社は州によって異なる法律で規律されていますが、一般的に株式会社と違う点があります。株式会社では投資者を募り、一般の株主とは違う優待をする優先株式というものが存在します。つまり、簡単に言えば、会社の運営に口出しをして欲しくないが、投資をすることにより株を取得して、株式公開された場合には、何倍にもなってかえってくるから投資をしてください、という命題のもと発行されている株です。この優先株式というのは、会社の運営に関する投票権がなかったり、取締役を選出する権利が制限されていたりします。 このような優先株式というのは有限責任会社では基本的に発行することができません。 つまり、パートナーシップの色が濃い団体だからなのですね。 以上の運営に関することは、初期のメンバーもしくは、仮のマネージャーなどが決定して、書面にしなくてはなりません。基本的に各州で有限責任会社を設立した場合、州政府に登録する書類等が法律で定められています。通常、Articiles of Organizationという書類を州政府に登録しなくてはなりませんが、この書類は株式会社で言うArticle of Incorporationという書類と同じようなものです。この書類は非常に基本的な項目、たとえば会社名、住所、メンバー制かマネージャー制かなどを登録します。 しかし、日本で言う「法人登記」のように、細かく各メンバーやマネージャーが誰になるかを書いたりする必要はなく、日本で法人登記に慣れ親しまれている方はちょっとびっくりするのではないでしょうか。また、日本の登記システムのように絶対的記載事項に関しては非常に緩やかな設定がされていますので、このアメリカにおける登録書類を「登記」と呼ぶにはいささか問題があります。そこで、基本定款などと呼んで区別をしています。 州に登録する基本定款の他に、有限責任会社内での規則、つまり会社の憲法のようなものをつくらなくてはなりません。たとえば、メンバーとなる方法やマネージャーの選任方法、銀行口座の開設、各マネージャーの責任範囲、総会の開催などの条項が含まれます。株式会社でいうところのBy-Lawsですが、有限責任会社ではOperating Agreementと呼ばれています。日本語に訳すと、By-LawsとOperating Agreementは付随定款という言葉が最適だと思います。すなわち、上述して基本定款は州に提出しなくてはいけないですが、付随定款は州への提出義務は無いものの、会社の根幹をなす条項が多く含まれていますので、日本で言う定款の役割となんら変わりがないからです。会社の憲法と考えてください。 以上の二つの書類が根本的に必要な書類ですが、そのほかに、会社設立時の議事録なども必要になってきます。 有限責任会社が解散する場合はちょっと株式会社と違ってきます。上述した定款ではっきり定められていない限り、一人のメンバーが有限責任会社を抜けたいと思った場合、会社は財産を整理して解散しなくてはなりません。これはパートナーシップの要素を非常に強く持っているからなのです。このように一人のメンバーが抜け、会社の解散を防ぐためには付随定款に、メンバーが抜けたり死亡した時には他のメンバーが買い取るという条項を追加したりします。 以上が、有限責任会社の運営にかんするまとめですが、基本的には運営方法は株式会社と非常に近いものがあるにもかかわらず、パートナーシップという面がちらほら見られるということがおわかりになったのではないでしょうか。 前回考えたように税金面では通常の株式会社よりも優遇されますので、時に小規模なビジネスをお考えの方はぜひ利用されると良いと思います。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== なんとなく世の中は不景気風が吹き荒れていて、私の周りでもあまり良いニュースを聞きません。私の事務所はなぜか不景気を知らないのですが、私の友人なんかでも、大きい事務所は人減らしが多くなってきて、毎日びくびくしているようです。よく、そのような精神状態でクライアントの相談を受けていられるな、と私は感心してしまいますが。皆さんはお元気ですか。 今回はLLCという形態のビジネスを考えて行きたいと思います。最近はこのLLCという形態のビジネスも浸透してきたようで、いろいろな場面で遭遇しますし、私が関わるビジネスでも皆さん積極的に利用されています。今回は、このLLCについて考えていきましょう。 まずLLCという形態ですが、日本語に訳し難い法律のコンセプトです。Limited Liability Companyということで、「有限責任会社」と訳せますが、日本では、「株式会社」か「有限会社」ということになりますが、性質上違う点があります。ですから、「有限会社」と訳すのは間違っているでしょうね。日本の商法でいう合資会社と似ている部分がありますが、合資会社は一人無限責任(後述します)を負う人が必要になります。この意味では全員有限責任を負う、合資会社という感覚が一番近いでしょうか。LLCを日本で外国法人として登記をするときには、訳語を考えなくてはいけない問題でしょうが、このコラムでは「有限責任会社」としておきます。 さて、LLCというのは、何かという性質から考えていきましょう。アメリカでは、Corporation、つまり株式会社という形態かPartnershipという形態、つまり共同経営という形がビジネスではポピュラーでした。株式会社は株主有限責任の原則といい、株主は出資した金額でのみリスクを負います。 つまり、1万ドル出資した出資者は、1万ドルの範囲で、リスクを負います。会社が訴えられて100億円の損害賠償を払わなくてはならなくなった場合でも、株主は1万ドルの範囲内で責任を負います。 この有限責任の原則があるからこそ、人々は容易に出資をしますし、会社側にとっても、資金を集めやすいのです。 パートナーシップというビジネス形態もアメリカではポピュラーです。小さな店を経営するときに、1人ではやれないが、2,3人で経営をしていくということはよくあることです。こういった経営では、あまり会社を設立せず、パートナーとしてやっていこうというケースが多いわけです。ところが、パートナーシップというのは、契約書でちゃんと仲間内を縛っておかないと、お金のことで揉めたような場合には、訴訟に発展することも少なくありません。また、パートナーシップをつくると、2人でビジネスをする場合、一人がもう一人の責任もすべて、無限責任に基づいて負いますので、知らないうちにものすごい額の責任を負うということになる訳です。 以上を見ると、投資者に取ってみれば株式会社の有限責任は「おいしい」コンセプトです。しかし、株式会社を設立するとSコーポレーションは別にして、通常の株式会社では、会社で一旦収入を申告します。そして株主が配当を受けるに、個人レベルで税金の申告が必要になります。、完全な二重課税のシステムにアメリカではなっているのです。そうすると、小規模なビジネスでは、二重課税というのは不利になることがありますので、できればパートナーシップのように、個人レベルでの課税のみにしたい訳です。これらの「おいしい」ポイントを実現したのがLLCなのです。小規模の有限責任の会社であり、また個人的な税金の申告を可能にできる訳です。 また、株式会社は経営していくに際し、様々な書類を用意しなくてはなりませんが、LLCではある程度簡略化されています。 ですから、小規模なビジネスをはじめるには、非常に有利なビジネス形態と考えられます。 以上で、LLCの性質とメリットはわかっていただけたと思いますが、以下、LLCがどのように運営されているのか、考えていきましょう。 まず、LLCでは株式会社でいう株主の代わりに、メンバーという社員がいます。数年前には一人では設立できませんでした。ところが、現在では一人でも設立できるようにほとんどの州で法律が改正されています。LLCを運営するにあたり、指定されたマネージャーが行う場合と、すべてのメンバーが運営する場合がありますが、メンバーが運営する場合には、数が多いとコンセンサスを得るのが難しくなりますので、やはり少数にとどめておくことが妥当です。また、メンバーが多い場合には、マネージャーを選任してビジネスを行うというのが通常です。 紙面が限られてきましたので、次回続けて考えていきましょう。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 今回はビジネスに関する保険について考えてみたいと思います。現在全世界的に不景気ですから、ビジネス上なにかトラブルが発生すると、会社の存続に問題が生じるなんて可能性もあるわけです。少しでも、今回の原稿がビジネスをされている方に役立つことを祈っています。 ビジネス保険といっても、ビジネスがうまくいかなくなったからといって、保険金がでるという性質のものではありません。そのような保険があったら欲しいものですよね(本当に存在したらすみません)。今回考える保険とは、ビジネスで使用する道具・動産などに関する保険です。ビジネス・プロパティ保険とでも呼んでおきましょうか。 私は法律事務所のことしか良く知らないですが、私にとって一番大事なものはコンピュータの中に入っているデータでしょうか。そのほかの備品等は代替がききますし、特別目が飛び出るほど高価なものはありません。しかし、ビジネスをされている方々にとっては在庫を持つところもあるでしょうし、医師や技術者などは非常に高価な動産がビジネスをするところにはあると思います。 もちろん、戸締りや警備も大切ですが、ビジネス・プロパティ保険の補償額などに注意を払っておくと後日後悔することがなくなります。多くの店子の方はビジネス保険への加入を義務付けられていますが、ご自身が持っている場所でビジネスを行うばあいや、ご自宅をオフィスにしているといった場合には、特に注意が必要です。 基本的に、ビジネス保険というのはパッケージになっている場合が多く、オフィス等での、人身傷害、物的損害などをカバーします。たとえば、大きな箱をデリバリーしてきた人が転んで骨を折ったなどという時には人身傷害保険でカバーされることになります。通常、こちらの方に目が行ってしまいますので、物的損害の方を見落としがちですから、毎年更新をするときに、高価な備品が増えていないかどうかなどチェックをする必要があると思います。オフィスに重要文化財級の日本人形なんか置く場合には事前に保険会社に連絡をしなくてはならないでしょうね。また、物的損害に関する保険に加入する場合、現存する価格を補償してくれるのか、買い替えに必要な価格を補償してくれるのか、確かめておかないと、なにか問題が起きたときにさらに出費が必要になるかもしれません。 上記述べたように、賃貸借契約で保険に加入することを強制されている場合には、店子側としても、気づいて保険へ加入できるのですが、ご自身で所有されている場所でビジネスをされていると、多くの方がビジネス保険に入られていない場合があります。ここで注意しておきたいのは、通常居住するための家などを対象に購入する保険と、ビジネス保険とは性質が違うということです。家土地に対して通常加入する保険では、ビジネスに関しては補償してくれない場合が多いですから、注意が必要になります。 アメリカではよく、警備員がいても誰かが進入して備品を取っていくということがありますから、特に高価な在庫がある場合や人の出入りが多い場合、などにはよく保険の加入契約書をチェックする必要があると思います。それから、ほとんどの保険では、コンピュータの内部の情報については保険されませんから、毎日でも良いですのでバックアップを必ずつくり、保管しておく必要があるでしょうね。 今回は法律の問題というよりも、法律問題に発展する前に確認できることについて考えました。転ばぬ先の杖、ビジネスを成功させたいのであれば、大会社であろうと個人事業主であろうと考えておきたい問題ですね。 |
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