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過去記事「犬」

8/9/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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もうだいぶ前になりますが、犬の飼育場にかんする事件を扱ったことがありました。日本に輸出する犬をしばらくアメリカ側管理しているビジネスがあったのですが、犬が怪我をしたり、病気にかかったりして、日本側で引き取り手がいなくなってしまったのですね。そんな事件にかかわっていたのです。詳しいことは書きませんが、事件はこじれて、日本側では引き取らない、そしてアメリカ側では引き取ってもらわなくては困るということで、押し合いへし合いになりました。 また、時間が経つにつれ、両当事者とも「いらない」という態度をあらわにしてきました。何度も交渉を続けましたが決裂、ミーティングも平行線になりっぱなしです。
 
日本側の主張は、いったん病気や怪我をしてしまうと「商品価値」がないというのですね。私は勝手にそんなに深刻な病気や怪我だと最初は勘違いしていました。 事件の進行にあわせて、その問題の焦点となっている犬を見に行くことになり、出張をしました。その飼育場にはたくさんの犬がいました。私や他の弁護士が入っていくと、警戒したのか「わんわん」の大合唱です。アメリカだから「バウワウ」でしょうか。しっぽをふっているやつもいれば、じっと見ているやつもいます。一通り、日本側の「引き取りたくない」という立証のための飼育場の衛生面や設備などを観察しました。 びっくりしたのは、思っていたほど汚くないし、逆に管理に重大な過失があったとは一見しては見えなかったことです。もちろん口には出しませんが、目にとまる点をじっくり検分しました。 次は問題となっている犬を観察しました。ところが、すべての犬は元気なんですねぇ。大きいのも小さいのもしっぽをふって人なつっこく振る舞っています。怪我をした犬というのも元気に走り回っていました。病気で毛が抜けたという犬もほとんど治っているようです。「証拠」であるし「商品」であるからと触らせてはもらえませんでしたが、遊べるものならすぐにでも遊んであげたい犬ばかりでした。
出張から帰ってきて、記録を整理していると、どうみても犬の「商品価値」というものは、病気もなし、怪我もなしというまったくパーフェクトな状態でないと劇的に下がってしまうという記述を見つけました。私はそれを見て考え込んでしまいました。 犬の「価値」って何なんだろうって。なんでも、コンテストなどに参加するには「厳しい」基準があるんだそうです。人なつっこいだけではダメなんですね。「犬の世界」というのは厳しくて、例えば一回ドッグフードの宣伝に出ると何年間かは他の広告の対象にはなれないなどというルールもあるのです。これでは「人間の欲の世界」ですよね。裁判の記録を読めば読むほど気が滅入ってきてしまいました。検分してきた犬たちのことが頭から離れなくなってしまったのですね。人間が犬を「商品」として扱うために、人間の欲のために、裁判をしているのです。考え込んでしまいました。犬にとってはいい迷惑ですよね。
 
私は動物が一般的に好きなのですが、特に犬が大好きです。私の家では私が生まれたときから、雑種のゴローちゃんというのがいて、私が赤ちゃんの時に突然病気になったらしいのですがゴローちゃんは家の人に吠えて知らせてくれたそうです。私が良く覚えているのは、シロちゃんという秋田犬のことです。私が小学生の頃からもらわれてきて、家の庭でよく走り回っていました。毎日、朝晩は私が散歩に連れて行き、近かった多摩川の河原で時間を忘れて遊んだものです。いつも一緒にいました。そのシロちゃんが私の家が引っ越すのを境にもらわれていきました。最後にもらわれていく朝、私がドッグフードをいつものようにあげると、おいしそうに食べましたが、悲しそうな顔をしていました。車の後部に載せらたシロちゃんは、見送る私の顔をじっと見ていました。以後、シロちゃんとは会っていませんが、もう他界したのではないでしょうか。 今でも夢でシロちゃんがよく出てきます。一緒に遊んでいたり、ご飯をねだっていたり。シロちゃんがいなくなった時を境に、私はもう犬を飼えなくなってしまいました。お別れをするのがあまりにも辛すぎます。あんな思いをするのはもうだめだと思います。年をとって、私の方が先に死ぬくらいになったら、また飼いたいと思っています。 
 
話を戻して・・・そんなバックグラウンドがあるため、この事件に対して私は自分がなぜか「冷めている」部分があるなと思いました。結局は「お金で」片づきましたが、事件が当事者間で解決しても、なんとなく私の心にはしこりが残っていました。人間たちは満足していたみたいだけど、犬たちはどうなっちゃったんだろう・・・。しばらく経って、その飼育場に人を介して連絡してもらいました。話ではなんとか飼い主が決まったようで、安心したのを覚えています。あの人なつっこい犬たちが今でも幸せに暮らしているといいな、なんて思い出します。

過去記事「お金の貸し借り」

7/17/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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この原稿が出る頃は、母の日が過ぎているのでしょうか[過去記事担当注:本記事は最初、母の日の頃に配信されました]。皆さんはお母様がいらっしゃったら、何をしようと考えていらっしゃいますか。また、お母様がいらっしゃらない皆様はどのような思い出を思い浮かべられるのでしょう。私は日本にいる母親に、何を送るかもう考えてはいるのですが、なかなか照れくさいものですな。それでもできるときにするのが親孝行。私が見ている範囲ですけれども、母親というのは本当に大変な役割です。本当に、気持ちと体力が必要ですから、頭がさがります。母親の皆さん、ご苦労様です。

 
今回はお金の貸し借りについて考えてみましょう。福沢諭吉は「貸すんだったら、あげるものと思え」といったと記憶していますが、個人的になにか経験があったからそういうことを言い出したのかも知れませんね。お金の貸し借りというのは、弁護士をやっていると本当にたくさん出会う人間のつながりの一つです。お金の貸し借りが、人間関係のトラブルの元になることが少なくありませんが、詰まるところ、お金の問題というのは貸す人の度量と借りる人の信用という人間関係に集約されます。社会というのが成り立ち、経済活動を各人が営んでいけるのは、この貸す人と借りる人の利害関係が一致して、お金が転々としているからなのです。信用にもいろいろな形があります。たとえば、銀行というのはどんなにフレンドリーでもドライなところがある機関ですが、それは「お金の価値」を業とするからです。信用貸しは、日本のバブルでない限りほとんどしない、つまり必ず担保を取るのですね。ところが、一般の人達は銀行のように頭が回らないですから、「貸す側」は「借りる側」の人となりを見ることになります。そうすると、どういう商売をしているのか、過去にちゃんと借りたものは返したか、といったポイントを見て判断しようとします。一般の人達は担保を取るということはあまりしません。担保というのは、連帯保証人をつけたり、不動産や動産のその物の価値を把握して、返せない場合にはその価値から返済するということです。要するに担保のない一般的なお金の貸し借りは信頼関係によって築かれているわけです。人間社会というものは、お金を貸した側と借りた側の信頼関係に拠って動いているのですが、日本のバブルのつけが今でもとんでもない人間を生み出しています。 私も事件をやっていると唖然とするような人に出会ってしまいます。
 
それでも、人間生きていれば、細かくても大きくても人にお金を貸したり、借りたりするわけです。では、お金を貸し借りするときに何に気をつければよいのかを考えましょう。つまるところ、相手が信用できるかできないか、ということはさておいて、担保を取るということに尽きます。土地を担保に取れれば、土地は、歩いてどこかに行きませんから、非常に有効な担保となります。また、貸した金額に見合うもの、たとえば宝石や証券などを実際に預かるというのも一つの手かもしれません。 ちょうど質屋さんのようなものですね。また、借りる人が、なんらかの財産を持っていて、その財産を借りる人が持っていたいが、担保として提供する意思があるのなら、UCCファイリングといって、州の政府に、どの動産に担保をつけたかということを登録しておくことができます。現金を担保に取ることが一番、良いですが、現金を持っている人が人からお金を借りたりすることはあまり無いですよね。銀行口座にお金があれば、その銀行はすぐにその口座を担保にお金を貸してくれますが、それは担保があるからなのです。
 
担保がなければ、お金の貸し借りは「賭け」になります。生活に必要なお金なら、貸さない方が賢明です。人を信用して貸すとよく言いますが、信用できる借り主だったら基本的になんらかの担保を提供しますよね。担保がない人であれば、どんなに良い人でも、それは賭けになりますから、返してもらうのを期待しないで貸す度量がある方は、そうされたら良いと思います。
 
弁護士に相談される案件で、ちゃんとした担保があれば、打つ手はいくらでもあるのですが、信用貸しをしてしまうと、何かしてあげたいけど、うむ、とうなってしまう案件が多いものです。また、友情や長年の人間関係も瞬時に崩れてしまうので、お金の貸し借りは本当に気をつけてくださいね。
 
母の日ということで、私の母の思い出をひとつ。薬というかサプリメントを母から大量にもらったことがあります。忘れもしません、私が弁護士になる試験を受ける数ヶ月前でした。私はあまり、母から手紙やものをもらったことが無いのですが、私が試験の追い込みをするということで、日本からわざわざ錠剤を私に送ってきてくれました。当時、貧乏でしたから、食事も不規則でしたし、2つの法律事務所を掛け持ちして、お金を稼ぎながらの受験でしたので、今から思えば、一日3時間位しか寝る暇がなかったように思います。高い受験予備校と試験費用を働いていた事務所で負担していただいたので、仕事も辞めたくありません。それでも、勉強をよくやった記憶がありますが、何かおいしいものを食べたかといえば、まったく記憶がありません。そんな状況を母に知らせるような野暮な私ではありませんが、毎日の食生活にこの栄養剤はプラスになりました。母は、通院している病院の先生から自分がもらった栄養剤を飲まずに、貯めて私に送ってくれたのです。優しいじゃないですか。ありがたく、朝起きては2錠のみ、昼に2錠のみ、寝る前に2錠のみ、試験も余裕で一発合格できました。母親も喜んで、その栄養剤を私に「横流し」していたことを医師の先生に告白したそうです。そのご老体の先生は、腕を組み、頭をかしげながら、「おかしいな、おかしいな」といったそうなんです。その先生いわく、母に出していた薬は「更年期障害の薬で、私に効くはずがない」。その時は笑って済ませましたが、今考えると何ヶ月もまじめに飲み続けていたので、今後の私の人生になんらかの影響がでないかと、不安が頭をよぎってしまいます。

過去記事「機密保持契約」

7/10/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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アメリカでビジネスを行う上でどのような形にせよ、まず相手方の会社と交わさなくてはいけないのが機密保持契約だ。 機密保持契約によって守られる内容というのは当事者間で設定できるため多岐にわたる。ビジネスの交渉をしているという広汎な内容から、ビジネスモデルや申請を考えている知的財産権の内容など特化したものも考えられる。 どのようなビジネスの展開を考える上でも、実質的なビジネスの内容を協議する段階になったら、まず機密保持契約を結んでおくことが安心だ。
 
機密保持契約書は一般的にNon-Disclosure AgreementまたはConfidentiality Agreementと呼ばれている。 表題はどのようなものにせよ、必要な情報が組み込まれていれば一応、機密保持契約が成立すると考えてよい。 次にどのような内容が必要か考えよう。
 
まず、どの当事者間で機密保持を課すのか、当事者を特定する必要がある。 個人でも法人でもよいが、名前だけではなく住所などで特定がされていると安心だ。 次にもっとも大事な内容かもしれないが機密保持の対象となる事柄がすべてカバーされているかチェックしたい。 ビジネスの内容が商品であれば商品名、および商品の属性や性質なども加えておくと明確さが増してよいかもしれない。 
 
会社と機密保持契約を結ぶ場合にはその会社の担当者だけではなく、他の被用者やコンサルタントなど、情報にアクセスしうる人間も機密保持に含ませておくことが望ましい。 機密保持によって相手方に渡した書類、および情報の載ったCDやフロッピーなどもビジネスの終了に伴って返却または廃棄をするという条項も載せておくとリスクの回避になるであろう。
 
機密保持契約書によって、広汎な範囲の情報が守られるであろうが、基本的に3つのパターンにより、情報が機密保持の範囲外とされる場合がある。 一つ目は相手方が独自に、機密条項に頼らずに開発した情報、2つめにすでに公に周知の事実となった情報、3つ目に機密情報を開示した段階で、すでに相手方が知っていた情報が考えられる。 契約書によっては裁判所から情報開示の命令が出された場合も4つ目の事例として挙げているものもある。
 
機密保持の契約内容は以上が主要なポイントとなるが、機密保持に違反した場合の処理についても、契約書によって定めておいた方が抑制効果があり、望ましい。 まず、機密保持契約書について解釈の基準となる法律、すなわちカリフォルニア州法によって解釈されるなどという法律の選択を規定する必要がある。 加えて、話し合いで解決できない問題が発生した場合には、訴訟にするのか、仲裁にするのかなどの紛争解決に必要な手段を決めておくことが望ましい。 法廷で争うことになると、基本的にはすべての争いにおける書面などは一般に公開されてしまうので、いくら絞りをかけても公開されてしまう事実があるわけだ。 それに比べて、仲裁(MediationやArbitration)などの方法をとり、訴訟の代わりとすれば、第三者に知られずに、またフレキシブルに解決策を得ることができる。
 
機密保持契約書はフォーマルな契約書である必要はない。 以上の要件に見合っていれば、通常のビジネスレターのようなフォーマットでも効力は充分であるし、裁判所でも機密保持の内容を認めてくれる。 しかし、重要な商品やビジネスのアイディアを開示する場合には、機密保持の対象を的確に表現するすることが非常に重要になる。
 
また、契約書が必ずしも長文でなくてはならないという理由はない。 必要な条件が揃っていれば、一ページでも二ページでも充分な機密保持契約書ができるであろう。

過去記事「裁判管轄権と法律の選択」

7/1/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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今回は、国際ビジネスの契約上非常に大切な条項とその実務について考えていきたいと思います。 契約書における裁判管轄権(Jurisdiction)と法律の選択(Choice of Law)に関して考えましょう。二国間以上のビジネスにおいて契約書を作成する場合、問題が発生した場合、どの国のどの裁判所で紛争の解決をし、どの国の法律を適用しようかという論点が発生します。例えば、日本とアメリカの企業が契約を締結しようとするとき、できれば自国の法律を使い自国の裁判所で紛争は解決したいということを駆け引きする場合です。もちろん、自分のホームで闘う方がアウェイで闘うよりも心理的・経済的にも有利に働くと考えるのが普通です。ところが、この論点の駆け引きがヒートアップしてしまうと、実際の契約内容とは直接関係ない部分で物別れになってしまう可能性があり、あまり建設的ではありません。
 
一休さんではありませんが、裁判管轄権と法律の選択の問題を解決するために、いろいろな形でクリエーティブな解決策があります。もちろん、大事な契約書に関して、最悪の事態、つまり訴訟になったときの経験がある弁護士に相談する必要がありますが、企業としても、ある程度のチョイスを用意しておくと、交渉がスムーズにいくことがあります。基本的に以下のポイントを参考にしてください。
 
まず、裁判管轄権や法律の選択に関する条項のみを見ないで、実際どのような契約の内容なのかを大きな目で見ることが必要です。ものの売買契約、供給契約などでは、契約におけるどちらの当事者がより危険を負担にする事になるのかを考える必要があります。例えば、ものを買う側の当事者としては、ものを受け取りどのようなものかどうかを確認し、瑕疵(カシ)や債務不履行がなかったことを確かめてから代金を支払うという契約であれば、裁判を起こしてまで相手方の債務不履行を争うというシチュエーションにはなり難いわけです。そのような場合には、相手方に裁判管轄権や法律の選択条項を譲ったとしても危険を負担する可能性は非常に低い訳です。
 
次に、アメリカの裁判所を第一審としての裁判管轄として契約上指定したとしても、法律の選択が第三国、例えば日本などの法律を適用するなどとした場合には、見た目には、当事者間で五分五分のようにも見えます。ところが実際の法廷係争になったときに非常に時間もコストもかかる可能性があります。アメリカの裁判所で、日本の法律を適用しようとする場合には、州の裁判所では陪審裁判を前提とすると非常に難しい場合があり、説得力を欠く場合があります。そういう意味では、実質的に統一した方が両当事者にとって有利という場合がたくさんあります。
 
第三に、裁判の管轄を決めるということに関してですが、ゼロ・サムという硬直な形で紛争解決を図ることは両者にとって不利益をもたらす可能性があります。契約書というのはいろいろな形で条項を決める事ができますから。まず、陪審裁判は除外するという形で、契約を締結することができます。いかんせん、一般の陪審員にとって契約書の条項の解釈を行うというのは実際的ではありませんし、陪審による裁判の結果というのは往々にして、不安定な場合があるからです。 次に、契約によって生じた損害とその他の場合(不法行為)によって生じた損害を分けて、それぞれの紛争解決方法を指定するという方法もあります。 また、裁判で解決する位であれば、仲裁に持っていくという方法もだいぶポピュラーになってきました。私が最近相手方と詰めた事例では、テレビ会議を開きながら、日本とアメリカでリアルタイムで仲裁をしようという方法も取り入れ、法律の選択も、インコターム(INCOTERM)などの国際通商に関する中立的な手続を使うという形で仲裁を行おうという試みもありました。また、アメリカや日本でまず仲裁をし、不服ならば他の形での解決策をするという二段、三段にもなる方法を指定するということもフレキシブルで良いと思います。また、仲裁をすることにより、裁判で闘うよりも将来の関係がぎくしゃくしなくてよかったという話もよく聞きます。 
 
以上が、非常に基本的になりましたが紛争解決をするにあたり、考えておきたいポイントです。企業の法務部が裁判管轄や法律の選択ということで交渉を行う場合には、大きな目で契約の内容を考えて、さらにフレキシブルな解決方法を詰めていくというのが良い関係を築く第一歩なのでしょうね。 それではまた来月新しいトピックを考えていきましょう。

過去記事「解雇」

6/17/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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今回は「解雇」について考えましょう。ベイエリアで、今直面しているのが不況によるビジネスの縮小、ひいては従業員の解雇という事実です。もちろんベイエリアのみにかかわらず、アメリカでは景気の低迷ということが問題になってきましたね。失業率も増加して、利率を政府が一生懸命下げても火に油状態でした。困ったことですが、一番困るのは、この不況で解雇に直面する従業員、それにその家族などでしょう。最近では「解雇されたのだけど納得がいかない」といった相談の電話をたくさん受けます。それではどういうところに「納得がいかない」のか詳しく聞いてみると、あまり時間を置かずに解雇された、とか収入がなくなり不安となった、といった内容の場合が少なからずあります。ベイエリアではドットコム企業でバブった数年があったわけで、わけがわからず会社が大きくなり、人を雇い、高価な器具を揃えていました。そういう意味で、現在の解雇の波にインパクトを受けているのがベイエリアなのです。
 
解雇になる前提条件として「雇用契約」というものがあります。雇用契約とは、要するに、労務を提供して、その対価として賃金を受け取るという契約です。労務というとピンとこないかもしれませんが、朝起きて、会社に行き、コンピュータの前で仕事をし、電話の応対をして、上司に報告をして、ミーティングに出席して、時間が来れば家に帰るといったことで、最初の契約時のストライクゾーン内の仕事と考えてください。そういった会社のために行った業務を労務といいます。その労務の対価としてもらう賃金ですが、一時期はストックオプションという形も流行しましたが、基本的には金銭ですよね。各州の政府はこの賃金の支払いに関しては非常に厳しくモニターしています。カリフォルニア州ではDepartment of Fair Employment and Laborなどが賃金の支払いを間接的に監視しています。賃金の支払いに関しては、法律上優先的に支払いを受けられるようにもなっているのです。
 
賃金支払いは厳しく法律でコントロールされていますから、たとえば、解雇時には、その時までに行った労務に対する賃金は即時に支払いがなされなくてはなりませんし、支払いが遅れた場合には、州政府に申し立てを行い雇用主の支払いを促すということもできるのです。このように、雇用契約には法律上の規制があるのです。
 
では解雇されるというのは雇用契約を解除されるということですが、どのような内容の解雇が許されるのか、許されないのかを考えましょう。日本では基本的に、30日相当の余裕がなければ解雇はできません。つまり30日前に通知されることになります。カリフォルニアでは基本的に、即日解雇が許されています。雇用契約はすぐに解除できるということなのですね。これはもちろん契約書ではっきり規定されていない場合です。契約書が存在し、解雇の場合は30日前とか、60日前とかに通知をするということが明記されていたらその条項を遵守しなくてはなりません。また、期間が決まっている雇用契約、たとえば1年間などと決まっている場合はその期間中は解雇されるということは基本的にはないわけです。もちろん、他の条項で、解雇事由が記載されていればその条項に沿った解雇は可能ですね。
 
契約書がなく口約束での契約(契約書がなくても雇用契約は成立します)に基づいて解雇された場合には、雇用期間を明確に知らされていない場合などは、即日解雇が可能ですが、明らかに法律的なクレームを出せる場合があります。たとえば、今まで働いた賃金を払ってくれない場合(上述)、違法な理由、たとえば、人種差別、性差別、などがある場合、それにセクハラが絡んでいるような場合、違法な会社の行為を指摘したために逆に解雇になる場合などが考えられます。 ただ、良く相談を受けるのですが、ただ上司とウマが合わない、とか会社の業務内容に不満があるというだけでは法律上「違法」となることは難しいことも覚えておいてくださいね。
 
解雇というのは会社側にとっても気持ちの良いものではありません。「同じ釜の飯を食った」仲なわけですからね。雇用契約というのは継続的に業務を共にするわけですから、ただ単にお金をもらうためだけに仕事をするというのもちょっぴり寂しい気がします。私の事務所では本当に皆さん良く働くのですが、それに加えて皆さん本当に仲が良いのですね。仲間が良いと、仕事もはかどり、対外的にもメリットばかりです。ひとりひとりは個性が強く、髪を染めている人もいれば、お酒が大好きな人もいたり(これは私かもしれない)、サンダルで事務所内をうろうろしている人もいます。ところがいざとなると一人残らず仕事の鬼になるのですね。夜遅くまで、「この株式発行の問題をクリアーしなければ資本充実の原則に反するんだけどなぁ」とか、「この判例によるとこの事件は勝てそうな理由が付けられそうですね」なんて弁護士だろうがアシスタントだろうが喧々諤々で議論しています。あまり夜だらだら飲みにいって話をするということもしませんし、個人の生活は生活として誰も口は出しません。自由な雰囲気だけれどもみんな仕事が好き、そして環境も好きという良い信頼関係ができています。なんか、サザエさん一家みたいなんですね、タラちゃんが走る音は聞こえませんけど。他の法律事務所ではパートナーが実は仲が悪かったり、弁護士が理由もなくえばっていたり、会社のような体系の中で不満を持ったり政治があったりなどと裏では良く聞く話ですが、事務所が信頼関係で結ばれていない状態でよくクライアントとの信頼関係が語れるな、と皮肉に感心することはあります。働く環境ってつくづく大事だな、と最近特に思うのでした。

過去記事「契約の不履行と弁護士費用」

6/5/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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今回は、読者の方から「アメリカの契約書では弁護士の費用は裁判に負けた側が払うということがどのような契約書でも含まれていますが、どのような意味があるのでしょう」というご質問をいただきましたので、皆さんと一緒に考えていきましょう。訴訟になると裁判にかかる費用というのは、なかなか高額になるのが通常ですね。ある意味では、訴訟のコストという部分もあるのですが、弁護士の報酬というものも安くない場合が多いのですね。
 
さて、今回の質問を考える上で、皆さんに知っていただかなくてはいけない法律の一般論があります。まず、契約と契約外の人間関係を簡単に考えたいと思います。民事事件では大きく分けて契約、すなわち約束をしたのに守ってくれないというケースと、契約などはないのだけれど、車を追突されたりして、損害を被った場合に相手方に請求をしていきたいケースにわかれます。
 
まず、契約に基づかない関係から考えます。 契約に基づかない関係から生じる民事上の請求では、不法行為というコンセプトが代表的なものとして考えられます。 不法行為(Torts)とはなんだというと、世の中にいるだれかが故意や過失を持って、第三者に損害を与えた場合には、因果関係がある限り償いをしなくてはいけなくなる行為をさします。もちろん契約外の関係には、いろいろな人のしがらみを考えられることができます(事務管理、不当利得など)が、ここでは不法行為のみを取り上げて考えていきます。不法行為の代表的な例として挙げられるのは交通事故でしょうか。皆さんが車を運転していますよね。信号待ちをしていると後ろから、車を突っ込まれたとしましょう。この場合、皆さんは怪我をした場合、後ろから突っ込んできた人に怪我の治療費や働けなかったことによって生じた損害を請求することができますね。最初から約束や契約などがないのに、事故が起こったことで皆さんと、後ろから突っ込んできた人の間に不法行為という法律関係が生じるのです。この不法行為というのが契約外関係の代表的な例なのですね。この不法行為などで損害を負った場合には、アメリカでは原則として合理的な範囲で相手方に弁護士の費用を請求することができます。ですから、訴えるときに裁判所に提出する書類の訴状などには、請求の欄に必ず「弁護士費用を請求する」という文章をいれておくのです。
 
これに対して、契約関係(Contractual Relationship)という法律関係があります。契約といってもいろいろな契約が存在しますが、売買契約などが代表的です。売買契約とは簡単にいってしまうと、皆さんが「ペンを一本100円で売りましょう」と私に言い、私が、それでは「そのペンを売ってください」と言い約束をすることです。100円のペンで訴訟にはならないかもしれませんが、単価が100円でも100万本になればすごい金額になりますよね。もし、皆さんと私がこのようにペンの売買の約束をしたとして、私がお金を払わなかったり、皆さんが私に売ってくれたペンがかけなかったりした場合には、もともと予定していた約束と違いますね。このような「約束が違う」場合には債務不履行責任という責任が生じる可能性があります。自分がやらなくてはいけないことをやっていない場合に責任が生じるのです。アメリカでは、伝統的にこの契約関係がある場合には、契約書などできっちり「訴訟になった場合には、敗訴者が相手方の弁護士費用を負担する」ということを明記していない場合には、基本的に自分が支出した弁護士費用は請求できません。ですから、契約書を作る場合には、多くの場合、弁護士費用を請求する一文をいれておくのですね。
 
このように、契約関係では弁護士の費用というのは基本的に相手方に請求できませんので、弁護士費用についても事前に決めておくのがアメリカでは通常になったのですね。契約関係や契約外関係ではこのように弁護士費用の違いがあるのですが、ほかにも様々な法律論的な違いがあります。代表的な例は懲罰的損害が請求できるかどうかという問題です。契約外関係に基づく請求では懲罰的損害を請求することができますが、契約に基づく請求では、損害額を予定しない限り懲罰的損害を請求することができません。懲罰的損害とは簡単に言ってしまえば、相手方が「悪い」行いをした場合に、その相手方の資力に応じて、損害金を払わせることを指します。あまり日本ではなじみのないコンセプトですが、アメリカでは契約外関係に基づく請求事件ではよく見かけるコンセプトなのですね。 以上のような契約関係と契約外関係という二つの大きな違う法律関係が存在しているので、弁護士費用の相手方に対する請求もできる場合とできない場合がでてくるのですね。契約関係と契約外関係というすみ分けはアメリカでも日本でもあまり変わりはありませんので、興味があるかたは、民法入門のようなものをみてみると良いかもしれません。

過去記事「コマーシャル・リース」

5/14/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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最近、ちょっと体を動かさなければいかんと思い、スポーツクラブに入会しました。水泳をするのが目的です。子供の頃はよく海やプールで泳いだものですが、ふと考えると、大人になってから、特に仕事をしだしてからはあまり泳ぐ機会がなかったなと思いました。最初は、ちょっと自分に対しての「義務感」も感じましたが、泳げば泳ぐほど、体力も復活して、体の調子もよくなりました。泳いでいるときは何も考えずにただひたすら泳ぐというのも精神的に良いようです。皆さんもなにか運動されていますか?
 
今回は、コマーシャル・リース、すなわちビジネスや商店などをするに関しての不動産賃貸借契約について考えましょう。「今度、新しくビジネスをはじめる計画をたてています。その一環として、オフィスを借りる契約をしなければなりません。注意点を教えてください」という質問です。
 
ビジネスが実体をもつには、オフィスや公に対するプレゼンスを示すために、店を構えたりしなくてはならないですよね。もちろんホームオフィスなどを持つ場合はありますが、リース締結という問題は少なからず発生しますね。リースを締結するにあたり、大家さん側から、分厚い契約書がでてきますが、やはり注意しなくてはいけないというポイントはあるわけです。以下考えていきましょう。また、住居用の賃貸借と商用の賃貸借では、法律での規制に差があります。ここでは商用の賃貸借に限って考えていきます。もし、住居用の賃貸借に関して、質問がある場合には、私まで電子メールをいただければ、回答させていただきます。
 
さて、商用リースで気をつけなくてはいけないのは、大きく分けて、契約期間、賃貸料などの総額、保険といったものが考えられます。
 
まず、契約の期間について考えましょう。通常、商用リースは一年とか、長ければ10年などというものもあるのではないでしょうか。この契約された期間は基本的に途中で解約したいと思っても、期間中の全額の責任を一応、賃借人は負うことになっています。ですから、契約するときにはポテンシャルのリスクとして、毎月どのくらい払うかを検討する前に、総額でいくら支払うのかという点を見落としてはなりません。実際の場合、もし中途で解約をしたい場合には、もちろん申し入れることはできますが、契約上、または話し合いで、どういった責任を賃借人が負うのか決定していかなくてはなりません。他の会社または個人に転貸借をすることも考えられますね。大家さんは、すぐに他の賃借人を見つけられる場合には見つけて、損害を緩和する義務を負うことにもなります。
 
それから、契約に、どの程度のオプション権が与えられているのかも確認しなければなりません。オプション権とは契約期間が終了する場合、加えて何年か、リースを存続させたければ、賃借人の意思表示のみで決定できる権利です。よくあるのは、3年リース、3年オプションといった内容の契約です。見落としやすいですが、必ず覚えておかなくてはいけないのは、このオプション権を行使するためには、契約終了の、たとえば6ヶ月前までに、大家さんに書面で通知しなければならないという条項があることです。このような条項が契約にある場合には、期限をしっかり覚えておく必要があるわけです。
 
次に契約料を考えましょう。いろいろな賃貸借の対価としての契約料というのが考えられますが、住居用(Residential)の賃貸と違い、毎年契約書によって契約料が上昇したりするわけです。ですから、毎月の賃貸料を考慮するだけではなく、毎年の賃貸料のどうかはどの様にして行われるのか、確認する必要があります。また、大事になるのが、共有部分(Common Area)に関する費用や、電気代、セキュリティーなどの費用がどのように決定されるのか、毎月どの程度負担になるのかを考えておく必要があります。注意したいのは、賃貸借に付帯する共益費などが別に書かれている場合が多いのが通常です。毎月どの程度の支払いが必要であるか計算する上では重要なので、必ず共益費などを明らかにしておくことが大事でしょう。
 
3つ目は、保険への加入を義務付けている契約書が多いですから、必ずどのような保険に加入する必要があるのかを確かめましょう。火災保険だけではなく、事故などで起こった損害などについても填補する保険が求められている場合が多いですから、どのような保険を要求されているのか、契約の締結時に保険会社とも話し合いをしつつ決定していく必要性があります。契約書によっては契約上、保険の種類にもうるさかったりします。必ずどのような保険が要求されているのか、賃貸借契約を結ぶ前に、保険屋さんと話しあわれておく必要があります。

過去記事「 LLC(2)」

4/30/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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前回からLimited Liability Company、有限責任会社について考えはじめました。前回は、主にどのようなメリットがあるのかということを考えましたが、今回はどのように有限責任会社が運営されていくのか、前回に引き続き考えていきましょう。前回は株式会社である株主の代わりにメンバー(社員)と呼ばれる人達が有限責任会社では存在することを考えて紙面がなくなりました。
 
このメンバーは株主と同じように、有限責任のみを負います。すなわち、会社に対して投資した額を上限として、会社や第三者に対して責任を負うことになります。
 
では運営について考えていきましょう。 基本的には会社と同じように、マネージャーという運営・経営者を設定して、そのマネージャーがメンバーを代表して運営するという形にできます。また、メンバーが全員で運営することも可能です。特に、少人数のメンバー制であれば有効かもしれません。多数決などで経営を決めていくのですね。 
 
もし、なにか責任が生ずるような問題があれば、運営している人が責任を負います。マネージャー制ではマネージャーが責任を負います。メンバーによって運営されている場合には、メンバーが責任を負います。 この場合、メンバーが責任を負うという理由は、ただ出資したからという訳ではなく、会社の運営をしていたからという理由で、決して有限責任の原則が崩されている訳ではありません。二つ違う責任の所在があるわけです。マネージャー制を利用する場合、通常のメンバーは運営に関しては投票権は予定されていません。マネージャー(複数可)が会社の運営に関しては投票して進めていく形になります。
 
有限責任会社のメンバーシップを譲渡したい場合などもあるかもしれません。この場合、株式会社とほぼ同じように扱われます。たとえば会社の定款で会社のメンバーシップを譲渡することについては、他のメンバーの一致した承諾が必要というように設定することもできます。少人数でLLCを運営するにあたっては非常に大事な定款条項ですが、株式会社でも有限責任会社でも有効に機能します。
 
有限責任会社を運営するにあたり、毎年の書類の作成などは、株式会社とほぼ同じです。すなわち、会社の役員構成に関する書類、メンバー総会を開いたという議事録などです。有限責任会社だからといって特別な書類が要求されるということはまずありません。
 
ではメンバーは誰がなれるのか考えましょう。有限責任会社は州によって異なる法律で規律されていますが、一般的に株式会社と違う点があります。株式会社では投資者を募り、一般の株主とは違う優待をする優先株式というものが存在します。つまり、簡単に言えば、会社の運営に口出しをして欲しくないが、投資をすることにより株を取得して、株式公開された場合には、何倍にもなってかえってくるから投資をしてください、という命題のもと発行されている株です。この優先株式というのは、会社の運営に関する投票権がなかったり、取締役を選出する権利が制限されていたりします。 このような優先株式というのは有限責任会社では基本的に発行することができません。 つまり、パートナーシップの色が濃い団体だからなのですね。
 
以上の運営に関することは、初期のメンバーもしくは、仮のマネージャーなどが決定して、書面にしなくてはなりません。基本的に各州で有限責任会社を設立した場合、州政府に登録する書類等が法律で定められています。通常、Articiles of Organizationという書類を州政府に登録しなくてはなりませんが、この書類は株式会社で言うArticle of Incorporationという書類と同じようなものです。この書類は非常に基本的な項目、たとえば会社名、住所、メンバー制かマネージャー制かなどを登録します。 しかし、日本で言う「法人登記」のように、細かく各メンバーやマネージャーが誰になるかを書いたりする必要はなく、日本で法人登記に慣れ親しまれている方はちょっとびっくりするのではないでしょうか。また、日本の登記システムのように絶対的記載事項に関しては非常に緩やかな設定がされていますので、このアメリカにおける登録書類を「登記」と呼ぶにはいささか問題があります。そこで、基本定款などと呼んで区別をしています。
 
州に登録する基本定款の他に、有限責任会社内での規則、つまり会社の憲法のようなものをつくらなくてはなりません。たとえば、メンバーとなる方法やマネージャーの選任方法、銀行口座の開設、各マネージャーの責任範囲、総会の開催などの条項が含まれます。株式会社でいうところのBy-Lawsですが、有限責任会社ではOperating Agreementと呼ばれています。日本語に訳すと、By-LawsとOperating Agreementは付随定款という言葉が最適だと思います。すなわち、上述して基本定款は州に提出しなくてはいけないですが、付随定款は州への提出義務は無いものの、会社の根幹をなす条項が多く含まれていますので、日本で言う定款の役割となんら変わりがないからです。会社の憲法と考えてください。
 
以上の二つの書類が根本的に必要な書類ですが、そのほかに、会社設立時の議事録なども必要になってきます。
 
有限責任会社が解散する場合はちょっと株式会社と違ってきます。上述した定款ではっきり定められていない限り、一人のメンバーが有限責任会社を抜けたいと思った場合、会社は財産を整理して解散しなくてはなりません。これはパートナーシップの要素を非常に強く持っているからなのです。このように一人のメンバーが抜け、会社の解散を防ぐためには付随定款に、メンバーが抜けたり死亡した時には他のメンバーが買い取るという条項を追加したりします。
 
以上が、有限責任会社の運営にかんするまとめですが、基本的には運営方法は株式会社と非常に近いものがあるにもかかわらず、パートナーシップという面がちらほら見られるということがおわかりになったのではないでしょうか。 前回考えたように税金面では通常の株式会社よりも優遇されますので、時に小規模なビジネスをお考えの方はぜひ利用されると良いと思います。

過去記事「 LLC(1)」

4/25/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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なんとなく世の中は不景気風が吹き荒れていて、私の周りでもあまり良いニュースを聞きません。私の事務所はなぜか不景気を知らないのですが、私の友人なんかでも、大きい事務所は人減らしが多くなってきて、毎日びくびくしているようです。よく、そのような精神状態でクライアントの相談を受けていられるな、と私は感心してしまいますが。皆さんはお元気ですか。
 
今回はLLCという形態のビジネスを考えて行きたいと思います。最近はこのLLCという形態のビジネスも浸透してきたようで、いろいろな場面で遭遇しますし、私が関わるビジネスでも皆さん積極的に利用されています。今回は、このLLCについて考えていきましょう。 
 
まずLLCという形態ですが、日本語に訳し難い法律のコンセプトです。Limited Liability Companyということで、「有限責任会社」と訳せますが、日本では、「株式会社」か「有限会社」ということになりますが、性質上違う点があります。ですから、「有限会社」と訳すのは間違っているでしょうね。日本の商法でいう合資会社と似ている部分がありますが、合資会社は一人無限責任(後述します)を負う人が必要になります。この意味では全員有限責任を負う、合資会社という感覚が一番近いでしょうか。LLCを日本で外国法人として登記をするときには、訳語を考えなくてはいけない問題でしょうが、このコラムでは「有限責任会社」としておきます。
 
さて、LLCというのは、何かという性質から考えていきましょう。アメリカでは、Corporation、つまり株式会社という形態かPartnershipという形態、つまり共同経営という形がビジネスではポピュラーでした。株式会社は株主有限責任の原則といい、株主は出資した金額でのみリスクを負います。 つまり、1万ドル出資した出資者は、1万ドルの範囲で、リスクを負います。会社が訴えられて100億円の損害賠償を払わなくてはならなくなった場合でも、株主は1万ドルの範囲内で責任を負います。 この有限責任の原則があるからこそ、人々は容易に出資をしますし、会社側にとっても、資金を集めやすいのです。
 
パートナーシップというビジネス形態もアメリカではポピュラーです。小さな店を経営するときに、1人ではやれないが、2,3人で経営をしていくということはよくあることです。こういった経営では、あまり会社を設立せず、パートナーとしてやっていこうというケースが多いわけです。ところが、パートナーシップというのは、契約書でちゃんと仲間内を縛っておかないと、お金のことで揉めたような場合には、訴訟に発展することも少なくありません。また、パートナーシップをつくると、2人でビジネスをする場合、一人がもう一人の責任もすべて、無限責任に基づいて負いますので、知らないうちにものすごい額の責任を負うということになる訳です。
 
以上を見ると、投資者に取ってみれば株式会社の有限責任は「おいしい」コンセプトです。しかし、株式会社を設立するとSコーポレーションは別にして、通常の株式会社では、会社で一旦収入を申告します。そして株主が配当を受けるに、個人レベルで税金の申告が必要になります。、完全な二重課税のシステムにアメリカではなっているのです。そうすると、小規模なビジネスでは、二重課税というのは不利になることがありますので、できればパートナーシップのように、個人レベルでの課税のみにしたい訳です。これらの「おいしい」ポイントを実現したのがLLCなのです。小規模の有限責任の会社であり、また個人的な税金の申告を可能にできる訳です。 また、株式会社は経営していくに際し、様々な書類を用意しなくてはなりませんが、LLCではある程度簡略化されています。 ですから、小規模なビジネスをはじめるには、非常に有利なビジネス形態と考えられます。
 
以上で、LLCの性質とメリットはわかっていただけたと思いますが、以下、LLCがどのように運営されているのか、考えていきましょう。
 
まず、LLCでは株式会社でいう株主の代わりに、メンバーという社員がいます。数年前には一人では設立できませんでした。ところが、現在では一人でも設立できるようにほとんどの州で法律が改正されています。LLCを運営するにあたり、指定されたマネージャーが行う場合と、すべてのメンバーが運営する場合がありますが、メンバーが運営する場合には、数が多いとコンセンサスを得るのが難しくなりますので、やはり少数にとどめておくことが妥当です。また、メンバーが多い場合には、マネージャーを選任してビジネスを行うというのが通常です。
 
紙面が限られてきましたので、次回続けて考えていきましょう。

過去記事「 保険 」

4/17/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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今回はビジネスに関する保険について考えてみたいと思います。現在全世界的に不景気ですから、ビジネス上なにかトラブルが発生すると、会社の存続に問題が生じるなんて可能性もあるわけです。少しでも、今回の原稿がビジネスをされている方に役立つことを祈っています。
 
ビジネス保険といっても、ビジネスがうまくいかなくなったからといって、保険金がでるという性質のものではありません。そのような保険があったら欲しいものですよね(本当に存在したらすみません)。今回考える保険とは、ビジネスで使用する道具・動産などに関する保険です。ビジネス・プロパティ保険とでも呼んでおきましょうか。
 
私は法律事務所のことしか良く知らないですが、私にとって一番大事なものはコンピュータの中に入っているデータでしょうか。そのほかの備品等は代替がききますし、特別目が飛び出るほど高価なものはありません。しかし、ビジネスをされている方々にとっては在庫を持つところもあるでしょうし、医師や技術者などは非常に高価な動産がビジネスをするところにはあると思います。 もちろん、戸締りや警備も大切ですが、ビジネス・プロパティ保険の補償額などに注意を払っておくと後日後悔することがなくなります。多くの店子の方はビジネス保険への加入を義務付けられていますが、ご自身が持っている場所でビジネスを行うばあいや、ご自宅をオフィスにしているといった場合には、特に注意が必要です。
 
基本的に、ビジネス保険というのはパッケージになっている場合が多く、オフィス等での、人身傷害、物的損害などをカバーします。たとえば、大きな箱をデリバリーしてきた人が転んで骨を折ったなどという時には人身傷害保険でカバーされることになります。通常、こちらの方に目が行ってしまいますので、物的損害の方を見落としがちですから、毎年更新をするときに、高価な備品が増えていないかどうかなどチェックをする必要があると思います。オフィスに重要文化財級の日本人形なんか置く場合には事前に保険会社に連絡をしなくてはならないでしょうね。また、物的損害に関する保険に加入する場合、現存する価格を補償してくれるのか、買い替えに必要な価格を補償してくれるのか、確かめておかないと、なにか問題が起きたときにさらに出費が必要になるかもしれません。
 
上記述べたように、賃貸借契約で保険に加入することを強制されている場合には、店子側としても、気づいて保険へ加入できるのですが、ご自身で所有されている場所でビジネスをされていると、多くの方がビジネス保険に入られていない場合があります。ここで注意しておきたいのは、通常居住するための家などを対象に購入する保険と、ビジネス保険とは性質が違うということです。家土地に対して通常加入する保険では、ビジネスに関しては補償してくれない場合が多いですから、注意が必要になります。
 
アメリカではよく、警備員がいても誰かが進入して備品を取っていくということがありますから、特に高価な在庫がある場合や人の出入りが多い場合、などにはよく保険の加入契約書をチェックする必要があると思います。それから、ほとんどの保険では、コンピュータの内部の情報については保険されませんから、毎日でも良いですのでバックアップを必ずつくり、保管しておく必要があるでしょうね。
 
今回は法律の問題というよりも、法律問題に発展する前に確認できることについて考えました。転ばぬ先の杖、ビジネスを成功させたいのであれば、大会社であろうと個人事業主であろうと考えておきたい問題ですね。

過去記事「ウェブサイトの管理」

4/10/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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今回は、皆さんがウェブサイトを運営や管理する際に法律的に気をつけなくてはいけない点を考えていきたいと思います。ウェブサイトというのは不特定多数からのアクセスを受けることが前提となっており、その意味では法律的にも注意が必要な点がたくさんあります。今回は、私も自分の事務所のウェブサイト(www.marshallsuzuki.com)を一新したことを契機にウェブサイトに関する法律を研究しましたので、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。必要であれば、私のウェブサイトのプライバシーポリシーなどを参照してみてください。
 
まず、皆さんのウェブ上の情報を守るために、著作権、知的財産が皆さんに帰属しているということをできるだけ多く表示しておくことが大事です。All rights reservedといれ、その権利が帰属している人や団体名を記述し、その後2002、つまり表示している年を書いておくと、著作権が発生していることを第三者に対して通知できます。アメリカ著作権局に登録をすることもできますが、登録をしなくても、このようにウェブサイトに表示するだけで、慣習法上の著作権が発生しますので、やっておくことをお勧めします。
 
次に、ウェブ運営者・管理者が免責されるような情報をアクセスしやすい位置に入れておくことが大事です。ものを販売されている方々は特に注意が必要です。連邦や州などの規制が考えられるからです。また免責の内容にかんして、リンクで第三者のサイトに飛ぶように設定している場合には、ウェブの運営・管理者のコントロールが及ぶ部分と及ばない部分についての対応についてはっきり記述しておく必要があります。また、内容に関して第三者からのリンクを合意なくしてはできないという形にしておくと良いと思います。また、情報などを提供するサイトでは、情報についての正確性、一般的な情報であるといったこともはっきり記述しておくとよいと思います。またアダルトコンテントなどを含むウェブサイトではアクセスするユーザーをフィルタリングする必要もありますから、その点も免責事項に加えておくと良いと思います。
 
第三点目ですが、第三者の出版物などを使用する場合には、著作権やライセンスなどの許可に問題がないことも確認する必要があります。かってに第三者の出版物を使うことは著作権法に触れる場合がありますから、ウェブサイトに掲示する前に必ず確認をする必要があります。また、紙面を使って出版されているものを勝手にオンライン化することは特に注意が必要です。アメリカの判例でも勝手に紙で出版されている文章オンライン化してしまうと、著作者の意思に反していると認められています。ですから、どうしてもオンライン化をしたい情報がある場合には必ず著作者の許諾を得ておくことが必要です。私も個人的に私の文章を勝手に使われたことがありますが、ちゃんと事前に許諾を取っていただければ快く使っていただけるわけですから。
 
第4点目ですが、プライバシーポリシーを各サイトで用意することをお勧めします。プライバシーポリシーとは、ウェブの運用・管理をしている場合、どのような情報をアクセスする人から集めているのかをはっきり開示して、理解してもらうための文章です。ISP(インターネットサービスプロバイダ)を使ってウェブをお持ちの方は、アクセスする人に関するある程度の情報が得られますので、どのような情報が得られるのかを確認して、そのことを一般にアクセスする人に告知する必要があります。ウェブサイトによっては、さまざまな情報を勝手にアクセスした人から得て、そのメールアドレスなどを悪用して、ダイレクトメールなどに使用しているところも目立ちます。皆さんのサイトがこのような行為に利用されることがないということをはっきり明記することが、アクセスをする人たちにとってもひとつの信頼感となることでしょう。また、アクセスしているユーザーが情報をウェブサイトで開示する際にも、その情報の秘密は守られるということをはっきり記述する必要があります。また、秘密が守られないのであれば、そのこともはっきり記述することが大事でしょう。ウェブにアクセスするユーザーにとっては、情報を開示するということはある意味勇気がいることです。そういう意味では、ユーザーのプライバシーがどの程度守られるのかをはっきり書いておくことが大事なのです。
 
第5点目ですが、ウェブの運営者・管理者が著作権侵害の責任を逃れられる法律があります(U.S.C Section 512(c)(2)(A))。この条文を利用して責任を回避するためには、著作権局に一定の通知をすることと、ウェブページを管理・運営する当事者に簡単に連絡ができるような方法を定めることが必要になります。詳しい情報については紙面の関係上、書けませんが、興味のある方はアメリカ著作権局のサイトにアクセスしてみるとよいでしょう。この条文に関する運用は現在流動的なので、まめにチェックをして情報を確認する必要があります。
 
インターネットで情報を一般に公開するというのは、運営者・管理者にとっても、アクセスするユーザーにとっても非常に利益となる面がありますが、反面、相手の顔が見えない通信方法や情報伝達方法でもあるわけで、今までの生活とは違った面での注意が必要なわけです。皆さんもウェブサイトを運営・管理されているなら、これらの点についてはぜひ気をつけてくださいね。

過去記事「契約の当事者」

3/26/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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今回は、契約書に関する基本中の基本について皆さんと考えてみたいと思います。契約はいくつかの要素から成り立っています。たとえば、売買契約の場合、契約の当事者が何を、どの程度の価格で何時までに引き渡し、その代金をいつまでに払うといった要素があります。 このように契約を構成する要素はいくつもあるのですが、その中でも基本中の基本が「誰と誰が契約をするのか」、つまり契約の当事者は誰かという要素です。たとえば、太郎さんが持っている消しゴムを花子さんが買う、という契約の場合には、明らかに太郎さんと花子さんが契約の当事者といえると思いますし、皆さんにも違和感がないと思います。 では、花子さんはマクドナルドでアルバイトをしていて、太郎さんはそのマクドナルドで、バリューミール(日本では「お勧めセット」と呼ばれているかも)を買った場合、太郎さんと花子さんははたして契約の当事者と言えるのでしょうか。皆さんどう思われますか? 太郎さんは自分でバリューミールを買っているのですから、当事者と言えることは間違いなさそうです。 では、花子さんはどうでしょうか? 確かに店でスマイルしながらバリューミールを太郎さんに出しているのは、花子さんでしょうし、会計をしているのも花子さんかもしれません。しかし、花子さんはマクドナルドのその店でバイトをしているだけですから、花子さんは契約の当事者ではなく、マクドナルドと太郎さんが契約の当事者ということになるのです。 なんだ、ちょっと考えればわかるじゃないか、と思われる方もいらっしゃいますが、結構契約を作成したりすると、こんがらがってしまうこともあるんですよ。 特に、契約書に何人も当事者がでてきる場合や、当事者が個人ではなく、会社や団体である場合にはややこしくなるのです。
 
マクドナルドで注文するのも売買契約ですが、生活の中には様々な契約が溢れています。 働いて収入を得るのも契約、交通機関を使っても契約です。ただ、皆さんが「契約書」なるものを作成しないだけで、口頭の契約によって、当事者の信頼関係をもとに、社会が動いていくのです。しかし、ある程度の規模の取引になると、契約は書面によって行われることになります。特に会社間の契約は書面によることがほとんどです。その場合、株式会社Aと株式会社Bで締結されますね。しかし、サインをするのは、その会社の実務を担う、代表取締役などの管理者です。ここまでは一般的な実務ですが、訴訟があって、会社内でたくさんの個人が訴えられたり、管理責任を問われたり、はたまた会社自体にも損害賠償の責任などが生じると、和解契約書などを作るときに相当注意しないと弁護士でもミスがでる場合があります。
 
契約書のレビューの仕事をしていると、日本語の契約書では「甲」「乙」「丙」「丁」などの古い日本語を今でも使用していますが、時々当事者が文章中でこんがらがって、権利関係が不明確になっているものも見かけます。また、アメリカでは雛形などが出回っていますが、そのまま使ってしまうと、She なのにHe になっていたり、会社がheとかsheになっていたり、といった、細かい部分で契約書が不明確になっていたりします。
 
まあ、細かい不整合性であれば、目をつむれますが、契約書で保証をする場合など、ちょっと間違うと保証の効力に関して命取りになる場合もあったりして、「細かい間違い」で済む問題ではなくなります。 弁護士でも非常に気をつけて、チェックをするところですから、皆さんも気軽にサインをする前に少なくとも当事者の名前は契約内容に合致しているか、確認されると良いと思います。 まあ、すごく基本的なポイントかもしれませんが、契約に触れる方々には、注意しておいていただきたい一点です。

過去記事「約因」

3/19/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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今回は皆さんに馴染みがそんなにないであろうコンセプトを考えてみましょう。日本語で訳すと、「約因」英米法では、Considerationと呼ばれるものです。契約書を読んでいると、アメリカでは必ず「In condieration of...」とか、「For the value received」といった記述が契約書に書いてあります。時々、翻訳を見ていると、法律をわかって翻訳していないため、難解になっていることがあり、ぜひ、今回、この約因というコンセプトをわかっていただきたいと思っているのです。私も最初は日本の法律を勉強していたので、この「約因」というコンセプトが出てきたときには、よく悩まされました。 口約束でも書面による約束でも構いませんが、契約というのは、まず二人(会社などでもよい)以上の人がお互いに約束するところから始まります。この約束をする人達を「当事者」と呼んだりします。たとえば、一方の当事者が「この鉛筆を50円で売ろう」、そしてもう一方の当事者が「それなら、その鉛筆を50円で買おう」という約束をすることによって契約は成立します。「売ろう」、「買おう」という意思が合致したときに契約が成立したことなります。ということは、基本的に書面でなくても口約束でも立派な契約になるのですね。日本では、契約をしようと申し出ることを「申込」といい、その申込に対して、「了解しました」ということを「承諾」といいます。日本の民法では契約は、この申込と承諾があって、契約が成立します。一方の当事者が約束を破れば、法的に強制ができるのですね。ところが、アメリカを含め、英米法の下では、この申込と承諾の他に、約因というコンセプトがなければ、契約は成立しません。
 
約因(Consideration)というのは、歴史的なコンセプトの変遷があったものの、現在では契約の当事者がなんらかの「価値を交換する」ということです。つまり、申込と承諾があっただけではなく、何らかの価値をお互いに交換してはじめて契約となるのです。アメリカの法律を学ぶ学生も頭を悩ますところですが、簡単な例を使うと、「鉛筆を50円で売ろう」というのが、申込で、「その鉛筆を50円で買おう」というのが承諾だとすると、この契約では、「当事者同士で50円と鉛筆を交換すること」が、約因となります。英米法ではこの「約因」というのがあってはじめて契約が成立することになりますから、契約書を見ても、必ず、For the value receivedとか、In consideration thereofなどという、当事者同士で交換していることを明確にしている文章が記載されているのです。ですから、翻訳をするときには、必ず契約書を読み、どのようなものが交換の対象になっているのかを考えなくてはいけません。不動産を借りるときには、住む権利と家賃を支払う義務が交換されていますよね。弁護士に仕事を委任するときには弁護士が業務を行うことと、その報酬を支払うことが交換されることになります。
 
日本では、「贈与」というと契約の一形態と位置づけられています。一方の当事者が他方になにかあげることが贈与契約とされていますが、アメリカでは一方がもう一方の当事者にものをあげることは契約とはみなされていません。なぜかといえば、一方がもう一方にものをあげるだけでは、ものを交換していないですよね。交換がなければ対価性がないですから、約因もないとみなされ、契約としては成り立ちません。こういった贈与を契約としたいときによく使われるのが、1ドルを対価として、ものをあげるといった形にすることです。たとえ1ドルでも交換していれば、対価として成り立ちますので、約因とすることができるのです。契約を成り立たせるためによく使われていたテクニックなのです。 以上で約因というコンセプトがある程度おわかりになっていただけたでしょうか。最近の学説では、約因というコンセプト自体が必要ないものではないかという議論も活発に行われています。果たして、対価性が実際に必要なのか、学者にしても意見が分かれるところなのですね。ただ、一般的なレベルでは、現在でも「価値を交換すること」が契約では必要だと認識し、契約書を作るときには必ずこの対価性を反映させることを忘れないでくださいね。

過去記事「会社の経営者としての責任」

3/12/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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​今回は皆さんに経営者や会社の関係者としての責任と個人的な責任ということについて考えてみましょう。よく「経営者が責任を取って辞任した」などという新聞の見出しを見ることがありますが、記事をよく読むと経営者自身に問題があるわけではなく、経営者が会社の業績不振や、その他社会的にも取り上げられる不祥事があって辞任するという例を多く見受けます。言ってみれば、本人が悪いかどうかわからないけれども、会社のトップであるが故に責任を取らなくてはいけないという事態が多くあるわけです。 日本でもいろいろな不祥事がありましたが、トップの人が確実に悪いことをしているという例はほとんど表に出てきません。もちろん社内で尻拭いの縦型人事ができているからかもしれませんが、経営者としては、経営不振や部下の不祥事で責任を取らなくてはいけない問題があるわけです。 ただ、職を辞任するということが責任をとるということがほとんどであって、法的にその経営者が、経営をしていたからということを単独の理由として、損害賠償などの責任を負うことはあまり多くありません。経営責任ということと、個人的に経営者が責任を負うということについて少々掘り下げて考えていきましょう。
 
基本的に、会社の経営者が個人的に責任を負わなくてはいけない場合というのは、その経営者が個人的に悪いことをしたり、法的問題が存在するのに故意に対処をしなかったりする場合です。経営者本人が悪いことをしているということが責任を負う根拠になるのです。当たり前ですかね。 よく、会社を設立するという業務を私の所属する事務所でも担当しますが、会社を設立して会社名で業務をすると、社長以下経営陣は個人的には責任を全く負わないと考えられている方もいらっしゃいますが、もしご自身が社長になられて、法的に問題のあることをした場合には個人的に責任を負う場合もあるということを理解していただきます。株式会社を設立するイコールすべての責任は会社に存在するということではないのですね。
 
さて、それでは具体的にどのような例において、経営者が個人的に責任を負うのでしょうか。以下列挙しながら考えましょう。ただこのコラムでご紹介する事例が全てではないので注意してくださいね。
 
まず、時事の話題としても大きく取り上げられることの多い証券取引関係を考えましょうか。証券取引法というのは、証券の扱いを公平なものにして、証券の価値を正当なものにして、一般の人たちの信用を得ようとする目的があります。簡単に言ってしまえば、株などの証券というのは、価値があってないようなものですから、システムをきちっとしておかないと悪用する人が後を絶たないのです。よく聞くのがインサイダー取引という言葉でしょうか。会社内でしか知り得ない特別な情報を使って、株価が上がるのを事前に知り、株を買うことが代表例ですが、経営者などの特別な地位にいる人が個人的な責任を負う典型です。 また、よく聞く例は、会社の合併などが行われることが一般に知れると、株価があがるという場合があります。合併により、より業務が大きくなったり、より効率的になると予想されたり、業界でも力を持ったり、といろいろなメリットが考えられるからでしょう。インサイダー取引などの株価に関しての事柄はアメリカでは証券取引局(SEC)が監視していています。 株により経営者が不当に利益を得た場合、会社から不当利得について訴訟される場合があるでしょうし、損害賠償責任を負う場合もあります。加えて、証券取引局が公的にこの経営者や内部の情報を漏らした者を訴え、場合によっては罰金、禁固刑などが科せられることがあります。
 
経営者という地位においては、会社の秘密情報を多く手にしたり、新製品の開発や、特許の情報などが入ってきますね。 このような情報を事前に漏洩して、自己または特定の第三者が株の利益を得ることをインサイダー取引と呼びます。アメリカの証券取引委員会は私見では、アメリカの連邦機関の中でも特に優秀な人材が揃っているところです。ここで働く弁護士も非常に優秀な人が多く、インサイダー取引に関しては、厳しく法律を運営しています。ですので、アメリカにおいては経営者の責任として常に気をつけなくてはいけないのはが証券取引法です。
 
その他「経営者の責任」といえる代表的なものを考えておきましょう。 まず、取締役の対外的な責任についてです。 アメリカでも日本でも同じだと思いますが、中規模以下の会社であると、お金を借りたりするときには、必ず個人保証を求められ、ほとんどの場合には会社の代表取締役が個人の保証をつけます。なぜかというと、会社というのは、会社財産がなくなったり、倒産をしたり、ということが考えられますが、ある程度財産を持っている個人というのは、簡単には破産や民事再生を申し立てることができません。ですから、ある程度資産を持っている個人に金融機関は責任を持ってもらいたいということになるわけです。 会社が倒産したり、借入金の返済が滞ったときには、通常、保証人となっている会社の経営者が責任をとることになるのです。 
 
次に、契約関係や不法行為関係で、経営者が会社の代表としてではなく、個人的に責任を負う場合があります。 経営者がいくら会社の代表取締役でも、個人的に締結した契約に関しては責任を負うことは明白ですね。たとえば、自分で趣味のボートを買って、その支払いはするのは個人の責任といった場合が考えられます。 難しいのは、不法行為が絡んだ問題です。「不法行為」というのは、法律用語ですから、必ずしも「違法」や「悪いこと」と結びつけないでください。ある人が故意または過失によって人に損害を与えた場合、因果関係が存在する程度では責任を負うという意味です。詳しくは日本の民法の709条でも参照してみてください。 経営者としての不法行為としては、たとえばセクハラや不当解雇などの問題が考えられます。経営者が経営者のキャパシティを越えて、不当に被雇用者に対して損害を与えるような場合には、経営者は個人的に不法行為責任を負います。通常会社の定款等に、どの程度経営者が責任を負うのかが明確にされていますが、ほとんどの会社では、会社の経営上、個人責任を最小限にするように書かれているのが実際のところでしょう。会社が大きくなると、デラウェア州に法人の本拠地を移し、法人登録をするという会社が多いのですが、デラウェア州法では、経営者の責任に関し、最大限に経営者に対して寛容であり、更に今まで多くの裁判例があるので、経営者側としては会社の経営に際して予見できる部分があります。デラウェア州法人の人気の秘密の一つに、この経営者の免責ということが挙げられるのです。
 
もう一つ大きな経営者としての責任は、株主に対しての責任です。会社の持ち主は株主であり、経営者ではありません。もっとも株主と経営者が同じという場合も多くあります。経営者の株主に対しての責任とは、会社の業績面であるとか、会社の運営に関する面であるとか、ビジネスの面がほとんどであり、株主にしても、どの程度その会社の株主になっていることで利益があるのか、という面だけを考えている場合が多いので、お金さえ儲かっていれば、問題がないというのが、通常でしょう。しかし、経営者が違法な行為を犯したり、お金を横領したり、といったことがある場合には、株主は訴訟により、経営者の責任を追及することができます。株主代表訴訟などという言葉をお聞きになったことがあると思います。最近では、ヨーロッパで、会社の経営者があまりにも過大な報酬をもらっているということをベースに株主が訴訟を起こしているという例もあります。
 
このように経営者というのは、対外的にも対株主にも、そして対政府に対しても責任をもって会社を経営していかなければなりません。その責任に対して報酬をもらっているという面があることは確かです。前回今回と経営者というのは決して楽なものではなく、重い責任を課されているということを法律の面から考えてみました。

過去記事「 契約変更の注意点」

2/28/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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今回は一般的ですが、契約をすでにしている当事者間でその契約の内容を変更する場合の注意点について考えてみたいと思います。具体的な例を使って考えてみましょう。たとえば、身近なところでは、家を借りるといった賃貸借契約でしょうか。1年間といった継続した期間、お金を月々支払い、その対価として、家やアパートなどを使えるという契約です。ところが、長年にわたり賃貸借契約のように当事者間を縛る契約では、時間の流れや事情の変更で、契約内容が変更されることがあります。賃貸借契約などでは、たとえば、車を買ったから車庫を借りる項目を追加するとか、家賃が値上げになるといった場合です。
 
こういった変更を口頭で両当事者とも納得して、従う分は構いませんが、当事者間で問題になったときや、また契約をしていない第三者が契約当事者の地位を受け継ぐといった場合に問題となる可能性が生じます。簡単に言うと、契約の内容が変更されても、その変更された内容がちゃんと書面になっていないと、第三者が見たときに、そのような変更を客観的に知り得ないことになってしまいます。そうすると、契約内容が曖昧になってきて不利益を被ってしまうかもしれませんね。ですから、契約内容を変更する場合、たとえば上記で例として使った賃貸借契約ですが、書面でどのような変更があったのか、たとえば車庫を追加で利用する場合には、その旨を記載した書面をつくっておくことが大事になります。驚かれるかもしれませんが、契約書で訴訟になるという場合には、この変更点を書面にしてあるかどうかというポイントが争われることが少なくありません。
 
ところが、アメリカは契約社会ですから、簡単な追加書類では事足りない場合があります。まず、皆さんが確認しないといけないのは、元となる契約書です。たとえば、売買契約やリース契約、それに賃貸借契約などでも、必ず契約の内容を変更したり、追加条項を加えたりする場合の制約が書かれています。もし、家を借りている、何かものをリースしているといった場合には、そもそも当事者が締結した契約書を確認する必要がでてくるのです。
 
契約書で定型的に使われるのは、契約上の双方が書面によって合意した場合でなければ、契約内容の変更や加除は認められないということが書かれています。ですから、口頭で契約が変更されても有効では無い場合があるのです。上記の例を使って考えると、車庫を追加で借りるといった場合、元の賃貸借契約書に書面によらなければ契約の変更ができないと書いてあると、口頭で車庫を借りる契約をしていたとしても、有効に元の賃貸借契約に組み込むことができなくなります。もし、友達に自分が住んでいるところを引き継いでもらおうなどと考えている場合には、後から「車庫は使えないよ」と言われてしまう可能性があり、そういわれた場合、反論が難しくなる場合があるのです。ですから、特に継続的に契約をしている(賃貸借契約など)場合には、元の契約内容に変更点があったときには必ず元の契約書に沿った書類をつくっておいた方がよいことになります。
 
もちろん、元の契約書に沿った内容の文言をつくらなくては効果が無い場合がありますが、以下簡単にどのような内容を盛り込むことが必要か考えておきましょう。 
 
まず、基本となる契約書の内容を修正するという内容をはっきり盛り込む必要があります。いつつくられた契約書をどの当事者で修正(Amendment)するのかを最初に書きましょう。
 
次に、基本となる元の契約書のどの部分を修正するのか、また新たに追加するのかはっきり記載しておく必要があります。条項を修正するのであれば、その元となる条項、それに新しく修正される、削除される、または追加される内容をはっきり記載しておく必要があるでしょう。
 
その他、いつ実際に修正条項が有効となるのか、また元の契約書の条項は修正された以外はすべて有効に存続するなどの項目などをいれる必要がでてきます。
 
個人の契約などに関しての修正では当事者同士が話し合いをすればさほど問題は発生しないと思いますが、何十万ドルにもおよぶ不動産リースなどをしている会社は契約の内容を変更したいと思うときには必ず法律的なアドバイスを受けることをお勧めします。

過去記事「インタビューの留意点」

2/13/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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日系企業がアメリカに進出してきて、基本的なビジネスのセットアップ、たとえば会社の設立やビザの問題などを解決したとしよう。次のステップとして考えなくてはいけないのが、人を雇用することだ。往々にして日本から進出してきた企業は忘れがちだが候補者のインタビューの際には質問等で気を付けなくてはいけないことが多々ある。やはり人種問題など日本にはあからさまには存在しない問題があり、インタビューの質問の際にも注意しなければならない。雇用者と被用者の間に立ち、斡旋を行う業者の中には的確なアドバイスを行うところも少なくない。しかし、雇用に関する法律は人種差別、年齢の差別それにセクハラなどの問題と、議会を通してではなく、裁判を通して判例で形成される場合が多い。言葉を返せば、日々裁判所を通して形成される判例が実務上重要になってくる分野である。もちろん顧問先の企業であれば私でも状況に応じたアドバイスが可能であるが、気軽に相談できる弁護士がいない場合には、できるだけ雇用に関する情報は手に入れるようにしたい。インターネット上でも有益な情報は散見する。以下、候補者のインタビューに関して、注意したい点を考えていく。以下の点は連邦の法律により規定されている。
 
まず、個人に関する情報で質問してはいけないものに、出生地(家族の出生地を含む)、年齢、結婚しているかどうか、性別(Mr. Ms. Mrs.などの質問を含む)、家族の出生地、家族の住所などについては質問することはできないし、また答える必要はない。 出生に関することは本人だけではなく、配偶者、子、親やその他の親族に関しても質問することができないことを念頭に置いてほしい。また、就職のインタビューにおいて、出生証明などの出生に関する書類を提出させることも許されていない。 また、名前についても、法律的に裁判所が認めた改名前の名前や結婚する前の姓についても質問することはできない。個人情報に関しては名前などの基本的な質問はすることは許されているし、年齢も聞いてはいけないというのが通常の考え方だが、未成年者でないことを確かめるために18歳以上かどうかを聞くことは許されている。住所や過去に住んだ場所などを聞くことも良い。
 
次に個人の肉体的なことまた精神的なことについて聞いてはいけないことがある。まず身長や体重、それに肌の色、仕事に直接関連していない身体的、精神的な障害などについて聞くことは許されていない。直接インタビューをしたときに候補者を観察することができるので、つい身体的なことなどに言及する例があるがあくまでも仕事の内容に関係がなければ聞くことはさけた方が良い。もし、採用を予定しているポジションが特定の身体的・精神的な能力を要求する場合には、その仕事に関して候補者の能力が適切であるかどうかを判断する材料として、障害の有無については聞くことが許されている。また、採用を決定する前に候補者の写真を要求してはいけない。
 
第三点目だが、個人の宗教には言及できない。所属している団体を挙げさせる場合には、差別に該当しない程度なら許される。性的なオリエンテーションについてはもちろん質問は許されない。教育については、学校教育については聞けるが、外国語をどのようにして習得したかを聞くことは許されていない。また、過去の職歴について聞くことは可能である。 市民権を持つかどうか、また有効にアメリカにいる権利があるかどうかについては質問することは可能だが、最低限度の質問に抑えておいた方がよい。
 
以上のように、質問して良い事項といけない事項がたくさんあるわけだが、人を雇用するにあたり、どのような点に気をつければよいのかを考えたい。 まず、雇用を行う上で、必要な事項、すなわちポジションが要求する事柄について集中した質問をすることである。一般的に言う「無駄話」は極力さける必要があるのだ。
 
また、会社において、インタビューを行う者の教育も非常に大事だ。インタビューを行うものは、その経験がある程度あることが必要であろう。 また、一人でインタビューに望むのではなく、状況が許せば複数人でのインタビューということも考えられるだろう。 また、画一性を得ながら、違法性を最小にするために、インタビューに関しての用紙を用意しておくのが無難だ。 事前にインタビューに必要な条項を紙にまとめて会社でシェアしておくとよいであろう。このインタビューシートを弁護士などと相談して作っておくのも手だ。会社にとっても候補者にとっても大事なインタビュー、ぜひ必要最小限の知識は備えておきたいところだ。

過去記事「家賃」

2/5/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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今回は、最近のベイエリアでの家賃の動向に連動した法律の問題について書いてみようと思っています。ドットコムは生き残るところはちゃんと生き残り、消えるところはどんなに大きなところでもフェードアウトといった方向性がはっきりしました。景気が悪くなれば失業率が高くなり、ベイエリアを離れていく方も少なくありません。日本の会社でも日本に撤退するなどという話もひとつやふたつではないのが現状です。ベイエリアの住宅事情も一時期は家一件を借りるのに、通常の人の給料よりもどうみても高い金額を支払わなくてはならないような時期があったわけですが、最近ではだいぶ家賃も落ち着いてきたみたいですね。まず、サンフランシスコを含めて商業物件の空きが目立ちはじめて昨年末は街を歩けばAvailableの看板をどこでも見かけることができました。次に住宅物件の値段が下がりはじめました。すごい勢いで下がっているようで、一ヶ月分無料、セキュリティーデポジットもほとんど無し、なんていう状況になってしまいました。
 
このような状況になって「むむむ、」と唸ってしまっている方々は、ちょうど家賃の値段がピークの時に、一年間などの期間で賃貸借契約を締結された方々でしょう。同じような家に住んでいるのに、新しく入ったお隣さんの家賃が自分が払っている値段よりもずいぶん安い、知り合いの不動産屋さんに聞くと「ちょっと高いですねぇ」なんて言われてしまっている方たちです。また、横目で見ていると、ちょっと前までは競争が激しく借りられなかったようなアパートや家がごろごろマーケットにでている訳です。そうするとおもしろくない。なんとかして、現状縛られている賃貸借契約から解放されたい訳です。私のところにもこのような相談がよくあります。
 
まず、賃貸借契約に、商業用でも住宅用でも期間の定めがある場合、原則としてその期間は賃貸借契約に縛られることになります。ですから、賃貸借契約を締結するときに、たとえば月々4000ドルで三年の契約を締結すると、その契約書に署名した時点で、賃借人には基本的に14万ドル以上の家賃支払義務が生じるのです。特に住宅用の賃貸借契約に関しては、サンフランシスコ市などでは条例を使って家賃の値上がりを一定の金額に抑えたり、正当事由がないと大家はテナントを立ち退かせることができない、といった特殊な法律が存在するのも事実です。しかし、基本は通常の契約ですから、一年間借りるといえば、一年間、三年間借りるといえば三年間縛られることになります。
 中途解約が賃借人の方から認められる場合というのは、まず大家が契約違反をしている場合です。たとえば、契約上大家がしなくてはいけない修繕をしなかったり、物件の引き渡しをしなかったり、契約の対象となる物件を引き渡せなかった場合などです。また、大家が破産をした場合などは、契約が解除できる旨が契約書に明記されている場合が多いです。
 
上記の様に正当な事由が無い場合には、基本的には中途で借りている家を出てしまっても、その後の家賃は賃借人の責任になってしまいます。もっとも、大家さんは、賃借人が出ていってしまった後、必ず全力をつくして、新しい賃借人を見つけなくてはなりません。つまり、たとえば、あと半年分契約上は家賃が前の賃借人からもらえるという権利があるとしても、新しい賃借人を探す努力を何もしなければ、六ヶ月分をすべて請求することは難しくなります。
 
とはいえ、借りている物件を勝手に出ていって、大家さんからの請求を待って考えようというのは、ちょっと考え物ですよね。やはりどうどうと処理できるかどうか、話し合うのが一番よいのです。話し合いの可能性としてはメジャーな方法が2つあります。
 
一つは、大家さんに事情を話し、契約に記載されているか、話し合いで決めて、ある程度のペナルティーを支払って契約を終了させてもらうことです。大家さんが良い人であれば、この方法も充分に可能だと思います。
 
二つ目の方法は又貸しをする方法です。契約書には大家さんの同意をとった場合又貸しができると記載されているものをみかけますが、自分で新しい転借人を見つけ、家賃を交渉し、必要があれば差額などを損になりますが払い、出るという方法です。ただし、この方法は、転借人が住んでいる間は、もともとの賃借人も責任を負う可能性が大ですから、リスクはあります。
 
どちらにしても、ある程度金銭的に泣くことが必要になるかもしれませんが、後で訴えられる可能性を考慮すれば、億劫がらずに大家さんと話しておくことが大事なのです。
 
私の事務所内でもこのところ引っ越しをする人が多くなっています。高級そうなアパートなどでも、ずいぶんリーズナブルになったようで、私が見ていても、「いいなー」と思うようなところに引っ越しをしているようです。私の事務所の近くにもとてもブルジョア的な高層アパートがあり、そこにもうちの事務所の人達が何人か住んでいます。事務所に通うのに五分もかかりません。確かに便利なのですが、家と事務所関係なく仕事の事を考えそうで、私自身はちょっと考えてしまいます。仕事時間と自分の時間を最大限につくるには、家と仕事場が近い方が良いそうなのです。まったく頭が下がります。
 
事務所でも独り者の人達は、気軽に引っ越しをしたりできるのでしょうが、家族となると、スペースも必要だし、なかなか動くのも大変そうです。ある程度広さを確保するとなると、今までは郊外にしか住めなかったのが、家賃が下がってきたおかげで、「やっと念願のサンフランシスコ組に入りました」などと言っている人もいます。バスや電車で比較的どこにでも移動できますからね。住むところは大事ですから、私もみんなが満足している状況で住める環境になってきたのが、人ごとながらとっても嬉しいのです。ところで、引っ越しパーティーを主催するといっていた事務所の人達がいましたが、未だにインビテーションをもらっていませんねぇ。

過去記事「判例調査」

1/31/2019

 
  本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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今回は、アメリカでのインターネット上での法律リサーチについて少々考えてみたいと思います。主に弁護士向けになります。 また、各論まで限られたスペースで論じることはできませんので、主にアメリカ法リサーチのバックボーンを実務的な観点から考えていきましょう。
 
まず、日本法とアメリカ法で根本的に考え方を変えていかなくてはならないのは、アメリカには連邦法、それに各州法という二段階構造になっているという点です。実務では、具体的な法律論を論じる前に必ず、どの管轄の法律が適用されるのか、考えなくてはなりません。 次に、リサーチの内容です。アメリカでは日本で言う「六法全書」はありませんし、立法や判例が活発に変遷していきますので、今までのように判例集などに頼るということも不安が拭い切れません。日本では、新法の制定などは官報などに目を光らせていれば、ある程度は把握できますが、アメリカでは各団体、裁判所、省庁等、公布がばらばらですので、きっちりとしたリサーチには日本に比べ格段に時間がかかると考えて良いと思います。
 
これらのアメリカ法における日本法との違いを克服する上でインターネットはある意味法律業界に革命をもたらした一面があります。また、アメリカではインターネットにおける法律の情報収集に関しては群を抜いて便利ですし、重要な情報がごろごろ存在します。日本法を調査するときにアップデートが足りないなど不便を感じることがありますが、アメリカ法に関してはユーザーの観点を非常に考慮したものも少なくありません。
 
アメリカではインターネット上での法律の情報提供をビジネスにする例が少なくなく、伝統的な出版社が電子情報配信に積極的に乗り出し、経営の転換を図ることに成功したといっても良いでしょう。しかし、インターネットの普及と同じくして、情報を電子化してきた出版社は、情報提供および、情報のプリントアウト等に関して、非常に高額な使用料を要求してきました。当初は価値があったかもしれませんが、だんだんインターネットの不況が加速化してきましたので、私見では高額の支払いが実務上意味があるのか、疑問になってきたと思います。
 
詳細は業務上のノウハウもありますので、書くことを避けたいのですが、実際にアメリカの実務のスタンスで、どのようにリサーチをしているのか、述べておきたいと思います。まず、高額なリサーチエンジンを使用する場合、その帳尻はクライアントに回ってしまいます。そうすると、自己満足的なリサーチも増えたり、必要のないリサーチまで発生する可能性があります。やはり、実務家のスタンスとして、コスト面からでもクライアントのニーズに合わせるということは必要だと考えています。
 
では、どのような方法が現在のアメリカ法実務では最適なのでしょうか。まず、実務書、つまりアメリカではプラクティスガイドと呼ばれる、書式集や各エリア別の法律書がありますが、これは常時使用するものですし、簡潔に論点がまとまっている場合が多いので、電子化に頼らず、現在でも紙のものを使用しています。最初に、実務上の論点落としを避けるため、またどのような判例があるのか、傾向はどのようなものなのか、プラクティスガイドで確認します。 その後、連邦、州など限られた範囲で提供されている判例検索、条文検索エンジンで調査を深めていきます。この調査に関して、ある程度公に無料で公開されているリサーチエンジンがありますが、クリティカルな部分が不足しています。このため、有料の検索エンジンを使用しています。この不足の部分というのが、どの判例が否定され、現在どのスタンスの判例が指示されているのか確認できるという仕組みです。シェパダイジングなどと呼ばれますが、生きていない判例を除外するためには、必ずこの作業をしなくてはなりません。ただ、最近ではカリフォルニア法に限って言えば少なくとも10社程度が非常にリーズナブルな価格でこの機能を提供していますので、非常にアクセスし易くなっていますし、定額使用のエンジンが多いので、クライアントに迷惑をかけることもありませんし、徹底的に判例を調査することができます。
 
次に、実務家として落としてはいけないのは、最新の判例、立法のチェックです。毎日のように重要な判例がつくられている現状では、ほぼ毎日判例のチェックを欠かすことはできません。従来は、法曹用の新聞が発行されていて、その新聞に付属しているアドバンス・シートという、最新判例が原文のまま載っているものを使用していましたが、事務所にいない場合や、複数の人が同時に見たいという場合に不便でした。ところが、弁護過誤保険を提供する会社や、各弁護士会、それに任意の団体、たとえば、アメリカ法廷弁護士協会、移民法協会などが、毎日のように判例のアップデートを電子メールで送ってくれます。このアップデートを自分なりに整理をすれば、ちょっとした判例データベースをつくることができます。 立法に関しては、クライアントの興味および自分の興味がある、省庁のメーリングリストに参加すること、およびそれら団体、組織のウェブページの更新時に知らせてくれるシステムを作っておけば、忙しく変わっていく法律情報を短時間で確認し、データベース化していくことができます。 事件によっては、学者の意見や、二次的な参考書が必要になることがありますが、まずインターネットで一般的な検索を行い、それでも足りない場合には、一回毎の有料データベースを利用し、出費を最小限に抑える形を取っています。このように、固有の会社のデータベースに頼ってしまうのではなく、情報が多いのですから、実務家がイニシアチブを取って、マイ・データベースをつくっていくというのが、これからの実務の形のように思います。
 

過去記事「移民局の面接に弁護士を連れていくかどうか」

1/29/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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今日は、非常に実務的な移民法のポイントを考えていきたいと思います。どのビザが取れるのかうんぬん、と言った話題はどこでも見かけますが、実際に様々な形で移民局に召喚を受け、面接に臨む場合のことについて考えてみましょう。
 
まず、どのような機会に移民局まで行かなくてはならないか、代表的な例を挙げておきます。まず、結婚ベースで永住権を申請する場合には、申請書を提出した後に必ず面接が設定されます。一緒に住んでいるという証拠、たとえば写真や公共料金の支払記録を携帯するように要求され、面接に参加するというパターンです。 それから、永住権保持者が外国に長期に滞在していて、アメリカに再入国しようとして、あまりにも海外滞在が長いので、後日移民局に説明にくるように要求されるというケースがあるでしょうか。もちろん、逮捕されたり、移民法上の違反があるような場合にも、面接がありますが、基本的には平和な面接ではなく、どちらかというと取り調べという感じになるパターンが多いと思います。
 
移民関連の申請書をアメリカの弁護士に頼むということは外国人にとっては日常茶飯事でしょう。しかし、非移民ビザの申請等に関してはほとんどの場合、面接を伴いませんので、多くの外国人にとっては、「移民局の面接」というのは未知数かもしれませんね。ですので、ここでどのようなものなのかを感覚として感じていただきたいのです。
 
さて、ほとんどの場合、移民局の面接は移民局からの通知によってはじまります。通知は一方的なので、通常面接期日の設定を変更するのは難しいものがあります。期日変更をする位だったら、自分の都合をできるだけ変更しましょう。
 
面接になると「弁護士に付いてきてほしい!」と思われる方がほとんどだと思いますし、逆について行ってもらうことで、結果が違ってくる場合がある訳ですが、どのような場合に必要で、どのような場合には必要ないのかある程度知っておくとメリハリがつくのではないでしょうか。
 
まず、ストレートに結婚をして永住権を申請して、面接をする、という場合には、過去に離婚歴が何度もあるとか、結婚に問題があるとか、移民局に何らのことを疑われる可能性があるとか、問題点がない限り、結婚されるお二人で行かれても、弁護士が付いていっても私の経験上あまり違いがありません。逆に「何で弁護士がついてくるのだろう」という目でみられるということもありました。ちゃんと結婚をしていれば、公共料金や銀行口座などを共有しているでしょうし、旅行もするでしょうから、いろいろな証拠は揃っているはずです。もちろん面接の前に、弁護士と打ち合わせをして、どのような書類を持っていくのか、またどのようなことを言うべきなのか、などを話すべきでしょうが、実際の面接日に移民局に弁護士が行く必要はあまりないかもしれません。というのも、移民局に行って、実際に質問を受けるのは、本人ですし、弁護士が変わって答えるということはあまりできないシチュエーションが多いからです。また、移民局の審査官はいじわるな人は特に、弁護士を無視する形で本人に質問をします。これは移民法上許されています。結婚によって永住権を取得する場合の配偶者の一方はアメリカ国籍、または永住権保持者なはずですから、申請者本人が英語ができなくても、それほど問題にならないケースが多いわけです。 質問を理解できなければ、もう一度聞けば良いですし、通常移民局の面接はインフォーマルなセッティングで行われることがほとんどですので、緊張を与える環境ではありません。しかし、辞書を持っていっても、質問の意図がわからない、などという状況では、不安も残るかもしれません。しかし、結婚による面接において弁護士の役目というのは、もし申請者がわからにことがあれば、助け船を出すという程度で、ほとんどの場合は、黙って座っているということになります。いわゆる一種の保険みたいなものでしょうか。
結婚の面接に対し、犯罪や移民法違反が絡んでいる場合には、弁護士を付けた方が良い場合がほとんどです。なぜかというと、自己に不利益な証言をしてしまうと、逆手に取られ刑事罰などにも発展する可能性があるからです。身柄を拘束されていないような事例だとしても、軽く見ないで弁護士に相談した方が良いかもしれません。 また、「面接」つまりインタビューという形で召喚をしますが、移民局は実質、取り調べをしているという例も少なくありません。場合によってはビデオに撮影するという許可を求められたりもします。
 
以上からわかるのは、結婚を通しての取得の面接に関しては弁護士の立ち会いは任意、犯罪が絡むような場合には、任意ですが、弁護士に相談した方がベターと覚えておいてください。それでは、次回新しいトピックを考えていきましょうね。また次回までさようなら。

過去記事「司法取引」

1/22/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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弁護人席を越え、裁判官席の横についている関係者専用のドアを開け、裁判官の専用室(チャンバー)に入っていく。目の前には裁判官が法服を脱ぎ、自分の椅子に座り、机を挟んで検察官が何件もの起訴状が入ったファイルを抱えて談笑している。入ってきた私に裁判官は笑顔で座るように指示し、司法取引がはじまる・・・。
 
という感じで、アメリカで刑事事件を受任すると司法取引がはじまります。日本では考えられない制度かもしれませんが、アメリカの連邦や州の刑事裁判では日常茶飯事に行われている刑事事件上の手続です。アメリカの刑事裁判は、ほとんどの場合、初回のArraignment(第一回公判)で無罪を被告人は主張します。無罪を主張すると、次の期日が設定され、裁判官、検事、弁護人を交えてどのように裁判を進行させるかを話し合います。この会議が実質的には司法取引と呼ばれています。どのような内容の刑罰で事件を終了させるか取引するのです。
 
司法取引ではいろいろな経験があります。ドメスティックバイオレンス事件の司法取引の場面、夫が妻に対して物を投げたり、首を絞めたりして、傷害罪・監禁罪・証人威迫罪などで起訴されている事件です。裁判官専用室に入ると、裁判官は検事あがりの女性、検事も女性、事件の調査をしている保護監察局の調査官も女性。軽い冗談を言っても、誰も笑わないし、皆さん口が「へ」の字になっています。私が一生懸命情状酌量に訴えようとしても、何も返事が返ってきません。ちょっとの間をおいて、裁判官が「この被告人は刑務所に入った方が良い矯正になると思う」と言い出す始末。私を除いて部屋の皆さん同意している感じです。「初犯だし、会社勤めもしているし、家族もいるのですから、実刑が適当というのはちょっと通常の事例から逸脱していると思います」と私が言っても、「通常の事例より逸脱しているじゃないですか」と怖い顔で返されてしまいます。「取引の内容としては、全部の罪を認めるなら考えてもよい」と検事が言い出す始末。 結局機転をきかせて、司法取引を続行することにして、次回はうまく男の検事があたる曜日を設定しました。結局、司法取引は成功しましたが、冷や汗をかきました。
 
ある遠方での刑事事件を受任したときは、一回は私の体調が悪く運転ができなく、もう一回は裁判所の期日指定ミスで司法取引に行けなかった時があります。二回とも裁判官に謝りの手紙を書いておきました。もっとも二回目は私の責任ではなかったのですけどね。三回目に裁判所にいくと、裁判官が私の事件を法廷で呼びました。二回も期日が合わなかったので、怒られるかな、と思いきや、このように謝りの手紙を出すということを他の弁護士も見習いなさいと、誉められた上に、私の文章まで読まれてしまいました。ちょっと恥ずかしかったですが、その後の司法取引は、私の考えていた最低の刑で司法取引が成立しました。というより、裁判官が検事を説得してくれたのですけど。
 
このように、司法取引といっても人間の関係から成り立っていますから、法理論だけでは解決できない部分があります。もちろん、個人的に裁判官や検事を知っている、友達であるというだけではだめで、誠意を持って事件に取り組んでいるかということがもろに出てしまう場面かと思います。
 
なぜ、司法取引なんかをするのか、と思われますが、弁護側からいうと、いくつもの罪で起訴されている被告人が陪審裁判に負けると、実刑もついてしまうという場合、最低の刑で有罪という取引を行い、罰金などの軽い刑で終わらせられるというメリットがあります。一方、検察側としても、陪審裁判となれば、事件数を多く抱えていますから、準備も大変だし、負ければ昇進にも響きます。この結果がわからない陪審裁判という不確定な要素が、司法取引という文化をつくりあげているのです。

過去記事「ビジネス・ファイナンシングの基礎」

1/16/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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今回はビジネスを立ち上げたり拡大していく上で、ベーシックですが非常に重要なポイントを皆さんと一緒に考えていきましょう。皆さんがもし経営者として会社または個人事業を経営するのであれば、雇用されて給与を受ける以上のことに気を払わなくてはいけません。たとえば、収入と支出をバランスさせることですね。ビジネスを大きくしたり、立ち上げたりする場合にはある程度の資本がなくてはいけません。いわゆる「元手」といわれるものです。物を売り買いする商売では、ものを買い、そしてその物を売り、利ざやを稼ぐ訳ですが、取引の対象となる物が多ければ多いほど、ある程度、利益が多く出ることになります。もちろん他にもたくさん要素がありますが、取引量の多さというのはビジネスにとって重要です。ところが、特に新規のビジネスだと、金融機関は融資を渋りますし、融資を受けられても金額としても大きくないかもしれません。アメリカでは銀行に融資を頼まず、株式を発行してお金を集めたり、他の会社や個人からお金を借りたりしてビジネスをはじめるというケースが一般的です。ドット・コムが全盛だったころ、株に出資された方も多かったかもしれませんが、このトレンドは別にドット・コムビジネスに限ったことではありません。今回は、ビジネスの資本を集めるための方法について考えてみたいと思います。
 
大きく分けて、ビジネスの資本を増大させるには、株や会社の持分を対価として、出資を募るファイナンシングの方法と、担保の有無にかかわらず、お金を借りるという方法があります。ここでは触れませんが、ある権利や商品、それにビジネス自体を証券化するという方法もあります。しかし証券化に関して論じると本が一冊ほど必要なので今回は割愛しますが、いつか機会があったら触れてみたいと思っています。
 
まず、株を発行することで株主となる投資者を募るパターンを考えます。たぶん、まったくの新規ビジネスでは担保のない状態で金融機関からお金を借りるということは難しい要素がありますので、その意味では株を対価として発行することはスタートアップ会社などにとっては比較的容易かもしれません。ドットコムもほとんどはこの方法で事業を立ち上げた歴史があります。
 
株を発行して投資者を募る場合、投資者は会社の所有者になります。つまり株主という地位を得るわけですね。株の発行には普通株や優先株など、株主の権利に多少差はありますが、株というのは投資であるという要素は一定しています。ということは、株というのは性質上、融資のように、一定の利息があるわけではないですし、会社が倒産すると、投資額を失ってしまう危険性があります。
 
株主は会社のオーナーですから、パーセンテージにもよりますが、会社の経営に対して口を挟めます。ビジネスに長けている株主がいる場合、会社は有用な意見や経営方針などを聴ける可能性もあります。ただ、第三者が経営に参加してくるということは有用な反面、経営の性質を変えてしまう可能性も非常に大きいという点を考えておかなくてはなりません。今までは一人や数人でビジネス上の決定をしていたとしても、第三者が加わると会社の方向性が変わってもやむを得なくなります。その意味では株の発行にも気をつけなくてはいけません。もっとも優先株という通常の株とは違って、多くの配当金を得る代わりに経営には口を出さないといった内容を設定してある株も一般的なので、株の発行については一言では言い表せないのです。
 
株の発行に対して、会社のキャッシュ・フローが許せば融資を受けることも考えられます。融資の場合、中小企業だと、だれか個人的な保証を要求されるのが一般的です。融資、すなわちローンは通常利息が付されますし、支払の期限やペナルティが厳しく定められています。言葉を返せば、余裕さえあれば、経営にはまったく影響がなく、資本の増加ができることになります。しかし、ローンが返せなくなった場合には、個人的に責任を追及されることがほとんどです。ですから、計画的に返済できる額が融資を受けられる限度ということになるでしょうか。もし会社の経営が行き詰まって、支払ができないなどという事態が発生すると、個人の財産までも返済のために充当しなくてはいけなくなり、影響が大きいのです。まあ、日本では株を発行しても、個人保証を取る例が多いので、この点あまり違いはないかもしれませんが。
以上が、簡単ですが、株の発行と融資の違いです。両者とも基本的な性質は違いますが、契約等で内容を大いに変更できますから、場合によって使い分けていきたいものです。その使い分けも経営者のセンスの問題だと思いますけど。紙面がなくなってしまいましたので、また次回新しいトピックを考えていきたいと思います。

過去記事「エスクロー」

12/26/2018

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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某テレビ局の「のど自慢」がサンフランシスコで行われました。私もしっかり見てきました。というのも、私の事務所もこのイベントの法律面に深く関わって、歌手やイベント関係者がアメリカに入国するまでは、とても忙しく仕事をしていたからです。このように、良い方向で仕事が成功し、クライアントも事務所のメンバーも皆さん嬉しいというのはなかなか弁護士冥利につきるものです。皆さんも仕事や勉強に燃えていますか。
 
さて、今回は日本には無い制度でアメリカで様々なビジネスを行ううえで、知っておいていただきたい制度をご紹介します。それはエスクロー(escrow)制度です。アメリカで不動産などを購入された経験がある方はご存じかもしれませんが、エスクロー会社は売り手と買い手の中間に入り、買い手からは代金を受け取り、売り手からは不動産の所有権を移転する必要な書類を受け取り、すべて必要な書類やお金が整ったことを確認して、エスクローに入っている書類やお金を受領する当事者に開放します。取引内容を確認する業者とでも考えてください。この制度は不動産取引の安全を考えると非常に有効な制度で、いわゆる日本の民法の理論上、問題になる不動産の二重譲渡の問題や、物権変動においておこる問題がなくなり、円滑で安全な不動産譲渡が約束される手段となります。エスクローといえば、不動産に関するものが皆さんにとっては一般的に目に入るものでしょうが、実はビジネス上でも様々な場面で使われることがあります。もし、アメリカで会社を買うとか、投資をするなどということをお考えになっている方がいらっしゃったら、エスクロー口座を開き、エスクロー会社に取引の一部を任せると、ぐんと安心感が増すと思います。
 
エスクロー口座をどのように使うかは、例を使って考えた方が非常にわかりやすい。ですから、まずどのような取引にエスクロー口座が使えるのか、実際の例を見てみましょう。お店を経営しているYさんは、Xさんに店舗、それにお店にある道具や在庫を売り渡したいと思っています。Yさんの店舗はリースしている物件で、あと三年リースが残っていて、加えて五年間のオプション契約が可能です。Xさんもこれは了承していますが、Yさんの大家さんがYさんからXさんに賃借人の地位を譲渡することを許可するか、または転貸借(いわゆる又貸し)を許可するのか、Yさんの大家さんの意向を知らないと、この店舗の売買が成り立たないことになってしまいます。つまり当事者であるXさんやYさん以外の人の判断を仰がなくてはいけなくなってしまいます。一人、二人と取引に関わる人が増えていくと、取引自体が進む速度が遅くなってくる。これは、各人の思惑の数が増えていくからです。 Xさん側としては、店舗を買い取るわけですから、お金を払えば良いですが、Xさんがもらい受けるもの、すなわち備品や店舗の状態などは、固有のものなので、専門家に検査をしてもらったり、譲り受けるものの内容も確認しておきたいところです。Yさんとしては、現金一括でもらえれば言うことはないでしょうが、Xさんがローンを組むことが条件になるといった場合、確実に融資先からお金が入ることを確認しておきたいわけです。XさんとYさんの間だけでも、このくらい確認したい事項がでてきますので、一日、取引の日時を決めて、「さあ売買を完了させましょう」というのは危険なわけですし、もっとも終わるわけがない。そこで、エスクロー口座を開くわけです。ビジネスエスクロー口座を扱っている業者もありますが、皆さんが使われている銀行や金融機関などもこのサービスを行っているところが多いです。もちろんただで、この役目をやってくれるわけがありませんから、取引の規模や煩雑さによって、数百ドルから数千ドルのエスクロー料金が課金されることになります。これは取引の内容によっては非常に価値のあるものになります。売買の完了を第三者が見届けてくれるのですからね。特に、売買金額が何億円にもなる場合には必須な訳です。
 
XさんとYさんは各々相手に渡す書類、権利、お金についてあらかじめすべて書き出して、エスクロー会社に伝えます。エスクロー会社はたとえば、リースにおける賃借人の地位がXさんからYさんに移転された、もしくは、転貸借が承諾されたという事実を書類で確認しなければ、絶対にXさんから振り込まれたお金はYさんに渡さないわけです。ですから、エスクロー会社は取引に関してある一定の期間、たとえば30日や60日といった期間、をオープンの状態にしておき、その期間内にすべての条件を当事者が整えるよう促すのです。このようにして、すべての条件が整ったときに、無事Xさんは店舗や備品などを手にでき、Yさんは売買代金を手にすることができるのです。こうすれば、リスクも最小限に抑えられますね。
このようにビジネスを売買する、または投資をして株を買う、知的財産権のライセンス契約を締結する、そういった場面でいくらでも使える可能性があるこのエスクロー口座を、皆さんも利用されてはいかがでしょうか。また、会社間の取引なども、時によっては多額の取引が行われることが少なくありません。ですから、ぜひエスクローを利用することで、無駄なエネルギーを使うことを最小限にしてください。

過去記事「 心の傷を法律で癒せるの?」

12/17/2018

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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交通事故の事件を受任すると、弁護士としては事件を一生懸命やり最大限の結果を得ることが業務の内容となります。損害賠償事件では損害額を算定し、慰謝料とともに回復するのが役目ですが、当事者の感じた心の痛みの回復をそのままできるということはなかなか難しいものがあります。私は個人的にはどちらかというと人に対して、理解しようと思うあまり全力を尽くしてしまう方なので、一人になると疲れたりする事もあります。しかし、人の悩みを聞くのが私の商売なので、どんなときにも前向きでがんばることを忘れないようにしようと思っています。自分のやっていることを信じていないとだめなのですね。
 
交通事故のケースを扱う場合、大きくわけて(1)人損、たとえばけがとか後遺症の問題、それから(2)物損、車が壊れた場合などの問題にわけられます。通常、弁護士が介入して事件を進行させるのは、(1)の人損問題に限られます。人損問題に関しては、治療代に加えて、事故から生じた体の痛みや苦しんだことに関して、慰謝料が支払われるからなのです。弁護士が介入して、この人損に関する算定をするのです。また、この慰謝料を含め、人損に関しては相手の保険会社もなかなか頑強に交渉してくる場合がありますから、法律論で相手をしていかないとなかなか事が運ばない場合が多いのです。(2)の物損の問題に関しては、たとえば車の修理の問題でも、過失の割合に応じて、車の修理代が支払われ終了してしまいます。もちろん、過失の割合などの交渉については、弁護士がやらなくてはいけませんが、物損に関して支払われるのは、実際の価額だけで、慰謝料というのは基本的にもらうことができません。どんな新車でも心を込めて維持している車でも、慰謝料というものを受けることができないのです。法律上、基本的には物を壊された場合、その物の修理額などに限られます。車のコンディションが以前と違うなんていう場合でも、多くの場合、全く元の状態に戻すということはなかなか難しいのです。これが法律で引かれた線なのですね。ところが、愛車を壊されたとなると、非常に感情を害される場合が実は多いわけで、私なんかも気分が落ち込んでしまったことなどもあります。クライアントの方なども、納得できないと私に気持ちをぶつけられる場合も多々ありますが、法律論ですから、私も諦めてくださいと最後に言うしかないのですね。こういった場合、私がクライアントのお話しを聞くことで、気分が和らげば良いな、といつも思うのです。
 
交通事故などのケースでは、往々にして相手方が「申し訳ない」という表現や素振りをしていなかったことに感情を害される方々もいらっしゃいますが、この点にしても、アメリカ社会では一般的に、事故のときには、「謝ってはいけない」。謝ればそのことが非を認めてしまうという考え方が一般的だから仕方がない部分というのもあるのですね。最近、カリフォルニア州の法律も改正されましたが、基本的に陳謝は過失を認めたと考えられる場合が多いのです。この点は文化的に日本とアメリカでは違うところだな、と実感させられます。その違いを説明して納得していただくということを私はするように努めていますが、なかなか異文化を理解するのは難しいのでしょうね。
 
交通事故というのは小さくても、大きくても、突然災害が起こったような状況になるので、個人にとっては非常に迷惑な話です。相手方に頭を悩まされるということもあるでしょう。弁護士を使ってなんとかしたい、と思っても、ご自身の心の傷は癒えないかもしれません。弁護士はその手助けはできるかもしれませんが、実際の心の持ちようは一人一人にかかっているのです。私はその気持ちを理解できるように毎日がんばるしかないですね。
 
私も数年前、どうしたものか一年に3度ほど事故に遭いました。すべて私に過失はないと認定された一般に言う「もらい事故」でした。一回は、私の秘書と裁判所から帰る途中に、同じ裁判所からでてきた弁護士に止まっているところを後ろからぶつけられました。次に、夜遅く事務所から帰る途中にお尻を掠る程度に信号無視の車に当てられました。これは当て逃げでした。3回目は自宅に帰宅途中、これまた一時停止無視をしてきた車に当てられ更にこの車、逃げてしまいました。この時は、私もどうしようかと思いましたが、目撃していた車が助けてくれて、追いかけました。一旦、この当て逃げ車は停止したのですが、また隙をみて遁走しました。警察に電話をしても、危ないから追跡をやめなさいというだけで、何もしてくれません。ナンバープレートの番号もきっちりおさえていたのですが、持ち主は車を売っただけで何も知らず、保険にも入っていなくて結局自分の保険で修理した記憶があります。ずいぶん悔しい思いをしましたが、まあ大した体の痛みも無かったですから、忙しく仕事をして忘れることにしましたけど。まあ、人生こういう時もあるのですね。まあ、人生は楽しい方がいいですから、辛いことはできるだけ心に残さない心構えが大切なんでしょうね。​

過去記事「パートナーシップ」

12/4/2018

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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今回はパートナーシップについて考えていきたいと思います。アメリカでビジネスをするのに一人でやるには、荷が重いとか、専門的な知識が欲しいとかいろいろな場面が考えられ、パートナーシップという形でのビジネスをはじめようとされている方も多いと思います。私もレストランをはじめたい、専門的な店をはじめたい、いろいろな相談を受けます。皆さん夢があって素晴らしいなと思いますが、多くの場合に、「パートナーと一緒に仕事をする予定です」という話を聞きます。皆さん、信用している相手をパートナーと呼び、仕事を一緒にしていくということを考えていらっしゃるのでしょう。人が力を出し合ってビジネスをすすめていくということは素晴らしいのですが、その人間関係に何らかの亀裂が生じると、パートナーシップ、ひいてはビジネスに対して多大な悪影響を及ぼす可能性があります。
 
ここで、パートナーシップというビジネス形態について、どのようなものか考えておきましょう。日本の法律で考えると組合という概念に限りなく近い形態で、経営の観点からは共同事業と訳して良いでしょう。この共同事業をするにあたっては、事業をはじめるにあたり、基本的にはなんらの紙もなくても、はじめられます。2人以上の個人が共同の目的を持って、仕事をしていく訳です。「日本人同士、あまり深く形式張らないでやっていこうや」なんて話して、契約書も作らずに仕事をしていくと、後でトラブルが発生したときにとんでもないことになります。 後になって、パートナーが働かない、お金を一人のパートナーがとっていってしまう、事業が傾いたときに、責任のなすりつけあいになる、なんて問題は皆さんが思っているよりも日常的に起こっていますし、そのような問題が持ち上がった時に、パートナーシップ契約がないと、訴訟になったとしてもパートナー間でのルールがなく、法律に頼らなくてはいけないので、非常に煩雑になり、時間もお金もかかってしまいます。 ですから、もし事業を共同ではじめると考えていたり、はじめていても何も書面が無い場合には、とにかく、最初にパートナーシップ契約書というものをつくる必要があります。一人一人がどのような仕事をするのか、どの程度の期間パートナーシップを存続させるのかなどを規定しておくのです。特にお金の関係ははっきりさせておいた方が良いのです。
 
ただ、パートナーシップを書面にしておいても、いろいろと問題が発生する場合があります。一番典型的な例を考えておきましょう。パートナーシップをつくり、その共同事業を「幸せパートナーシップ」という名前にしたとしましょう。私と、これを読まれている皆さんが二人で経営していくということになりました。よし!レストランをつくって、どんどん日本食を食べてもらおう!と意気込み、私はこの幸せパートナーシップ名で、どんどんものを買ったり、契約を締結したり、お金を借りたりしたとします。レストランの経験がない私のもくろみははずれて、倒産してしまうとします。そうすると、私と一緒に幸せパートナーシップを組んだ読者の皆さんは、私が借りた金額すべて連帯して責任をとらなくてはいけなくなります。つまり私が返せなければ、すべて皆さんが返さなくてはならなくなります。皆さんの知らないところで、私がどんどんお金を借りてしまう、なんてシナリオも充分に考えられるのですね。これを連帯債務といいますが、非常に怖いことです。幸せではなくなってしまうのです。
 
このようにパートナーシップは怖い一面もあるので、私はあまりお薦めしません。できれば、共同で事業をはじめるというときには、株式会社の形態にしたり、LLCという形態にしたりして、個人に責任がかかったり、連帯して人の責任まで負うということを避けるほうが賢明ですし、人と人との信頼関係も維持できると思います。この辺のコツはまた機会を見つけて考えていきましょうね。

過去記事「契約書レビューのポイント 」

11/27/2018

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。

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今回は契約書を見る時に注意した方が良い点について考えたいと思います。よく、契約に関して一般的な質問をいただくなかで、見かけるのが、契約書を渡されて内容を確認する時に、どのような点を注意すれば良いのか、ということを質問されます。こういったストライクゾーンが広い質問に答えるのが一番難しいのですが、契約書に関しては、どのような契約書でもある程度のパターンがあり、ある程度の注意点は、変わりません。リース契約にしても、売買契約にしても、車を買う時にしても、一定のポイントがありますので、ここで御紹介しましょう。生活、ビジネスの知恵として覚えておかれると便利だと思います。
 
まず、注意するのは、お金の額、また、対価となるものやサービスの内容です。幾らお金を払ったり、もらったりするのか、分割で支払うなら、どの程度の利息がつくのかを知ることです。また、対価のものやサービスについては、どの程度のものをどのくらいもらえるのか、また、どの程度のサービスを受けられるのか、確認しておく必要があるのです。書面の契約を作ってしまうと、契約書によっては、事前に口頭で話した内容は契約の内容とはならないという条項がありますので、書面で契約をする場合には、どのような場合でも、相手方が口頭で述べていることよりは書面になんと書いてあるかを注意して、見て下さい。
 
上記でどのようなものやサービスがお金と交換されるのかを確認されたと思いますが、次はタイミングを考える必要があります。すなわち、お金や対価として差し出されるものやサービスをどの時点で受けられるのか、払うのかを契約書においてどのように書かれているのか確定しなければなりません。たとえば、お金を払っても、いつものをもらえるのか、サービスを受けられるのかがわからなかったら意味がないですよね。たとえば、ケーキを買う時にお金は払ったのに、いつもらえるかわからなければ、大切な人の誕生日が過ぎてしまうかもしれません。通常は、同時に交換する権利があるというのが法律で決まっていますから、お金を出したら、その場でケーキをもらうことができますが、やっかいなのは、継続的に権利義務が存在する契約です。例えば、賃貸借契約や工事などの請負契約の場合です。こういった継続することを対価とする契約の場合、いつどのような内容のものやサービスを受けられ、それに対して、いくら払うのか、納得のいくまで契約書を読むことをお勧めします。不満だったら、交渉して変えてもらうか、署名してはいけません。
 
第三のポイントとしては、当事者がだれかということです。これは、弁護士
が仕事をするときでも、まず注意して考えるポイントです。つまり、当事者が会社になっているのか個人になっているかも重要なポイントですし、もし保証人(guarantor)がいる場合には、その人や会社が誰なのかを確実に知ることが必要になります。特に保証人については、注意が必要です。保証人というのは、契約でダイレクトに利益を受ける場合は少ないのですが、責任だけは負ってしまうという場合が多いのです。ですから、契約書を目の前にして、まず誰が契約の当事者になるのかをしっかりと確定していただきたいと思います。
 
第四のポイントは第一のポイントとも関連しますが、ものやサービスを受ける時に、そのものやサービスのクオリティーを確認しておくべきです。ものを買う時に、新品のものを買うつもりで契約して、「コンピュータ一台」買うとした場合、実は、中古品だったなんてことになったら困りますよね。ですから、ものを買う場合には、どのようなものを買うのか、はっきり指定しておくことが大切です。また、サービスの場合はもっと問題が複雑になる可能性があります。人にサービスを頼む時に、サービスをする人が変わってしまったり、サービスの内容が変わってしまう、なんてこともありますから、事前にできるだけ詳細に、サービスの内容を契約に盛り込むようにする必要があるでしょう。
上記で見てきたように、どのような契約でも、まず押さえておかなくてはいけないポイントがあるわけですね。弁護士にしても、どのような契約をレビューするにしても、これらのポイントは絶対的に落とすことはしないわけです。ですから、日常的に皆さんがものを買ったり、サービスを受けたりする契約を生活やビジネス上で行っているでしょうか、その時には、以上の4つのポイントだけは最小限度のプロテクションとして覚えておきましょうね。 次になにか契約書にサインする時には、このコラムを読んで、一息ついてから、サインをするかどうか考えましょう。一旦契約書にサインをしてしまうと、内容を理解してサインしてしまっていると考えられてしまいますから、心のブレーキをかけながら、慎重に。

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