本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 日系企業がアメリカに進出してきて、基本的なビジネスのセットアップ、たとえば会社の設立やビザの問題などを解決したとしよう。次のステップとして考えなくてはいけないのが、人を雇用することだ。往々にして日本から進出してきた企業は忘れがちだが候補者のインタビューの際には質問等で気を付けなくてはいけないことが多々ある。やはり人種問題など日本にはあからさまには存在しない問題があり、インタビューの質問の際にも注意しなければならない。雇用者と被用者の間に立ち、斡旋を行う業者の中には的確なアドバイスを行うところも少なくない。しかし、雇用に関する法律は人種差別、年齢の差別それにセクハラなどの問題と、議会を通してではなく、裁判を通して判例で形成される場合が多い。言葉を返せば、日々裁判所を通して形成される判例が実務上重要になってくる分野である。もちろん顧問先の企業であれば私でも状況に応じたアドバイスが可能であるが、気軽に相談できる弁護士がいない場合には、できるだけ雇用に関する情報は手に入れるようにしたい。インターネット上でも有益な情報は散見する。以下、候補者のインタビューに関して、注意したい点を考えていく。以下の点は連邦の法律により規定されている。 まず、個人に関する情報で質問してはいけないものに、出生地(家族の出生地を含む)、年齢、結婚しているかどうか、性別(Mr. Ms. Mrs.などの質問を含む)、家族の出生地、家族の住所などについては質問することはできないし、また答える必要はない。 出生に関することは本人だけではなく、配偶者、子、親やその他の親族に関しても質問することができないことを念頭に置いてほしい。また、就職のインタビューにおいて、出生証明などの出生に関する書類を提出させることも許されていない。 また、名前についても、法律的に裁判所が認めた改名前の名前や結婚する前の姓についても質問することはできない。個人情報に関しては名前などの基本的な質問はすることは許されているし、年齢も聞いてはいけないというのが通常の考え方だが、未成年者でないことを確かめるために18歳以上かどうかを聞くことは許されている。住所や過去に住んだ場所などを聞くことも良い。 次に個人の肉体的なことまた精神的なことについて聞いてはいけないことがある。まず身長や体重、それに肌の色、仕事に直接関連していない身体的、精神的な障害などについて聞くことは許されていない。直接インタビューをしたときに候補者を観察することができるので、つい身体的なことなどに言及する例があるがあくまでも仕事の内容に関係がなければ聞くことはさけた方が良い。もし、採用を予定しているポジションが特定の身体的・精神的な能力を要求する場合には、その仕事に関して候補者の能力が適切であるかどうかを判断する材料として、障害の有無については聞くことが許されている。また、採用を決定する前に候補者の写真を要求してはいけない。 第三点目だが、個人の宗教には言及できない。所属している団体を挙げさせる場合には、差別に該当しない程度なら許される。性的なオリエンテーションについてはもちろん質問は許されない。教育については、学校教育については聞けるが、外国語をどのようにして習得したかを聞くことは許されていない。また、過去の職歴について聞くことは可能である。 市民権を持つかどうか、また有効にアメリカにいる権利があるかどうかについては質問することは可能だが、最低限度の質問に抑えておいた方がよい。 以上のように、質問して良い事項といけない事項がたくさんあるわけだが、人を雇用するにあたり、どのような点に気をつければよいのかを考えたい。 まず、雇用を行う上で、必要な事項、すなわちポジションが要求する事柄について集中した質問をすることである。一般的に言う「無駄話」は極力さける必要があるのだ。 また、会社において、インタビューを行う者の教育も非常に大事だ。インタビューを行うものは、その経験がある程度あることが必要であろう。 また、一人でインタビューに望むのではなく、状況が許せば複数人でのインタビューということも考えられるだろう。 また、画一性を得ながら、違法性を最小にするために、インタビューに関しての用紙を用意しておくのが無難だ。 事前にインタビューに必要な条項を紙にまとめて会社でシェアしておくとよいであろう。このインタビューシートを弁護士などと相談して作っておくのも手だ。会社にとっても候補者にとっても大事なインタビュー、ぜひ必要最小限の知識は備えておきたいところだ。 Comments are closed.
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