訳例:免責
法律用語としてのDisclaimerには、権利放棄という意味がある。たとえば、古典的にはDisclaimer Deedという使い方をする。これは、土地を所有する権利を化体する証書、すなわち権利証(Deed)の一種だが、夫婦間でどちらかが権利を放棄し単独所有する場合の権利証を指す。夫婦の一方が権利を放棄する、すなわちDisclaimする、という場合に使うのである。これが一つのDisclaimerという単語の使い方である。 一般的な契約書でDisclaimerという単語が出てくる場合には、上記の権利放棄とは趣を異にする。通常契約書にでてくるDisclaimerは、Warranty(保証)と対になってでてくるコンセプトである。Warrantyというのは、明示の保証(Express Warranty)と黙示の保証(Implied Warranty)に分けられ、前者は、契約上明記されている保証内容を指し、後者は主に判例等で、「通常期待される程度」の保証を言う。保証に関しての詳細は、Warrantyで述べる。 WarrantyをDisclaimするというのは、保証をしない=責任を負わないという意味での「免責」である。保証対象外、と訳した方がわかりやすいかもしれない。 実際に契約書を検討するときに、強行法規や判例などに照らして、どのようなDisclaimerが許されるのか考えなければならない。主に、不法行為に関する免責が許されるのかは、契約書に適用される法律を基礎として解析しなければならない。たとえば、売買契約においては、カリフォルニア州民法1792ないし1795.8条には、黙示の保証に関する免責制限が規定されている。主に消費者保護のための法律が多いが、かなりの分野で免責制限がなされていることに注意をしなければならない。明示の免責については、そもそも明示しなければ済む話だが、黙示の免責については、法律・規則等に照らしてリスクを想定しなければならない。 訴訟になった場合、免責は攻撃防御方法の防御(Affirmative Defense)として利用される。したがって、免責条項があったとしても、それだけで訴訟を提起されるリスクがゼロになるわけではない。 最近、移民局は、移民局のウェブサイトのいくつかに別れているデータページをひとまとめにしたことを発表しました。これにより、移民局のもつ様々なデータに、容易にアクセスできるということです。データには、永住権取得者についての様々なデータ、移民局の方針についての情報、H-1Bビザに関しての年次報告といったようなものも含まれています。以下が、その発表です。
https://www.uscis.gov/tools/reports-studies/immigration-forms-data/understanding-our-data 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 今回は契約書を見る時に注意した方が良い点について考えたいと思います。よく、契約に関して一般的な質問をいただくなかで、見かけるのが、契約書を渡されて内容を確認する時に、どのような点を注意すれば良いのか、ということを質問されます。こういったストライクゾーンが広い質問に答えるのが一番難しいのですが、契約書に関しては、どのような契約書でもある程度のパターンがあり、ある程度の注意点は、変わりません。リース契約にしても、売買契約にしても、車を買う時にしても、一定のポイントがありますので、ここで御紹介しましょう。生活、ビジネスの知恵として覚えておかれると便利だと思います。 まず、注意するのは、お金の額、また、対価となるものやサービスの内容です。幾らお金を払ったり、もらったりするのか、分割で支払うなら、どの程度の利息がつくのかを知ることです。また、対価のものやサービスについては、どの程度のものをどのくらいもらえるのか、また、どの程度のサービスを受けられるのか、確認しておく必要があるのです。書面の契約を作ってしまうと、契約書によっては、事前に口頭で話した内容は契約の内容とはならないという条項がありますので、書面で契約をする場合には、どのような場合でも、相手方が口頭で述べていることよりは書面になんと書いてあるかを注意して、見て下さい。 上記でどのようなものやサービスがお金と交換されるのかを確認されたと思いますが、次はタイミングを考える必要があります。すなわち、お金や対価として差し出されるものやサービスをどの時点で受けられるのか、払うのかを契約書においてどのように書かれているのか確定しなければなりません。たとえば、お金を払っても、いつものをもらえるのか、サービスを受けられるのかがわからなかったら意味がないですよね。たとえば、ケーキを買う時にお金は払ったのに、いつもらえるかわからなければ、大切な人の誕生日が過ぎてしまうかもしれません。通常は、同時に交換する権利があるというのが法律で決まっていますから、お金を出したら、その場でケーキをもらうことができますが、やっかいなのは、継続的に権利義務が存在する契約です。例えば、賃貸借契約や工事などの請負契約の場合です。こういった継続することを対価とする契約の場合、いつどのような内容のものやサービスを受けられ、それに対して、いくら払うのか、納得のいくまで契約書を読むことをお勧めします。不満だったら、交渉して変えてもらうか、署名してはいけません。 第三のポイントとしては、当事者がだれかということです。これは、弁護士 が仕事をするときでも、まず注意して考えるポイントです。つまり、当事者が会社になっているのか個人になっているかも重要なポイントですし、もし保証人(guarantor)がいる場合には、その人や会社が誰なのかを確実に知ることが必要になります。特に保証人については、注意が必要です。保証人というのは、契約でダイレクトに利益を受ける場合は少ないのですが、責任だけは負ってしまうという場合が多いのです。ですから、契約書を目の前にして、まず誰が契約の当事者になるのかをしっかりと確定していただきたいと思います。 第四のポイントは第一のポイントとも関連しますが、ものやサービスを受ける時に、そのものやサービスのクオリティーを確認しておくべきです。ものを買う時に、新品のものを買うつもりで契約して、「コンピュータ一台」買うとした場合、実は、中古品だったなんてことになったら困りますよね。ですから、ものを買う場合には、どのようなものを買うのか、はっきり指定しておくことが大切です。また、サービスの場合はもっと問題が複雑になる可能性があります。人にサービスを頼む時に、サービスをする人が変わってしまったり、サービスの内容が変わってしまう、なんてこともありますから、事前にできるだけ詳細に、サービスの内容を契約に盛り込むようにする必要があるでしょう。 上記で見てきたように、どのような契約でも、まず押さえておかなくてはいけないポイントがあるわけですね。弁護士にしても、どのような契約をレビューするにしても、これらのポイントは絶対的に落とすことはしないわけです。ですから、日常的に皆さんがものを買ったり、サービスを受けたりする契約を生活やビジネス上で行っているでしょうか、その時には、以上の4つのポイントだけは最小限度のプロテクションとして覚えておきましょうね。 次になにか契約書にサインする時には、このコラムを読んで、一息ついてから、サインをするかどうか考えましょう。一旦契約書にサインをしてしまうと、内容を理解してサインしてしまっていると考えられてしまいますから、心のブレーキをかけながら、慎重に。 訳例:定義
契約上使用される重要な文言は定義されるのが米国では当たり前であり、定義条項の吟味がかなり重要性を持っている。日本のように全国で均一に適用される民法・商事法令が存在しないため、定義を契約書で確定しておかないと、いざというときの拠り所が曖昧になる危険性がある。もちろん準拠法(Choice of Law)を契約書で決めておいたり、場合によっては、カリフォルニア州民法の解釈による、といった規定の仕方も考えられるが、アメリカでは法律の改正も多々あるので、契約書によって適用される定義を少なくとも重要な文言に関しては決めておく方が良い。 そして、日本の立法でも最近トレンドになっているが、米国の法令ではまず定義条項を定める。たとえばカリフォルニア州の民法においても、全体に適用される定義条項、および、トピックごとに適用される定義条項などがある。 定義条項において、定義をするときには、定義の対象となる単語に引用符(クォーテーションマーク、“”)がついているので注意しやすい。契約書の解釈をするにあたって、引用符によって定義された単語は、原則として定義された意味において解釈されることになる。 引用符がついている単語については、通常定義条項においては、”○○” meansという言い回しで使われる。また、具体的な内容が記述されたあとに、(“○○”)と記述されることもある。気をつけなければならないのが、”○○“ includes などとある場合である。この場合、定義が○○に限られるのか、○○を含み他の可能性もあるのか、契約書の全体を確認しなければならない。Meansと続く場合には、比較的素直に読めばよいが、Includesと続く場合などには、限定的な表現なのか、例示的表現か、などロジックに気をつけて解釈する必要がある。 実務的なコツであるが、筆者が、急いで契約書をレビューするときは、定義条項はまず読まない。通常定義されるような重要な単語は決まっているので、定義条項を飛ばして読みながら、定義が必要そうな単語は、定義条項に立ち返って確認していくという方法が有効である。なんでも最初から読めば良いというものではない。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 今回は、ドメステック・バイオレンス(以下、「DV」とする)について考えようと思います。あらかじめ申し上げておきますが、私は暴力は大嫌いです。暴力では何も解決しないからです。ある程度のビジョンを持っている人であれば、暴力は人間関係でなにも意味がないということを知っているからです。私は子供の頃、よくけんかをしましたが、大人になってから暴力をふるうという人は根が弱虫なんだと思います。権力や地位をひけらかす人というのは、ろくな人がいないものですが、暴力でその表現をする人って不幸な人なんでしょうな。もちろん日本人でもアメリカ人でも感覚的に「暴力はいけない」と思っている人が通常なのでしょうが、シチュエーションによっては、考え方に差がでてきます。ひとつの代表的な例がDVです。 家庭内暴力というのは、アメリカでも日本でも長いこと「起こっている事実はあるけれども、まあしょうがないことだな」という考えが支配的でした。日本でもDV法が施行され、近時暴力の被害者を擁護するような裁判所の命令や判例が出てきていますが、アメリカのDV法の使われ方は比べものにならないほど影響力があります。この影響力は警察・検察とも積極的にDV事件を立件していこうという政治的な背景から成り立っているものですが、良い影響もあれば、悪い影響も発生させるおそれがあります。確実に言えることは、多くの家庭がDVが存在することにより崩壊し、DVが事件になることによっても家庭が崩壊する場合が多いのです。 ベイエリアのDV事件はひょんなことから始まります。当事者が電話をしなくても、隣家の人達が通報することにより、警察が介入できることが法律で決められています。日本でいう警察の「民事不介入」という原則はなりたたないのです。まず、この思いもよらない警察の介入にまず当事者はびっくりしてしまうわけです。自分の家でもベイエリアでは大声で争ったりすることは大変なことになってしまうのです。電話で通報されてしまうと、声だけの言い争いでも、警官が夫婦を引き離し事情を聴取します。ここでまず当事者が何を警察に話すかということが後日にまで尾を引いてしまいます。もし奥さんが少しでも、旦那さんに物理的に押されたとか、掴まれたということをいえば、旦那さんはばっちり逮捕されてしまいます。もちろん口げんかだけであれば、警察は何もできませんが、奥さんの体に、ちょっとでもあざなどがついていると写真に撮り、後日の証拠になってしまいます。このイニシャル・コンタクトの時の証言や写真というのを警察、検察とも重視します。後日、奥さんが体を触り合ったりしていないなどと証言しても、「弁護士に知恵を入れられた」とか「後から怖くなって証言を変えたんだ」などと勘ぐられてしまうのですね。DVが事件になると、事例によっては夫婦が一緒に住めなくなったり、警察が職場や学校に事情聴取に行ったり、たいへんなことになります。もちろん、実際に物理的な暴力をふるって、ふるわれているような家庭であれば、どんどん警察が介入するべきだと、思いますが、よく私が頭を抱えてしまうのは、あまり英語もできない駐在員家庭で、大声で言い争っていただけなのに、捕まってしまうというシチュエーションです。隣家にしても、何の言葉で言い争っているのかわからず通報され、警察が来ると、英語で誘導的な尋問をされ、事件を作り上げられてしまいます。私が一歩引いてみても「そこまでするかなぁ」という事例がひとつや二つではありません。仮にですよ、私が彼女と言い争いになって、彼女が私に不満で、何も暴力はなくても、電話を持ち上げて、警察を呼んで、彼女がここを殴られたといえば、私は捕まってしまうでしょう。ベイエリアの警察はそこまでやります。警察が来てしまうとその後、裁判になり、外国人であれば強制送還の可能性もあり、カリフォルニアの法律で52週間のDVカウンセリングにも通わなくてはならなくなりますから、事件を解決することは簡単ではなくなってしまいます。事件になってからでは、夫婦の仲もぎくしゃくしたり、良いことがありません。とにかく、私のアドバイスは、夫婦間で言い争いになった場合、どちらかの声が荒くなってきた場合、等々、とにかく、どちらでも良いですから家を離れどこかで頭を冷やすことが大事ですね。しばらくしてまた家に帰っても言い争いになるようであれば、これはDVの芽があるかもしれません。 弁護士がDV事件にかかわるのは刑事事件で旦那さんを弁護するというパターンが通常です。もちろん、実際に暴力があるような事件で被告人である旦那さんに自覚が無い場合には、弁護人としてもまず自覚をいろいろな形で持ってもらう努力をします。ところが、大人になってから、人が何かを自覚するということほど大変なことはありません。人というものはなかなか自分を変えるということはできませんからね。私はクライアントと接するときに、その人が主観的にどのように考えているのかということを丁寧に聞くようにしています。その主観で考えられていることと現実の法律によって定められていることをどのように繋ぐかということが弁護士の「仕事」なんだと思います。人は一人一人自分が「正しい」と思っていること、「悪い」と思っていることがあるわけで、その思いと法律を繋ぐ役目が弁護士なんですね。いやはやわかりにくい職業ですが、弁護士が「人商売」といわれる所以はそこにあるんですね。 今回はDV事件のインパクトを考えてみましたが、子供さんがいる家庭は特に注意してくださいね。 訳例:副本
契約書の署名における原則は、当事者全員が同じ原本に署名をすることである。面前または持ち回りで一つの原本に署名できれば、そもそもCounterparts条項は不要である。しかし、当事者が多数であったり、遠隔地に居住している場合など、全員での署名が困難な場合があり、その対応策として、Counterparts条項が必要となる。 Counterparts条項にも色々あるが、当事者が各自(別々の)契約書に署名することを定め、かつ、各契約書がいずれも効力を有することを確認するために、複写された原本(Original)は原本と同じ効力を持つ、全部が一緒になって一つの契約書を構成する、という内容を規定することが多い。 Counterpartsは「副本」と訳されることが多いが、厳密に考えると、上述のとおり、同内容だが物理的には別々の契約書に各々当事者が署名するため、この場合の「原本」と「副本」は、署名部分の記載は異なる。その意味で、原本をそのまま写したものとして用いられる一般的な「副本」とは少々違うといえよう。 なお、最近では、電子署名(たとえばDocuSign)などを使うことも多く、米国の裁判所でも弁護士が事前に登録する方法で署名を簡素化している。電子署名はますます増えると思われるが、そうすると、Counterparts条項の内容も紙を前提としている従来のものから、電子署名の時代に即したものに変容していくと思われる。 サンフランシスコの北部で発生した火事により、サンフランシスコ市の空気の状況が、現在深刻になっており、周辺の学校等は休校になっています。サンフランシスコ市内でもケーブルカーの運行の取り止めなどが発表されています。事態を鑑みて、MSLGは2018年11月16日は、所内の全メンバーを自宅待機としました。事務所でのアポイントがある方、出廷・訪問等がある方は、担当者に直接連絡をして調整をしてください。なお、移動ができない案件については、引き続きMSLGが対応しますので、その点はご安心ください。所内の電話もつながりにくくなっております。申し訳ありませんが、電話での対応に不備がある場合には、[email protected]まで、メールをいただけると幸いです。
________________ 以下外務省からの転載(日本の官庁からの情報は鵜呑みにせずに、現地の情報を必ず確認してください。) On 2018/11/15 23:25, 外務省海外安全ホームページ 最新情報 wrote: > 【ポイント】 > ●11月8日にカリフォルニア州北部ビュート郡,同州南部のベンチュラ郡において > 発生した山火事は現在も鎮火しておらず,多数の死傷者が出ています。 > ●サンフランシスコ等のベイエリア地域においても山火事の影響による大気汚染 > 等の被害が発生していることから,関係機関や現地報道等からの最新情報を入手 > し,安全確保・健康管理に努めてください。 > > 詳細は以下のリンク先をご確認ください。 > (PC)==> https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2018C161.html > (携帯)==> > http://www.anzen.mofa.go.jp/m/mblatestspecificspotinfo_2018C161.html > 〔お問合わせ先〕 > 外務省領事サービスセンター(海外安全相談班) > 〒100 - 8919 > 東京都千代田区霞が関2-2-1 > 電話:03-3580-3311 内線 2902 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 今回は表題にあるように「貸主責任」、アメリカの法律用語ではLender Liabilityという問題を簡単に考えていきたいと思います。貸主責任と言われてもピンとこないと思います。ところが日本でも一時期相当話題になっていたんですよ。例を使って考えましょう。日本では住専問題において、回収会社が金融機関の代表者などの責任を追及していた事件がいくつもありました。この場合、金融機関における責任というのは、相当の担保を取らずにお金を貸して、焦げ付いたことに関し、ひいては消費者に損害を与えたということが根拠になっていたのです。新聞を連日賑わせて退職金まで返上するなどと、当の本人に取ってはダメージの大きな問題になった訳ですが、ちょっと一歩引いて考えてみてください。 たしかに銀行の貸金担当の人は、担保を取らずにお金を貸した訳ですが、実際はその借りたお金を返さなかった人が数倍「悪い」訳ですよね。お金を借りて、計画性もなく使って、バブルがはじけて、そのバブルの責任にしてしまう。 ところが、お金を「貸しただけ」なのに責任が生じてしまう。 なんか、不合理なような気がしますね。もちろん住専問題のように社会問題となってしまうと、世論も銀行に対しては厳しい目で見ていく訳ですから、どこかに責任の落としどころがないと世間が納得しないわけです。 しかし、もし皆さんが、友人を信用してお金を貸したのに、第三者がでてきて、「あなたはその友人の信用調査をしなかったし、担保も取らなかったので、あなたも同罪です」なんて言われたら、恩に仇と思いませんか。 たまったものではありませんね。しかし、法律上はアメリカでもちゃんと貸主責任というものを規定しています。上記から考えると、貸し主も「そんなに悪くない」と考えられる例も少なくないわけで、ただ単にお金を貸したからといって、責任を負わせると言うことはあまりにも酷だということになります。ですから、法律はある一定の要件を満たした場合にお金等の貸し主に責任を負わせようということにしたのです。 もちろん、以上考えてきたように、「あまり悪くない人」に責任を負わせるという、どっちかというと法的な線引きの問題です。日本では、住専の場合には、代表者の過失という形で責任を追及していきましたが、アメリカでは主にどのように考えられているのでしょうか。 もちろん、アメリカでも住専のように金融機関の過失ということが論じられますが、さらに一歩踏み込んで過失がなくても、ある一定の要件下で、責任を生じさせる傾向があります。こわいことです。いくつか判例が存在しますが、以下のようなシチュエーションにおいて、貸主責任を認める例が見受けられます。大会社の甲があり、その製造の下請けをする乙という会社があるとします。甲が乙の生産量や生産するものの種類などを決定し、さらに乙の会計業務や借財に関しても実質的な決定権を持っていると仮定しましょう。こういった上下関係、支配関係がある場合には裁判所は貸主責任を認める傾向にあります。ですから、(1)親密な関係、(2)会社間の契約内容、(3)実質的に代理として行動していること、といった要件を吟味して、貸主責任が判断されるのです。 また、貸主の動機も重要な要件とされています。つまり、ただ単純にお金を貸しているだけなのか、それとももっとビジネスにかかわっているのか、貸主がどのように考えて行動しているのかを吟味するのです。 このようにアメリカではまったく過失がなくても、ビジネスにどの程度踏み込んで関与しているかというところまで、責任の判断材料にされてしまうのです。アメリカで日本の企業が単独で商売をするということは実は少なく、多くの場合、現地の会社と何らかの形で組んでビジネスをしていくということが多いと思います。また、多くの場合、金銭的にビジネスを支援していこうなどということもあるでしょう。この場合、落としやすい論点ですが、この貸主責任ということにも気を遣っていただきたいと思うのです。善意でお金を貸して、ビジネスも実質的に援助しているのに、蓋を開けてみたら第三者に対しての責任が生じてしまっていた、なんて場合も考えられるからです。もっとも単純なお金の貸し借りにまでセンシティブになる必要はないとは思いますが、アメリカでビジネスをする上ではどこか頭の隅においておきたい法律上のコンセプトです。 訳例:機密保持
機密保持については、機密保持の義務を切り出して別途の契約書とする場合もあるが(NDA:機密保持契約)、契約書の一部の条項として組み込むこともある。効力に違いはない。機密保持条項を確認する際は、大きく分けて2つの観点から考えなければならない。一つは、情報に関わる人間に対する情報使用の制限、もう一つは、情報の存在する場所に関する制限である。どのような制限が妥当かは、開示する情報の性質や取り巻く環境に依るので、一概にはいえない。 Confidentiality条項は、様々な契約に登場するが、労働契約においても高頻度で登場する。この点、Confidentiality条項に限った話ではないが、労働契約の条項を検討する際に留意すべきものとして、カリフォルニア州労働法925条があるので、紹介する。 同条は、要するに、雇用者は、主たる住所及び勤務地がカリフォルニア州である被用者から、同州で生じた紛争について、同州法の適用を受け、同州で裁判等を受ける権利を奪ってはならない旨を定めている。これに違反する条項は、被用者のリクエストにより無効とされうる。つまり、適用法が日本法となっていても、カリフォルニア州の法律が適用され、裁判管轄について別段の定めがあったとしても、カリフォルニア州が管轄を持つ可能性があるというこである。したがって、Confidentiality条項についても紛争となった場合も、どの地域の法律が実質的に適用されるのかを、具体的に確認する必要がある。 移民局は、Form I-693(健康診断レポート)についての、最新情報を発表しました。
健康診断レポートは、永住権申請の際、移民局により提出を要求されます。レポートには、移民局指定医のサインが必要ですが、今後、レポートの指定医のサインは、2ヶ月以内にサインされたものでなければならないということになりました。2018年11月1日よりスタートしたものです。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 今回は、結婚をしない同棲について考えてみましょう。 同棲という日本語はちょっと、いやらしい韻を含むような気がしますが、別に悪いことではないように思います。いろいろな事情があるカップルがいるわけですし、結婚をすることがベストな選択ではないという状況もある訳です。カリフォルニア州では2002年にある一定の状況の下において、同棲のカップルについても一定の権利を相互に与えることになりました。基本的には、厳しい要件が課されていますが、一方が62才以上の異性のカップルであるか、一方が社会保険を得れる場合には、同棲によって得られる利益が拡大しました。 なんで、このような話題を取り上げているかというと、通常、日本で紹介されているアメリカの法律関係の記事には、ビジネス関係やちょっと有名になった事件といった程度で、アメリカでの本当の法律の動向はこのような、倫理観がぶつかる問題が適切だと思ったからです。アメリカの日本語紙ではビザのことばっかり。でも若い読者の方は、同棲をしたことがある人も少なくないですよね、たぶん。アメリカに居るのであれば、アメリカでの考えのぶつかり方を見ると楽しいですよ。 今回は異性の同性についてですが、同性の同棲についてもいろいろ議論がなされ、アメリカでは最先端の考え方がいっぱい出てきています。こういうのが刺激になりアメリカ生活を楽しくしてくれます。 さて、今までは異性であっても結婚をしていなければ、お互いのために何かをするということができない場合が多く、同棲をしているカップルにおいては悩みが多く存在していました。政治的な要素や倫理的な要素もあったのでしょうが、カリフォルニア州では、ある一定の部分においては、同棲の法的な効果を認めました。家族に関する法律は各州で違いますので、皆さんがお住いの州によって扱いが違いますので、今回ご紹介するカリフォルニア州の例を参考にして、皆さんにも考えていただきたいと思っています。「こういうのはどうかなぁ」とか、「もっと改革を進めるべきだ」とか、いろいろな意見がでてくるのではないでしょうか。 さて、同棲についても、カリフォルニア州では州内で登録すれば、様々な権利が認められるようになりました。伝統的な「家族」のコンセプトを多く取り入れているように思います。今回の法改正で代表的なものを列挙してみましょう。同棲している一方が事故などで死亡した場合、もう一方のパートナーは訴えを起こせることになりました。また、一方のパートナーが死亡した場合、もう一方のパートナーは政府の年金などを受けることができるようになりました。また、一方のパートナーが死亡した場合、相続もできるようになりましたし、相続において、遺産相続財産の管財人にもなれます。 職場においても、パートナーやパートナーの子供が病気になれば、病欠をとれることになりましたし、健康保険なども、パートナーが加入できることになったのです。 これは同棲をするカップルにとっては大きな前進です。結婚をするということによって発生する効果が、登録は要求されているものの同棲しているカップルにも認められるのです。言い換えれば、同棲という形の同居も法律で認められることになった訳です。和わたしがかかわった案件でも、婚姻をしている配偶者よりも、家を出て同棲しているパートナーに財産を残すというケースも少なくありませんでした。 配偶者がいるからといって同棲しているパートナーを責めるということができない事例も多く、悩みの種でした。 法律が踏み込めない「愛」というのも巷に存在する訳で、道徳観の問題として処理するのか、法律の問題としてルールを作って処理するのか、文化の差もありますし、社会の捉え方もあります。アメリカでも保守的な州もあれば、前衛的な州もあり、様々な価値観が存在する部分の法律です。 訳例:仲裁
Arbitration(仲裁)は、Mediation(調停)とともに、代替的紛争解決(ADR、Alternative Dispute Resolution)の代表例である。調停は主に双方が歩み寄れるかを試す場であるのに対し、仲裁は事実関係(あるいは法的関係)について一定の判断を下すことを目的とする、いわばプチ裁判である。仲裁の内容は、契約で比較的自由に設定することができ、仲裁の判断に拘束力を持たせるか否かという点についてすら、契約で決めることができる。 仲裁条項では、どのような仲裁人を何人選ぶのか、からはじまって、どのような機関を選ぶのか(仲裁をやっている団体は複数ある)などを、契約の性質に照らし判断し、一つ一つ定めなければならない。実務経験が重要となるとことである。リトマス試験紙として、仲裁ではどのような証拠法が適用されるのかを、契約書をいじる人に聞いてみると良いだろう。 契約の性質にもよるが、一般論として、Arbitration条項を考えるときは、(1)そもそも紛争処理を仲裁で行うべきか、(2)想定される規模の紛争に見合った仲裁機関を選んでいるか、(3)当事者に負担が少なく、かつ結果がでるまでの最小限度の手続きは定められていいるか、(4)適用される法律などについて実体を踏まえて吟味されているか、(5)仲裁判断に拘束力を持たせべきか否か(効力がどこまで及ぶのか)について、きちんと検討する必要がある。 最寄りの移民局に出向き、申請状況の確認や様々な質問をする場合、事前にInfoPassというインターネットのシステムを通し、予約が必要です。最近、移民局は、このシステムに代わる、Information Services Modernization Programというシステムを立ち上げました。
この新規のプログラムは、利用者にインターネットで必要な事項の照会をすることを推奨するものです。移民局は、InfoPass利用者の多くは、インターネットでの照会で済むものであり、最寄りの移民局に出向く必要はなかったと、結論づけています。今年の11月より主要な地方の移民局からこのプログラムを適用し、2019年末までには、全国の地方移民局で適用される見込みです。さらに、出向く必要がある場合は、USCIS Contact Centerを通し予約が可能になります。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 通販で買った腹筋マシンが届きました。ジムに行くというのはなかなか時間を作らなくてはならないので大変ですが、テレビを見ていたら一日10分で引き締まった筋肉を!なんてえんえんとやっているのですね。値段も「なんと今なら更に50ドル引き!」なんてことになると「いやー、消費者の心理を突いているなー、あはは」、といいつつオーダーしてしまいます。さて、効果のほどはいかに。 皆さんも鍛えてますか。 さて、今回はざっとトレードマークの基本について考えてみましょう。街で売られている商品や広告、それに本や新聞などのメディアにもTMとか、登録商標などという小さな文字が書かれているのを見かけられるのではないでしょうか。トレードマークと呼ばれるやつで、一般的にはロゴや特殊な書体、商品を表す図形などがあります。商標が存在する目的とは、一般の人がある商品と別の商品を間違えないようにし、その特定の商品の評判を守るためです。つまり、消費者が物を購入するときに、コカコーラを購入したら、コカコーラを飲みたいという気持ちがあるからで、類似品を間違えて買わないようにするため、つまり、コカコーラという商品を保護するための道具なのです。 一般の人達はコカコーラの缶をみると、どういう飲み物か想像できますよね、どのような商品か、またどのような品質なのかを連想できる表示に対して法的に保護を与えているのです。 商標は使っていれば、アメリカであれば連邦政府に対して、登録をしなくても、保護は与えられます。たとえば、カリフォルニア州で「鈴木コーヒー」というコーヒーを売っていたとすれば、登録がなくても、商標は成立します。しかし、アメリカ全国で「鈴木コーヒー」の類似品を使えないようにするためには、連邦政府の特許商標局(Patent and Trademark Office)に登録をしなければなりません。 一般的に、登録をする方が良いのは、データベース登録があると、他の人が似たようなマークや名称を使用することに対して注意を喚起できるからです。もちろん悪い人はわざと似たような名称で商売をしたりするでしょうが、善意の人に対しても、注意を促せるメリットがあるのです。 連邦の商標登録は細かくカテゴリーにわけて規定されています。つまり、衣類、家具、といった製品別になっているのです。商標を登録するに関して、商品が混同されないような分野では登録の必要が無いわけですね。 登録料は1件費用だけでも400ドル以上かかりますので、やはり大会社でなくては多くのカテゴリーに登録するメリットもないのです。 商標を登録するためには、すでに商標が商売で使われていることが前提になります。ですので、自分の商品に商標をつけ、マーケットに出回っていれば、商標を登録する前提が満たされる訳です。 しかし、現在の情報社会ではせっかく登録をするために商標を使っていても、先に同じ様な商標を使われてしまう可能性がありますね。この不合理を防ぐために、使用を前提とする登録(Intent to Use Registration)という方法が認められています。この申請をすると、申請時から6ヶ月の間に、その商標を使えば、商標として認めようというものです。この6ヶ月の期間は、類似の商標は登録できない仕組みになっています。 面白いのは、アメリカでは特定の「色」も商標として登録できる場合があると判例で示されています。 もちろん、色自体のみで商標をとろうとすると通常よりも大変ですが、1985年以降、認める方向になっています。 色に関して、消費者が二次的な意味を持っているかどうかということがカギになります。 つまり、その色を見て、「あ、あの製品だな、」と思い浮かべられるかどうかが問題となるのです。 また、商標として登録できない名前もたくさん存在します。たとえば、一般的な名称です。たとえば、「コンピュータ」という商品名のコンピュータは登録できません。皆さんもよくご存じの例は「はちみつレモン」ではないでしょうか。はちみつ、それにレモンというのは、一般的に使われる名前ですから、商品として売り出した某社は商標登録ができなかったのです。この商品が売れると他社もこぞって「はちみつレモン」を世に出しましたが、一般名称と言うことでオリジナルを発売された某社は何も法的手段をとることができなかったのです。 訳例:各当事者の弁護士による助言の下
このフレーズは、各当事者が契約内容を吟味したことを確認する意味があるだけで、それ以上の将来的な法的効果はない。後日紛争になった場合、「内容がわからなかった」という理由を許さないための口上である。このフレーズが入ってくる場合はそれなりに内容が濃い契約書である。逆に、本人が弁護士の意見を受けずに署名するのが一般的であるような日常的な契約では、このようなフレーズは見られない。 もっとも、アメリカでは、一般に、契約書に署名をした以上、後日になって契約の内容が「わからなかった」という主張はまず裁判所で通らないので、弁護士のアドバイスを受けたという条項がなくても、実際のところ不都合はない。 なお、弁護士による助言、とは書かれているが、弁護士による代理までは書かれていないのが通常である。したがって、弁護士は、通常アドバイスをするだけで、契約書面に署名をするわけではない。しかし、裁判所の面前で和解をする場合や調停などで和解に達する場合には、弁護士も署名することが多い。 |
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