先週出廷していると、もう25年近く一緒に仕事をしている法廷通訳の方と会いました。久しぶりで会話も弾みました。最近忙しくて、ある重大な犯罪事件に通訳としてはいっている、というお話をされていました。ピンときて、その案件のことを聞くと、私のところにまさに相談があった案件でした。ところが、その事件の被害者のなかに、以前私の所属する事務所へ相談されたことがある人がいて、いわゆる「利益相反」に該当するため、受任できなかったのです。詳細は言えませんが、私の経験と能力にとてもマッチしている事件なので、利益相反がなければ、すぐにでも動き出したい事件なのですが、歯がゆいことだ、と通訳の方と話をしていました。その通訳の方に、誰か日本語も英語もできて刑事法廷の経験がある人いないですかね、と言われたのですが、これがいないのです。その通訳の方も裁判所の指示で事件に入っているようでしたが、私が受任できないのをとても残念がっていらっしゃいました。世間は狭い、と言いますが、これだけ長く弁護士をやっていると、この「利益相反」というのは、困ったものだとつくづく感じています。久しぶりの晴天の週末になりましたが、皆さんは外出されて天気を楽しまれていますか。
さて、今回から皆さんからいただいている新しい質問を考えていきましょう。いただいている質問をまとめると「友人とビールをスポーツバーで飲んでいました。盛り上がったあと、ライドシェアを呼べばよかったものの、軽い気持ちで自分の車に乗り、運転して自宅に帰る予定でした。しかし、帰り道に警察官に止められました。なんでも止められた理由はナンバープレートの自動車登録が切れていたということなのですが、結局飲酒運転で逮捕されました。飲酒運転を疑われるような運転は一切していません。このような逮捕は許されるのでしょうか。これから裁判になる模様で弁護士に何人かコンタクトしていますが、お金を払わないとそもそも話もしていただけないようなので、質問をしました」というものです。 (これより先は、メールマガジンに登録された方のみお読みいただけます。) 最近では、私のアンテナが鈍っているのかもしれませんが、法律系のピンとくる映画がありませんでした。弁護士ドラマというのは、やはり法廷を実際にやるのとはちょっと違うな、と思ったり、共感できなかったりです。先日観たThe
Burialという映画は、もちろんエンタメ的な誇張はあるものの実話をベースにした法廷弁護士の話で楽しめました。ジェイミー・フォックスとトミー・リー・ジョーンズが良い味を出していました。派手すぎる弁護士の演出に笑ってしまいましたが、法廷での失敗、苦悩、クライアントとの関係構築、などは自分も観ていて共感するものがありました。昔、新聞記事で読んだディズニーを訴えた弁護士だな、と思って見始めましたが、アメリカの人種差別のなかで戦う弁護士ってすごいな、と思いました。アメリカならではのドラマです。陪審裁判は実際やると、心身ともに疲れるのですが、それでもやはり弁護士をやっている醍醐味なのです。噛み締めました。 さて、前二回は、私の所属する事務所を語った詐欺について考えましたので、その前から考えていた皆さんからの質問に対するお答えを再開したいと思います。いただいていた質問は「日本に在住のものです。最近アメリカで親族がなくなり、相続人が日本在住の私しかいないものですから、カリフォルニア州にいる弁護士に委任をして相続手続きを代行してもらいました。手続きはうまくいったのですが、最後に精算の段階になって、なんでも相続財産管理人の費用と、その弁護士の費用と同じ金額を二回取られていました。その弁護士には法律的には問題はないと言われていましたが日本の弁護士からはそれはおかしいのではないか、という指摘を受けました。その二回払った金額を返してもらうことはできないのでしょうか。」というものでした。 (これより先は、メールマガジンに登録された方のみお読みいただけます。) MSLGを語った詐欺について(2)
前回、私の所属する法律事務所を語った詐欺が起こっているということを法律ノートで書いて注意喚起をしました。今回はその後についてもう一度注意喚起を含めて考えていきたいと思います。 前回の記事を書きましたが、少なくとも8名の方々から、同様の詐欺の持ちかけがあったという連絡をいただきました。全ての方に当事務所から即時連絡を行い、絶対に応じないように、アドバイスをしました。少なくとも、当事務所にご連絡をいただいた方々の被害は防げたと思います。心配なのは、弁護士ということを語る詐欺によって、当事務所に連絡もなく、対応してしまった方がいなかったかどうかです。本当に、何らかの被害が生じないことを祈っております。 犯人は、もちろん特定されないように、色々な手口を使っていますが、今回の潜在的な被害者の方々のお話を聞くとパターンが見えてきます。ですので、どのようなロマンス詐欺やFX詐欺、そして、今回のようなその被害を回復するために何かする、といった詐欺については、以下の点が少しでも、わかった場合には絶対に取り合わないでください。 1 ビットコインなどの仮想通貨で、お金を振り込め、何らかの対価交換をしろ、といった時点で、まず全て詐欺とみなすべきです。世の中の通常のビジネスでビットコインでしか支払いができない、ということはあり得ません。ですので、「仮想通貨」での支払い、という話が持ちがった上で、どうか、何らかの支払いをすることはやめてください。何か期待があろうが、対価を得ることを予定していようが、とにかく、どのような場合でも、「仮想通貨」で支払え、というのは詐欺だとまずみなして良いと思います。今回、当事務所を語った詐欺でも、「カリフォルニアの裁判所は支払いを仮想通貨でしか受けない」といったやり取りがありました。常識に照らして、そのようなことはあり得ません。しつこいようですが、「仮想通貨」というキーワードが出てきたら、もう、連絡は詐欺であるという考え方をするべきです。この仮想通貨で支払え、というのは、詐欺を行った者の素性を隠すことに最適と言えます。少なくとも、詐欺行為者の銀行口座がわかれば、法律的なアクションは取れます。どのような、インターネットを使った詐欺でも、仮想通貨で振り込んでしまう、という行動があると、仮想通貨の振り込みは、本当にトレースができないので、なすすべがありません。日本だけではなく、ロシア、中国などの国を挟んで送金となりますので、追うことが警察機構にしても弁護士にしても、難しくなります。 2 最近では、Amazonなどの大手の通販メーカーを語って、何らかの方法で情報を抜いたり、金銭的な要求があったりしますが、電子メールで来た場合には、必ず迷惑メールを識別できる設定を導入し、差出人を確認することが必要です。 3 今回の法律事務所を語る詐欺については、日本の同業者何名か聞いたところ、同様の手口での詐欺がすでに行われているようです。これらの法律事務所を語る詐欺は以前に、すでに詐欺に遭っている方達、または、何らかの方法で、個人情報を抜き取られている方々をターゲットとしているようです。そうすると、見たことのない電話番号から、電話がかかってくるようです。電話がかかってきて、Signalという履歴が残らないSNSを利用することを勧めます。法律事務所などの公的にやり取りの履歴を残すことを重要と考えている機関が、そもそもSNSを使いません。法律事務所の中には、LINEを利用するところもありますが、私は信じられません。とにかく、電話を受けて、「何か、新しいSNS、通信方法を設定せよ」という内容であれば、それは詐欺であるとみなしてください。 とにかく、お金さえ払わなければ詐欺に遭いません。ですので、仮想通貨を代表として、何か、ギフトカードを買って番号をおくれ、などということで、銀行振込が用意されていない持ちかけは、詐欺だと思ってください。 今回、当事務所の名前を語る詐欺に関しては、まだ詐欺の被害に遭っていない方々からの連絡がありましたので、犯人の端緒がまだ、あまり掴めていません。しかし、一方で、二週間前に、当事務所が著作権違反の犯人を特定する訴訟を提起していることに対する意趣返し反応であろうというタイミングであります。そうすると、ある程度犯人は特定できていけそうなので、やれるところまでやってみようと思っています。8人の協力者の方から得た情報によると、日本の携帯電話である070から始まるものを犯人は利用していたので、日本の警察と協力して電話をすると、犯人が使用していた電話番号2つは、留守番電話につながりましたので、どこかで契約がなされているようです。警察の方がまたこの電話番号については追ってくれることになりました。私は別途、一味であるであろう銀行口座などの特定などをして協力していくことになりました。今回は、日本人であろう犯人が、すでにロマンス詐欺、FX詐欺に逢った人の名簿を入手(または、その犯人)して、日本人をターゲットにしているので、どこかに端緒があると思います。なかなか警察の人たちも追い込むことは難しいかもしれない、と言っていましたが、私はこのような法律事務所を踏み台に詐欺をしようとする連中は絶対に許しませんので、やれるところまでやります。 読者の皆さんも何か情報があれば提供をお願いいたします。 前回から新しい質問にお答えし始めましたが、少々緊急性が高く、読者の方にも周知させていただきたいことがありまして、一回皆さんからいただいている質問にお答えするのは、休ませていただきます。 ちょうど先週、消費者系の事件を多く扱う日本の弁護士と話をする機会がありました。その際に、去年までは副業に関する詐欺的な行為が多かったが、去年から今年にかけて、国際ロマンス詐欺のような事例が急増しているということでした。日本国内にいる日本人をターゲットにして外国人がアクセントのある日本語でSNSなどを通して近づいてくるそうです。多いものでは数ヶ月で数千万円も騙し取られたという事例もあるそうです。手口がどんどん巧妙になってきているそうで、最初は、簡単な副業でお金儲けをしませんか、ということで近づいてきて、気付かないうちに、だんだんエスカレートしてくるそうです。ある程度仕掛けが成功したときに、恋愛話を持ちかけたり、一緒にビジネスをしようと持ちかけたり、といった方向になるようです。また詐欺はお金を詐取することをもちろん目的にしているのですが、銀行振込だと受取人口座が最近日本でも法改正があり、差し押さえが容易になってきましたので、足がつく。そこで、仮想通貨を買わせて、取引させるという手口が頻繁になってきているそうです。とにかく会ったこともない人や、まったく実態の掴めない会社などに対して、SNSで気軽にやり取りをしてお金を送るのは、一切詐欺であるという前提で身構えるべきだと思います。 この数日間に少なくとも二件の問い合わせが私の所属する事務所にありました。すぐに詐欺であるということを伝え、絶対に連絡をしてはいけないとアドバイスしました。私の所属する事務所も詐欺に使われるほど有名になったということでしょうか。以下、今回の詐欺についてメールをいただいた方一名については、やり取りをさせていただき、その手口を教えていただきました。もちろん、私の所属する事務所は実際に依頼がなければ連絡をしません。私の所属する事務所を語るような連絡があった場合には、すぐに連絡を取らず、必ずメールでも電話でも良いので、私どもに確認の連絡をいただければと思います。 今回、とても丁寧に情報を提供していただいた方の文面を、匿名性を確保しながらご紹介したいと思います。いただいた内容は、「Marshall Suzukiのカリフォルニア州弁護士の田口を名乗る女性から私は昨日携帯に電話を受けました。日本人の国際ロマンス詐欺の案件で、犯人グループがカリフォルニア州内に特定でき、詐欺金額を一部回収する案件に今関わっているところ、犯人グループの持つ被害者情報の中に、私の名前と携帯番号があった。ついては私についても、被害金額を回収できる可能性があるので連絡した。今後の連絡を取り合うためにSignalアプリをインストール頂き、連絡を取り合うこととしたい」との内容だったと言います。そもそも、証拠を残すことが職業の一部である弁護士が、過去の履歴が消えてしまうSNSのSignalをインストールしろ、などというのは不審に思えます。私の所属する法律事務所に「田口」などと名乗る女性は存在しません。仮に、カリフォルニア州弁護士というのであれば、登録番号があるはずですから、その登録番号を聞くことも重要だと思います。それにして、方法論について手が込んでいます。たぶん、Signalというアプリを通じて、今度は着手金を仮想通貨で送れといった内容になるのでしょう。この記事は、私の所属する事務所のWebページにも貼り付けるようにしますが、読者の皆さんも、何か私の所属する事務所から、不可解な連絡を受けた場合には、まず私どもにご連絡いただき、必ず確認していただくようお願いします。 今回、私に通知をしてきてくださった方は、数年前に詐欺のFXサイトを通して、資金を振り込んでしまい、気づいた後に日本で弁護士に依頼をされて、送金先を特定しようとされているようですが、まだ特定はできていないようです。この方が推測されるには、このFXサイトの詐欺グループが、被害者リストを有しており、その被害者リストが出回ってしまったのではないか、ということでした。そして、詐欺FXサイトによる元々の被害を回復するという虚偽の建前で、私の所属する事務所の田口弁護士という設定をしたようです。 被害者を救済する仕事の弁護士まで語って、詐欺の被害者から、さらにお金を詐取しようというのは、言語道断、卑劣な行為を平気で行う人間がいるものだとかなり私自身も憤りを感じています。とにかく、儲け話、恋愛話、表面的には利益になる話、などの連絡が来たらまず疑うべきですし、さらにお金を送金したり、仮想通貨を買えなどという話が来たら、レッドアラートだと割り切って、絶対に信用してはいけません。私の所属する事務所を語る犯罪で被害が出るのは絶対に避けたいですので、Marshall Suzukiの名前を使って、心当たりのない連絡があれば、必ずメールでも電話でも良いので、まずは確認のご連絡をください。いつでも優先的に、ご回答差し上げます。 しかし、この詐欺グループをどうにかして捕まえてとっちめてやりたいものです。許せないですね、弁護士名義を語って詐欺をするなんて。ということで、今回は、被害者を絶対出したくないので、緊急性をもって記事にしました。また、通報をしてくださった方々には、本当に感謝しております。ありがとうございました。 |
MSLGMSLGのニュース等をアップデートしていきます。メールマガジンへの登録は、ホームからお願いします。 カテゴリ
All
アーカイブ
July 2024
|
All Rights are Reserved, 2000-2022, Marshall Suzuki Law Group, LLP All Photos were taken by Takashi Sugimoto Privacy Policy English Privacy Policy Japanese |