本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 今回は、皆さんがウェブサイトを運営や管理する際に法律的に気をつけなくてはいけない点を考えていきたいと思います。ウェブサイトというのは不特定多数からのアクセスを受けることが前提となっており、その意味では法律的にも注意が必要な点がたくさんあります。今回は、私も自分の事務所のウェブサイト(www.marshallsuzuki.com)を一新したことを契機にウェブサイトに関する法律を研究しましたので、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。必要であれば、私のウェブサイトのプライバシーポリシーなどを参照してみてください。 まず、皆さんのウェブ上の情報を守るために、著作権、知的財産が皆さんに帰属しているということをできるだけ多く表示しておくことが大事です。All rights reservedといれ、その権利が帰属している人や団体名を記述し、その後2002、つまり表示している年を書いておくと、著作権が発生していることを第三者に対して通知できます。アメリカ著作権局に登録をすることもできますが、登録をしなくても、このようにウェブサイトに表示するだけで、慣習法上の著作権が発生しますので、やっておくことをお勧めします。 次に、ウェブ運営者・管理者が免責されるような情報をアクセスしやすい位置に入れておくことが大事です。ものを販売されている方々は特に注意が必要です。連邦や州などの規制が考えられるからです。また免責の内容にかんして、リンクで第三者のサイトに飛ぶように設定している場合には、ウェブの運営・管理者のコントロールが及ぶ部分と及ばない部分についての対応についてはっきり記述しておく必要があります。また、内容に関して第三者からのリンクを合意なくしてはできないという形にしておくと良いと思います。また、情報などを提供するサイトでは、情報についての正確性、一般的な情報であるといったこともはっきり記述しておくとよいと思います。またアダルトコンテントなどを含むウェブサイトではアクセスするユーザーをフィルタリングする必要もありますから、その点も免責事項に加えておくと良いと思います。 第三点目ですが、第三者の出版物などを使用する場合には、著作権やライセンスなどの許可に問題がないことも確認する必要があります。かってに第三者の出版物を使うことは著作権法に触れる場合がありますから、ウェブサイトに掲示する前に必ず確認をする必要があります。また、紙面を使って出版されているものを勝手にオンライン化することは特に注意が必要です。アメリカの判例でも勝手に紙で出版されている文章オンライン化してしまうと、著作者の意思に反していると認められています。ですから、どうしてもオンライン化をしたい情報がある場合には必ず著作者の許諾を得ておくことが必要です。私も個人的に私の文章を勝手に使われたことがありますが、ちゃんと事前に許諾を取っていただければ快く使っていただけるわけですから。 第4点目ですが、プライバシーポリシーを各サイトで用意することをお勧めします。プライバシーポリシーとは、ウェブの運用・管理をしている場合、どのような情報をアクセスする人から集めているのかをはっきり開示して、理解してもらうための文章です。ISP(インターネットサービスプロバイダ)を使ってウェブをお持ちの方は、アクセスする人に関するある程度の情報が得られますので、どのような情報が得られるのかを確認して、そのことを一般にアクセスする人に告知する必要があります。ウェブサイトによっては、さまざまな情報を勝手にアクセスした人から得て、そのメールアドレスなどを悪用して、ダイレクトメールなどに使用しているところも目立ちます。皆さんのサイトがこのような行為に利用されることがないということをはっきり明記することが、アクセスをする人たちにとってもひとつの信頼感となることでしょう。また、アクセスしているユーザーが情報をウェブサイトで開示する際にも、その情報の秘密は守られるということをはっきり記述する必要があります。また、秘密が守られないのであれば、そのこともはっきり記述することが大事でしょう。ウェブにアクセスするユーザーにとっては、情報を開示するということはある意味勇気がいることです。そういう意味では、ユーザーのプライバシーがどの程度守られるのかをはっきり書いておくことが大事なのです。 第5点目ですが、ウェブの運営者・管理者が著作権侵害の責任を逃れられる法律があります(U.S.C Section 512(c)(2)(A))。この条文を利用して責任を回避するためには、著作権局に一定の通知をすることと、ウェブページを管理・運営する当事者に簡単に連絡ができるような方法を定めることが必要になります。詳しい情報については紙面の関係上、書けませんが、興味のある方はアメリカ著作権局のサイトにアクセスしてみるとよいでしょう。この条文に関する運用は現在流動的なので、まめにチェックをして情報を確認する必要があります。 インターネットで情報を一般に公開するというのは、運営者・管理者にとっても、アクセスするユーザーにとっても非常に利益となる面がありますが、反面、相手の顔が見えない通信方法や情報伝達方法でもあるわけで、今までの生活とは違った面での注意が必要なわけです。皆さんもウェブサイトを運営・管理されているなら、これらの点についてはぜひ気をつけてくださいね。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 今回は、契約書に関する基本中の基本について皆さんと考えてみたいと思います。契約はいくつかの要素から成り立っています。たとえば、売買契約の場合、契約の当事者が何を、どの程度の価格で何時までに引き渡し、その代金をいつまでに払うといった要素があります。 このように契約を構成する要素はいくつもあるのですが、その中でも基本中の基本が「誰と誰が契約をするのか」、つまり契約の当事者は誰かという要素です。たとえば、太郎さんが持っている消しゴムを花子さんが買う、という契約の場合には、明らかに太郎さんと花子さんが契約の当事者といえると思いますし、皆さんにも違和感がないと思います。 では、花子さんはマクドナルドでアルバイトをしていて、太郎さんはそのマクドナルドで、バリューミール(日本では「お勧めセット」と呼ばれているかも)を買った場合、太郎さんと花子さんははたして契約の当事者と言えるのでしょうか。皆さんどう思われますか? 太郎さんは自分でバリューミールを買っているのですから、当事者と言えることは間違いなさそうです。 では、花子さんはどうでしょうか? 確かに店でスマイルしながらバリューミールを太郎さんに出しているのは、花子さんでしょうし、会計をしているのも花子さんかもしれません。しかし、花子さんはマクドナルドのその店でバイトをしているだけですから、花子さんは契約の当事者ではなく、マクドナルドと太郎さんが契約の当事者ということになるのです。 なんだ、ちょっと考えればわかるじゃないか、と思われる方もいらっしゃいますが、結構契約を作成したりすると、こんがらがってしまうこともあるんですよ。 特に、契約書に何人も当事者がでてきる場合や、当事者が個人ではなく、会社や団体である場合にはややこしくなるのです。 マクドナルドで注文するのも売買契約ですが、生活の中には様々な契約が溢れています。 働いて収入を得るのも契約、交通機関を使っても契約です。ただ、皆さんが「契約書」なるものを作成しないだけで、口頭の契約によって、当事者の信頼関係をもとに、社会が動いていくのです。しかし、ある程度の規模の取引になると、契約は書面によって行われることになります。特に会社間の契約は書面によることがほとんどです。その場合、株式会社Aと株式会社Bで締結されますね。しかし、サインをするのは、その会社の実務を担う、代表取締役などの管理者です。ここまでは一般的な実務ですが、訴訟があって、会社内でたくさんの個人が訴えられたり、管理責任を問われたり、はたまた会社自体にも損害賠償の責任などが生じると、和解契約書などを作るときに相当注意しないと弁護士でもミスがでる場合があります。 契約書のレビューの仕事をしていると、日本語の契約書では「甲」「乙」「丙」「丁」などの古い日本語を今でも使用していますが、時々当事者が文章中でこんがらがって、権利関係が不明確になっているものも見かけます。また、アメリカでは雛形などが出回っていますが、そのまま使ってしまうと、She なのにHe になっていたり、会社がheとかsheになっていたり、といった、細かい部分で契約書が不明確になっていたりします。 まあ、細かい不整合性であれば、目をつむれますが、契約書で保証をする場合など、ちょっと間違うと保証の効力に関して命取りになる場合もあったりして、「細かい間違い」で済む問題ではなくなります。 弁護士でも非常に気をつけて、チェックをするところですから、皆さんも気軽にサインをする前に少なくとも当事者の名前は契約内容に合致しているか、確認されると良いと思います。 まあ、すごく基本的なポイントかもしれませんが、契約に触れる方々には、注意しておいていただきたい一点です。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 今回は皆さんに馴染みがそんなにないであろうコンセプトを考えてみましょう。日本語で訳すと、「約因」英米法では、Considerationと呼ばれるものです。契約書を読んでいると、アメリカでは必ず「In condieration of...」とか、「For the value received」といった記述が契約書に書いてあります。時々、翻訳を見ていると、法律をわかって翻訳していないため、難解になっていることがあり、ぜひ、今回、この約因というコンセプトをわかっていただきたいと思っているのです。私も最初は日本の法律を勉強していたので、この「約因」というコンセプトが出てきたときには、よく悩まされました。 口約束でも書面による約束でも構いませんが、契約というのは、まず二人(会社などでもよい)以上の人がお互いに約束するところから始まります。この約束をする人達を「当事者」と呼んだりします。たとえば、一方の当事者が「この鉛筆を50円で売ろう」、そしてもう一方の当事者が「それなら、その鉛筆を50円で買おう」という約束をすることによって契約は成立します。「売ろう」、「買おう」という意思が合致したときに契約が成立したことなります。ということは、基本的に書面でなくても口約束でも立派な契約になるのですね。日本では、契約をしようと申し出ることを「申込」といい、その申込に対して、「了解しました」ということを「承諾」といいます。日本の民法では契約は、この申込と承諾があって、契約が成立します。一方の当事者が約束を破れば、法的に強制ができるのですね。ところが、アメリカを含め、英米法の下では、この申込と承諾の他に、約因というコンセプトがなければ、契約は成立しません。 約因(Consideration)というのは、歴史的なコンセプトの変遷があったものの、現在では契約の当事者がなんらかの「価値を交換する」ということです。つまり、申込と承諾があっただけではなく、何らかの価値をお互いに交換してはじめて契約となるのです。アメリカの法律を学ぶ学生も頭を悩ますところですが、簡単な例を使うと、「鉛筆を50円で売ろう」というのが、申込で、「その鉛筆を50円で買おう」というのが承諾だとすると、この契約では、「当事者同士で50円と鉛筆を交換すること」が、約因となります。英米法ではこの「約因」というのがあってはじめて契約が成立することになりますから、契約書を見ても、必ず、For the value receivedとか、In consideration thereofなどという、当事者同士で交換していることを明確にしている文章が記載されているのです。ですから、翻訳をするときには、必ず契約書を読み、どのようなものが交換の対象になっているのかを考えなくてはいけません。不動産を借りるときには、住む権利と家賃を支払う義務が交換されていますよね。弁護士に仕事を委任するときには弁護士が業務を行うことと、その報酬を支払うことが交換されることになります。 日本では、「贈与」というと契約の一形態と位置づけられています。一方の当事者が他方になにかあげることが贈与契約とされていますが、アメリカでは一方がもう一方の当事者にものをあげることは契約とはみなされていません。なぜかといえば、一方がもう一方にものをあげるだけでは、ものを交換していないですよね。交換がなければ対価性がないですから、約因もないとみなされ、契約としては成り立ちません。こういった贈与を契約としたいときによく使われるのが、1ドルを対価として、ものをあげるといった形にすることです。たとえ1ドルでも交換していれば、対価として成り立ちますので、約因とすることができるのです。契約を成り立たせるためによく使われていたテクニックなのです。 以上で約因というコンセプトがある程度おわかりになっていただけたでしょうか。最近の学説では、約因というコンセプト自体が必要ないものではないかという議論も活発に行われています。果たして、対価性が実際に必要なのか、学者にしても意見が分かれるところなのですね。ただ、一般的なレベルでは、現在でも「価値を交換すること」が契約では必要だと認識し、契約書を作るときには必ずこの対価性を反映させることを忘れないでくださいね。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 今回は皆さんに経営者や会社の関係者としての責任と個人的な責任ということについて考えてみましょう。よく「経営者が責任を取って辞任した」などという新聞の見出しを見ることがありますが、記事をよく読むと経営者自身に問題があるわけではなく、経営者が会社の業績不振や、その他社会的にも取り上げられる不祥事があって辞任するという例を多く見受けます。言ってみれば、本人が悪いかどうかわからないけれども、会社のトップであるが故に責任を取らなくてはいけないという事態が多くあるわけです。 日本でもいろいろな不祥事がありましたが、トップの人が確実に悪いことをしているという例はほとんど表に出てきません。もちろん社内で尻拭いの縦型人事ができているからかもしれませんが、経営者としては、経営不振や部下の不祥事で責任を取らなくてはいけない問題があるわけです。 ただ、職を辞任するということが責任をとるということがほとんどであって、法的にその経営者が、経営をしていたからということを単独の理由として、損害賠償などの責任を負うことはあまり多くありません。経営責任ということと、個人的に経営者が責任を負うということについて少々掘り下げて考えていきましょう。 基本的に、会社の経営者が個人的に責任を負わなくてはいけない場合というのは、その経営者が個人的に悪いことをしたり、法的問題が存在するのに故意に対処をしなかったりする場合です。経営者本人が悪いことをしているということが責任を負う根拠になるのです。当たり前ですかね。 よく、会社を設立するという業務を私の所属する事務所でも担当しますが、会社を設立して会社名で業務をすると、社長以下経営陣は個人的には責任を全く負わないと考えられている方もいらっしゃいますが、もしご自身が社長になられて、法的に問題のあることをした場合には個人的に責任を負う場合もあるということを理解していただきます。株式会社を設立するイコールすべての責任は会社に存在するということではないのですね。 さて、それでは具体的にどのような例において、経営者が個人的に責任を負うのでしょうか。以下列挙しながら考えましょう。ただこのコラムでご紹介する事例が全てではないので注意してくださいね。 まず、時事の話題としても大きく取り上げられることの多い証券取引関係を考えましょうか。証券取引法というのは、証券の扱いを公平なものにして、証券の価値を正当なものにして、一般の人たちの信用を得ようとする目的があります。簡単に言ってしまえば、株などの証券というのは、価値があってないようなものですから、システムをきちっとしておかないと悪用する人が後を絶たないのです。よく聞くのがインサイダー取引という言葉でしょうか。会社内でしか知り得ない特別な情報を使って、株価が上がるのを事前に知り、株を買うことが代表例ですが、経営者などの特別な地位にいる人が個人的な責任を負う典型です。 また、よく聞く例は、会社の合併などが行われることが一般に知れると、株価があがるという場合があります。合併により、より業務が大きくなったり、より効率的になると予想されたり、業界でも力を持ったり、といろいろなメリットが考えられるからでしょう。インサイダー取引などの株価に関しての事柄はアメリカでは証券取引局(SEC)が監視していています。 株により経営者が不当に利益を得た場合、会社から不当利得について訴訟される場合があるでしょうし、損害賠償責任を負う場合もあります。加えて、証券取引局が公的にこの経営者や内部の情報を漏らした者を訴え、場合によっては罰金、禁固刑などが科せられることがあります。 経営者という地位においては、会社の秘密情報を多く手にしたり、新製品の開発や、特許の情報などが入ってきますね。 このような情報を事前に漏洩して、自己または特定の第三者が株の利益を得ることをインサイダー取引と呼びます。アメリカの証券取引委員会は私見では、アメリカの連邦機関の中でも特に優秀な人材が揃っているところです。ここで働く弁護士も非常に優秀な人が多く、インサイダー取引に関しては、厳しく法律を運営しています。ですので、アメリカにおいては経営者の責任として常に気をつけなくてはいけないのはが証券取引法です。 その他「経営者の責任」といえる代表的なものを考えておきましょう。 まず、取締役の対外的な責任についてです。 アメリカでも日本でも同じだと思いますが、中規模以下の会社であると、お金を借りたりするときには、必ず個人保証を求められ、ほとんどの場合には会社の代表取締役が個人の保証をつけます。なぜかというと、会社というのは、会社財産がなくなったり、倒産をしたり、ということが考えられますが、ある程度財産を持っている個人というのは、簡単には破産や民事再生を申し立てることができません。ですから、ある程度資産を持っている個人に金融機関は責任を持ってもらいたいということになるわけです。 会社が倒産したり、借入金の返済が滞ったときには、通常、保証人となっている会社の経営者が責任をとることになるのです。 次に、契約関係や不法行為関係で、経営者が会社の代表としてではなく、個人的に責任を負う場合があります。 経営者がいくら会社の代表取締役でも、個人的に締結した契約に関しては責任を負うことは明白ですね。たとえば、自分で趣味のボートを買って、その支払いはするのは個人の責任といった場合が考えられます。 難しいのは、不法行為が絡んだ問題です。「不法行為」というのは、法律用語ですから、必ずしも「違法」や「悪いこと」と結びつけないでください。ある人が故意または過失によって人に損害を与えた場合、因果関係が存在する程度では責任を負うという意味です。詳しくは日本の民法の709条でも参照してみてください。 経営者としての不法行為としては、たとえばセクハラや不当解雇などの問題が考えられます。経営者が経営者のキャパシティを越えて、不当に被雇用者に対して損害を与えるような場合には、経営者は個人的に不法行為責任を負います。通常会社の定款等に、どの程度経営者が責任を負うのかが明確にされていますが、ほとんどの会社では、会社の経営上、個人責任を最小限にするように書かれているのが実際のところでしょう。会社が大きくなると、デラウェア州に法人の本拠地を移し、法人登録をするという会社が多いのですが、デラウェア州法では、経営者の責任に関し、最大限に経営者に対して寛容であり、更に今まで多くの裁判例があるので、経営者側としては会社の経営に際して予見できる部分があります。デラウェア州法人の人気の秘密の一つに、この経営者の免責ということが挙げられるのです。 もう一つ大きな経営者としての責任は、株主に対しての責任です。会社の持ち主は株主であり、経営者ではありません。もっとも株主と経営者が同じという場合も多くあります。経営者の株主に対しての責任とは、会社の業績面であるとか、会社の運営に関する面であるとか、ビジネスの面がほとんどであり、株主にしても、どの程度その会社の株主になっていることで利益があるのか、という面だけを考えている場合が多いので、お金さえ儲かっていれば、問題がないというのが、通常でしょう。しかし、経営者が違法な行為を犯したり、お金を横領したり、といったことがある場合には、株主は訴訟により、経営者の責任を追及することができます。株主代表訴訟などという言葉をお聞きになったことがあると思います。最近では、ヨーロッパで、会社の経営者があまりにも過大な報酬をもらっているということをベースに株主が訴訟を起こしているという例もあります。 このように経営者というのは、対外的にも対株主にも、そして対政府に対しても責任をもって会社を経営していかなければなりません。その責任に対して報酬をもらっているという面があることは確かです。前回今回と経営者というのは決して楽なものではなく、重い責任を課されているということを法律の面から考えてみました。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 今回は一般的ですが、契約をすでにしている当事者間でその契約の内容を変更する場合の注意点について考えてみたいと思います。具体的な例を使って考えてみましょう。たとえば、身近なところでは、家を借りるといった賃貸借契約でしょうか。1年間といった継続した期間、お金を月々支払い、その対価として、家やアパートなどを使えるという契約です。ところが、長年にわたり賃貸借契約のように当事者間を縛る契約では、時間の流れや事情の変更で、契約内容が変更されることがあります。賃貸借契約などでは、たとえば、車を買ったから車庫を借りる項目を追加するとか、家賃が値上げになるといった場合です。 こういった変更を口頭で両当事者とも納得して、従う分は構いませんが、当事者間で問題になったときや、また契約をしていない第三者が契約当事者の地位を受け継ぐといった場合に問題となる可能性が生じます。簡単に言うと、契約の内容が変更されても、その変更された内容がちゃんと書面になっていないと、第三者が見たときに、そのような変更を客観的に知り得ないことになってしまいます。そうすると、契約内容が曖昧になってきて不利益を被ってしまうかもしれませんね。ですから、契約内容を変更する場合、たとえば上記で例として使った賃貸借契約ですが、書面でどのような変更があったのか、たとえば車庫を追加で利用する場合には、その旨を記載した書面をつくっておくことが大事になります。驚かれるかもしれませんが、契約書で訴訟になるという場合には、この変更点を書面にしてあるかどうかというポイントが争われることが少なくありません。 ところが、アメリカは契約社会ですから、簡単な追加書類では事足りない場合があります。まず、皆さんが確認しないといけないのは、元となる契約書です。たとえば、売買契約やリース契約、それに賃貸借契約などでも、必ず契約の内容を変更したり、追加条項を加えたりする場合の制約が書かれています。もし、家を借りている、何かものをリースしているといった場合には、そもそも当事者が締結した契約書を確認する必要がでてくるのです。 契約書で定型的に使われるのは、契約上の双方が書面によって合意した場合でなければ、契約内容の変更や加除は認められないということが書かれています。ですから、口頭で契約が変更されても有効では無い場合があるのです。上記の例を使って考えると、車庫を追加で借りるといった場合、元の賃貸借契約書に書面によらなければ契約の変更ができないと書いてあると、口頭で車庫を借りる契約をしていたとしても、有効に元の賃貸借契約に組み込むことができなくなります。もし、友達に自分が住んでいるところを引き継いでもらおうなどと考えている場合には、後から「車庫は使えないよ」と言われてしまう可能性があり、そういわれた場合、反論が難しくなる場合があるのです。ですから、特に継続的に契約をしている(賃貸借契約など)場合には、元の契約内容に変更点があったときには必ず元の契約書に沿った書類をつくっておいた方がよいことになります。 もちろん、元の契約書に沿った内容の文言をつくらなくては効果が無い場合がありますが、以下簡単にどのような内容を盛り込むことが必要か考えておきましょう。 まず、基本となる契約書の内容を修正するという内容をはっきり盛り込む必要があります。いつつくられた契約書をどの当事者で修正(Amendment)するのかを最初に書きましょう。 次に、基本となる元の契約書のどの部分を修正するのか、また新たに追加するのかはっきり記載しておく必要があります。条項を修正するのであれば、その元となる条項、それに新しく修正される、削除される、または追加される内容をはっきり記載しておく必要があるでしょう。 その他、いつ実際に修正条項が有効となるのか、また元の契約書の条項は修正された以外はすべて有効に存続するなどの項目などをいれる必要がでてきます。 個人の契約などに関しての修正では当事者同士が話し合いをすればさほど問題は発生しないと思いますが、何十万ドルにもおよぶ不動産リースなどをしている会社は契約の内容を変更したいと思うときには必ず法律的なアドバイスを受けることをお勧めします。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 日系企業がアメリカに進出してきて、基本的なビジネスのセットアップ、たとえば会社の設立やビザの問題などを解決したとしよう。次のステップとして考えなくてはいけないのが、人を雇用することだ。往々にして日本から進出してきた企業は忘れがちだが候補者のインタビューの際には質問等で気を付けなくてはいけないことが多々ある。やはり人種問題など日本にはあからさまには存在しない問題があり、インタビューの質問の際にも注意しなければならない。雇用者と被用者の間に立ち、斡旋を行う業者の中には的確なアドバイスを行うところも少なくない。しかし、雇用に関する法律は人種差別、年齢の差別それにセクハラなどの問題と、議会を通してではなく、裁判を通して判例で形成される場合が多い。言葉を返せば、日々裁判所を通して形成される判例が実務上重要になってくる分野である。もちろん顧問先の企業であれば私でも状況に応じたアドバイスが可能であるが、気軽に相談できる弁護士がいない場合には、できるだけ雇用に関する情報は手に入れるようにしたい。インターネット上でも有益な情報は散見する。以下、候補者のインタビューに関して、注意したい点を考えていく。以下の点は連邦の法律により規定されている。 まず、個人に関する情報で質問してはいけないものに、出生地(家族の出生地を含む)、年齢、結婚しているかどうか、性別(Mr. Ms. Mrs.などの質問を含む)、家族の出生地、家族の住所などについては質問することはできないし、また答える必要はない。 出生に関することは本人だけではなく、配偶者、子、親やその他の親族に関しても質問することができないことを念頭に置いてほしい。また、就職のインタビューにおいて、出生証明などの出生に関する書類を提出させることも許されていない。 また、名前についても、法律的に裁判所が認めた改名前の名前や結婚する前の姓についても質問することはできない。個人情報に関しては名前などの基本的な質問はすることは許されているし、年齢も聞いてはいけないというのが通常の考え方だが、未成年者でないことを確かめるために18歳以上かどうかを聞くことは許されている。住所や過去に住んだ場所などを聞くことも良い。 次に個人の肉体的なことまた精神的なことについて聞いてはいけないことがある。まず身長や体重、それに肌の色、仕事に直接関連していない身体的、精神的な障害などについて聞くことは許されていない。直接インタビューをしたときに候補者を観察することができるので、つい身体的なことなどに言及する例があるがあくまでも仕事の内容に関係がなければ聞くことはさけた方が良い。もし、採用を予定しているポジションが特定の身体的・精神的な能力を要求する場合には、その仕事に関して候補者の能力が適切であるかどうかを判断する材料として、障害の有無については聞くことが許されている。また、採用を決定する前に候補者の写真を要求してはいけない。 第三点目だが、個人の宗教には言及できない。所属している団体を挙げさせる場合には、差別に該当しない程度なら許される。性的なオリエンテーションについてはもちろん質問は許されない。教育については、学校教育については聞けるが、外国語をどのようにして習得したかを聞くことは許されていない。また、過去の職歴について聞くことは可能である。 市民権を持つかどうか、また有効にアメリカにいる権利があるかどうかについては質問することは可能だが、最低限度の質問に抑えておいた方がよい。 以上のように、質問して良い事項といけない事項がたくさんあるわけだが、人を雇用するにあたり、どのような点に気をつければよいのかを考えたい。 まず、雇用を行う上で、必要な事項、すなわちポジションが要求する事柄について集中した質問をすることである。一般的に言う「無駄話」は極力さける必要があるのだ。 また、会社において、インタビューを行う者の教育も非常に大事だ。インタビューを行うものは、その経験がある程度あることが必要であろう。 また、一人でインタビューに望むのではなく、状況が許せば複数人でのインタビューということも考えられるだろう。 また、画一性を得ながら、違法性を最小にするために、インタビューに関しての用紙を用意しておくのが無難だ。 事前にインタビューに必要な条項を紙にまとめて会社でシェアしておくとよいであろう。このインタビューシートを弁護士などと相談して作っておくのも手だ。会社にとっても候補者にとっても大事なインタビュー、ぜひ必要最小限の知識は備えておきたいところだ。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 今回は、最近のベイエリアでの家賃の動向に連動した法律の問題について書いてみようと思っています。ドットコムは生き残るところはちゃんと生き残り、消えるところはどんなに大きなところでもフェードアウトといった方向性がはっきりしました。景気が悪くなれば失業率が高くなり、ベイエリアを離れていく方も少なくありません。日本の会社でも日本に撤退するなどという話もひとつやふたつではないのが現状です。ベイエリアの住宅事情も一時期は家一件を借りるのに、通常の人の給料よりもどうみても高い金額を支払わなくてはならないような時期があったわけですが、最近ではだいぶ家賃も落ち着いてきたみたいですね。まず、サンフランシスコを含めて商業物件の空きが目立ちはじめて昨年末は街を歩けばAvailableの看板をどこでも見かけることができました。次に住宅物件の値段が下がりはじめました。すごい勢いで下がっているようで、一ヶ月分無料、セキュリティーデポジットもほとんど無し、なんていう状況になってしまいました。 このような状況になって「むむむ、」と唸ってしまっている方々は、ちょうど家賃の値段がピークの時に、一年間などの期間で賃貸借契約を締結された方々でしょう。同じような家に住んでいるのに、新しく入ったお隣さんの家賃が自分が払っている値段よりもずいぶん安い、知り合いの不動産屋さんに聞くと「ちょっと高いですねぇ」なんて言われてしまっている方たちです。また、横目で見ていると、ちょっと前までは競争が激しく借りられなかったようなアパートや家がごろごろマーケットにでている訳です。そうするとおもしろくない。なんとかして、現状縛られている賃貸借契約から解放されたい訳です。私のところにもこのような相談がよくあります。 まず、賃貸借契約に、商業用でも住宅用でも期間の定めがある場合、原則としてその期間は賃貸借契約に縛られることになります。ですから、賃貸借契約を締結するときに、たとえば月々4000ドルで三年の契約を締結すると、その契約書に署名した時点で、賃借人には基本的に14万ドル以上の家賃支払義務が生じるのです。特に住宅用の賃貸借契約に関しては、サンフランシスコ市などでは条例を使って家賃の値上がりを一定の金額に抑えたり、正当事由がないと大家はテナントを立ち退かせることができない、といった特殊な法律が存在するのも事実です。しかし、基本は通常の契約ですから、一年間借りるといえば、一年間、三年間借りるといえば三年間縛られることになります。 中途解約が賃借人の方から認められる場合というのは、まず大家が契約違反をしている場合です。たとえば、契約上大家がしなくてはいけない修繕をしなかったり、物件の引き渡しをしなかったり、契約の対象となる物件を引き渡せなかった場合などです。また、大家が破産をした場合などは、契約が解除できる旨が契約書に明記されている場合が多いです。 上記の様に正当な事由が無い場合には、基本的には中途で借りている家を出てしまっても、その後の家賃は賃借人の責任になってしまいます。もっとも、大家さんは、賃借人が出ていってしまった後、必ず全力をつくして、新しい賃借人を見つけなくてはなりません。つまり、たとえば、あと半年分契約上は家賃が前の賃借人からもらえるという権利があるとしても、新しい賃借人を探す努力を何もしなければ、六ヶ月分をすべて請求することは難しくなります。 とはいえ、借りている物件を勝手に出ていって、大家さんからの請求を待って考えようというのは、ちょっと考え物ですよね。やはりどうどうと処理できるかどうか、話し合うのが一番よいのです。話し合いの可能性としてはメジャーな方法が2つあります。 一つは、大家さんに事情を話し、契約に記載されているか、話し合いで決めて、ある程度のペナルティーを支払って契約を終了させてもらうことです。大家さんが良い人であれば、この方法も充分に可能だと思います。 二つ目の方法は又貸しをする方法です。契約書には大家さんの同意をとった場合又貸しができると記載されているものをみかけますが、自分で新しい転借人を見つけ、家賃を交渉し、必要があれば差額などを損になりますが払い、出るという方法です。ただし、この方法は、転借人が住んでいる間は、もともとの賃借人も責任を負う可能性が大ですから、リスクはあります。 どちらにしても、ある程度金銭的に泣くことが必要になるかもしれませんが、後で訴えられる可能性を考慮すれば、億劫がらずに大家さんと話しておくことが大事なのです。 私の事務所内でもこのところ引っ越しをする人が多くなっています。高級そうなアパートなどでも、ずいぶんリーズナブルになったようで、私が見ていても、「いいなー」と思うようなところに引っ越しをしているようです。私の事務所の近くにもとてもブルジョア的な高層アパートがあり、そこにもうちの事務所の人達が何人か住んでいます。事務所に通うのに五分もかかりません。確かに便利なのですが、家と事務所関係なく仕事の事を考えそうで、私自身はちょっと考えてしまいます。仕事時間と自分の時間を最大限につくるには、家と仕事場が近い方が良いそうなのです。まったく頭が下がります。 事務所でも独り者の人達は、気軽に引っ越しをしたりできるのでしょうが、家族となると、スペースも必要だし、なかなか動くのも大変そうです。ある程度広さを確保するとなると、今までは郊外にしか住めなかったのが、家賃が下がってきたおかげで、「やっと念願のサンフランシスコ組に入りました」などと言っている人もいます。バスや電車で比較的どこにでも移動できますからね。住むところは大事ですから、私もみんなが満足している状況で住める環境になってきたのが、人ごとながらとっても嬉しいのです。ところで、引っ越しパーティーを主催するといっていた事務所の人達がいましたが、未だにインビテーションをもらっていませんねぇ。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 今回は、アメリカでのインターネット上での法律リサーチについて少々考えてみたいと思います。主に弁護士向けになります。 また、各論まで限られたスペースで論じることはできませんので、主にアメリカ法リサーチのバックボーンを実務的な観点から考えていきましょう。 まず、日本法とアメリカ法で根本的に考え方を変えていかなくてはならないのは、アメリカには連邦法、それに各州法という二段階構造になっているという点です。実務では、具体的な法律論を論じる前に必ず、どの管轄の法律が適用されるのか、考えなくてはなりません。 次に、リサーチの内容です。アメリカでは日本で言う「六法全書」はありませんし、立法や判例が活発に変遷していきますので、今までのように判例集などに頼るということも不安が拭い切れません。日本では、新法の制定などは官報などに目を光らせていれば、ある程度は把握できますが、アメリカでは各団体、裁判所、省庁等、公布がばらばらですので、きっちりとしたリサーチには日本に比べ格段に時間がかかると考えて良いと思います。 これらのアメリカ法における日本法との違いを克服する上でインターネットはある意味法律業界に革命をもたらした一面があります。また、アメリカではインターネットにおける法律の情報収集に関しては群を抜いて便利ですし、重要な情報がごろごろ存在します。日本法を調査するときにアップデートが足りないなど不便を感じることがありますが、アメリカ法に関してはユーザーの観点を非常に考慮したものも少なくありません。 アメリカではインターネット上での法律の情報提供をビジネスにする例が少なくなく、伝統的な出版社が電子情報配信に積極的に乗り出し、経営の転換を図ることに成功したといっても良いでしょう。しかし、インターネットの普及と同じくして、情報を電子化してきた出版社は、情報提供および、情報のプリントアウト等に関して、非常に高額な使用料を要求してきました。当初は価値があったかもしれませんが、だんだんインターネットの不況が加速化してきましたので、私見では高額の支払いが実務上意味があるのか、疑問になってきたと思います。 詳細は業務上のノウハウもありますので、書くことを避けたいのですが、実際にアメリカの実務のスタンスで、どのようにリサーチをしているのか、述べておきたいと思います。まず、高額なリサーチエンジンを使用する場合、その帳尻はクライアントに回ってしまいます。そうすると、自己満足的なリサーチも増えたり、必要のないリサーチまで発生する可能性があります。やはり、実務家のスタンスとして、コスト面からでもクライアントのニーズに合わせるということは必要だと考えています。 では、どのような方法が現在のアメリカ法実務では最適なのでしょうか。まず、実務書、つまりアメリカではプラクティスガイドと呼ばれる、書式集や各エリア別の法律書がありますが、これは常時使用するものですし、簡潔に論点がまとまっている場合が多いので、電子化に頼らず、現在でも紙のものを使用しています。最初に、実務上の論点落としを避けるため、またどのような判例があるのか、傾向はどのようなものなのか、プラクティスガイドで確認します。 その後、連邦、州など限られた範囲で提供されている判例検索、条文検索エンジンで調査を深めていきます。この調査に関して、ある程度公に無料で公開されているリサーチエンジンがありますが、クリティカルな部分が不足しています。このため、有料の検索エンジンを使用しています。この不足の部分というのが、どの判例が否定され、現在どのスタンスの判例が指示されているのか確認できるという仕組みです。シェパダイジングなどと呼ばれますが、生きていない判例を除外するためには、必ずこの作業をしなくてはなりません。ただ、最近ではカリフォルニア法に限って言えば少なくとも10社程度が非常にリーズナブルな価格でこの機能を提供していますので、非常にアクセスし易くなっていますし、定額使用のエンジンが多いので、クライアントに迷惑をかけることもありませんし、徹底的に判例を調査することができます。 次に、実務家として落としてはいけないのは、最新の判例、立法のチェックです。毎日のように重要な判例がつくられている現状では、ほぼ毎日判例のチェックを欠かすことはできません。従来は、法曹用の新聞が発行されていて、その新聞に付属しているアドバンス・シートという、最新判例が原文のまま載っているものを使用していましたが、事務所にいない場合や、複数の人が同時に見たいという場合に不便でした。ところが、弁護過誤保険を提供する会社や、各弁護士会、それに任意の団体、たとえば、アメリカ法廷弁護士協会、移民法協会などが、毎日のように判例のアップデートを電子メールで送ってくれます。このアップデートを自分なりに整理をすれば、ちょっとした判例データベースをつくることができます。 立法に関しては、クライアントの興味および自分の興味がある、省庁のメーリングリストに参加すること、およびそれら団体、組織のウェブページの更新時に知らせてくれるシステムを作っておけば、忙しく変わっていく法律情報を短時間で確認し、データベース化していくことができます。 事件によっては、学者の意見や、二次的な参考書が必要になることがありますが、まずインターネットで一般的な検索を行い、それでも足りない場合には、一回毎の有料データベースを利用し、出費を最小限に抑える形を取っています。このように、固有の会社のデータベースに頼ってしまうのではなく、情報が多いのですから、実務家がイニシアチブを取って、マイ・データベースをつくっていくというのが、これからの実務の形のように思います。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 今日は、非常に実務的な移民法のポイントを考えていきたいと思います。どのビザが取れるのかうんぬん、と言った話題はどこでも見かけますが、実際に様々な形で移民局に召喚を受け、面接に臨む場合のことについて考えてみましょう。 まず、どのような機会に移民局まで行かなくてはならないか、代表的な例を挙げておきます。まず、結婚ベースで永住権を申請する場合には、申請書を提出した後に必ず面接が設定されます。一緒に住んでいるという証拠、たとえば写真や公共料金の支払記録を携帯するように要求され、面接に参加するというパターンです。 それから、永住権保持者が外国に長期に滞在していて、アメリカに再入国しようとして、あまりにも海外滞在が長いので、後日移民局に説明にくるように要求されるというケースがあるでしょうか。もちろん、逮捕されたり、移民法上の違反があるような場合にも、面接がありますが、基本的には平和な面接ではなく、どちらかというと取り調べという感じになるパターンが多いと思います。 移民関連の申請書をアメリカの弁護士に頼むということは外国人にとっては日常茶飯事でしょう。しかし、非移民ビザの申請等に関してはほとんどの場合、面接を伴いませんので、多くの外国人にとっては、「移民局の面接」というのは未知数かもしれませんね。ですので、ここでどのようなものなのかを感覚として感じていただきたいのです。 さて、ほとんどの場合、移民局の面接は移民局からの通知によってはじまります。通知は一方的なので、通常面接期日の設定を変更するのは難しいものがあります。期日変更をする位だったら、自分の都合をできるだけ変更しましょう。 面接になると「弁護士に付いてきてほしい!」と思われる方がほとんどだと思いますし、逆について行ってもらうことで、結果が違ってくる場合がある訳ですが、どのような場合に必要で、どのような場合には必要ないのかある程度知っておくとメリハリがつくのではないでしょうか。 まず、ストレートに結婚をして永住権を申請して、面接をする、という場合には、過去に離婚歴が何度もあるとか、結婚に問題があるとか、移民局に何らのことを疑われる可能性があるとか、問題点がない限り、結婚されるお二人で行かれても、弁護士が付いていっても私の経験上あまり違いがありません。逆に「何で弁護士がついてくるのだろう」という目でみられるということもありました。ちゃんと結婚をしていれば、公共料金や銀行口座などを共有しているでしょうし、旅行もするでしょうから、いろいろな証拠は揃っているはずです。もちろん面接の前に、弁護士と打ち合わせをして、どのような書類を持っていくのか、またどのようなことを言うべきなのか、などを話すべきでしょうが、実際の面接日に移民局に弁護士が行く必要はあまりないかもしれません。というのも、移民局に行って、実際に質問を受けるのは、本人ですし、弁護士が変わって答えるということはあまりできないシチュエーションが多いからです。また、移民局の審査官はいじわるな人は特に、弁護士を無視する形で本人に質問をします。これは移民法上許されています。結婚によって永住権を取得する場合の配偶者の一方はアメリカ国籍、または永住権保持者なはずですから、申請者本人が英語ができなくても、それほど問題にならないケースが多いわけです。 質問を理解できなければ、もう一度聞けば良いですし、通常移民局の面接はインフォーマルなセッティングで行われることがほとんどですので、緊張を与える環境ではありません。しかし、辞書を持っていっても、質問の意図がわからない、などという状況では、不安も残るかもしれません。しかし、結婚による面接において弁護士の役目というのは、もし申請者がわからにことがあれば、助け船を出すという程度で、ほとんどの場合は、黙って座っているということになります。いわゆる一種の保険みたいなものでしょうか。 結婚の面接に対し、犯罪や移民法違反が絡んでいる場合には、弁護士を付けた方が良い場合がほとんどです。なぜかというと、自己に不利益な証言をしてしまうと、逆手に取られ刑事罰などにも発展する可能性があるからです。身柄を拘束されていないような事例だとしても、軽く見ないで弁護士に相談した方が良いかもしれません。 また、「面接」つまりインタビューという形で召喚をしますが、移民局は実質、取り調べをしているという例も少なくありません。場合によってはビデオに撮影するという許可を求められたりもします。 以上からわかるのは、結婚を通しての取得の面接に関しては弁護士の立ち会いは任意、犯罪が絡むような場合には、任意ですが、弁護士に相談した方がベターと覚えておいてください。それでは、次回新しいトピックを考えていきましょうね。また次回までさようなら。 本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 弁護人席を越え、裁判官席の横についている関係者専用のドアを開け、裁判官の専用室(チャンバー)に入っていく。目の前には裁判官が法服を脱ぎ、自分の椅子に座り、机を挟んで検察官が何件もの起訴状が入ったファイルを抱えて談笑している。入ってきた私に裁判官は笑顔で座るように指示し、司法取引がはじまる・・・。 という感じで、アメリカで刑事事件を受任すると司法取引がはじまります。日本では考えられない制度かもしれませんが、アメリカの連邦や州の刑事裁判では日常茶飯事に行われている刑事事件上の手続です。アメリカの刑事裁判は、ほとんどの場合、初回のArraignment(第一回公判)で無罪を被告人は主張します。無罪を主張すると、次の期日が設定され、裁判官、検事、弁護人を交えてどのように裁判を進行させるかを話し合います。この会議が実質的には司法取引と呼ばれています。どのような内容の刑罰で事件を終了させるか取引するのです。 司法取引ではいろいろな経験があります。ドメスティックバイオレンス事件の司法取引の場面、夫が妻に対して物を投げたり、首を絞めたりして、傷害罪・監禁罪・証人威迫罪などで起訴されている事件です。裁判官専用室に入ると、裁判官は検事あがりの女性、検事も女性、事件の調査をしている保護監察局の調査官も女性。軽い冗談を言っても、誰も笑わないし、皆さん口が「へ」の字になっています。私が一生懸命情状酌量に訴えようとしても、何も返事が返ってきません。ちょっとの間をおいて、裁判官が「この被告人は刑務所に入った方が良い矯正になると思う」と言い出す始末。私を除いて部屋の皆さん同意している感じです。「初犯だし、会社勤めもしているし、家族もいるのですから、実刑が適当というのはちょっと通常の事例から逸脱していると思います」と私が言っても、「通常の事例より逸脱しているじゃないですか」と怖い顔で返されてしまいます。「取引の内容としては、全部の罪を認めるなら考えてもよい」と検事が言い出す始末。 結局機転をきかせて、司法取引を続行することにして、次回はうまく男の検事があたる曜日を設定しました。結局、司法取引は成功しましたが、冷や汗をかきました。 ある遠方での刑事事件を受任したときは、一回は私の体調が悪く運転ができなく、もう一回は裁判所の期日指定ミスで司法取引に行けなかった時があります。二回とも裁判官に謝りの手紙を書いておきました。もっとも二回目は私の責任ではなかったのですけどね。三回目に裁判所にいくと、裁判官が私の事件を法廷で呼びました。二回も期日が合わなかったので、怒られるかな、と思いきや、このように謝りの手紙を出すということを他の弁護士も見習いなさいと、誉められた上に、私の文章まで読まれてしまいました。ちょっと恥ずかしかったですが、その後の司法取引は、私の考えていた最低の刑で司法取引が成立しました。というより、裁判官が検事を説得してくれたのですけど。 このように、司法取引といっても人間の関係から成り立っていますから、法理論だけでは解決できない部分があります。もちろん、個人的に裁判官や検事を知っている、友達であるというだけではだめで、誠意を持って事件に取り組んでいるかということがもろに出てしまう場面かと思います。 なぜ、司法取引なんかをするのか、と思われますが、弁護側からいうと、いくつもの罪で起訴されている被告人が陪審裁判に負けると、実刑もついてしまうという場合、最低の刑で有罪という取引を行い、罰金などの軽い刑で終わらせられるというメリットがあります。一方、検察側としても、陪審裁判となれば、事件数を多く抱えていますから、準備も大変だし、負ければ昇進にも響きます。この結果がわからない陪審裁判という不確定な要素が、司法取引という文化をつくりあげているのです。 |
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