本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 交通事故の事件を受任すると、弁護士としては事件を一生懸命やり最大限の結果を得ることが業務の内容となります。損害賠償事件では損害額を算定し、慰謝料とともに回復するのが役目ですが、当事者の感じた心の痛みの回復をそのままできるということはなかなか難しいものがあります。私は個人的にはどちらかというと人に対して、理解しようと思うあまり全力を尽くしてしまう方なので、一人になると疲れたりする事もあります。しかし、人の悩みを聞くのが私の商売なので、どんなときにも前向きでがんばることを忘れないようにしようと思っています。自分のやっていることを信じていないとだめなのですね。 交通事故のケースを扱う場合、大きくわけて(1)人損、たとえばけがとか後遺症の問題、それから(2)物損、車が壊れた場合などの問題にわけられます。通常、弁護士が介入して事件を進行させるのは、(1)の人損問題に限られます。人損問題に関しては、治療代に加えて、事故から生じた体の痛みや苦しんだことに関して、慰謝料が支払われるからなのです。弁護士が介入して、この人損に関する算定をするのです。また、この慰謝料を含め、人損に関しては相手の保険会社もなかなか頑強に交渉してくる場合がありますから、法律論で相手をしていかないとなかなか事が運ばない場合が多いのです。(2)の物損の問題に関しては、たとえば車の修理の問題でも、過失の割合に応じて、車の修理代が支払われ終了してしまいます。もちろん、過失の割合などの交渉については、弁護士がやらなくてはいけませんが、物損に関して支払われるのは、実際の価額だけで、慰謝料というのは基本的にもらうことができません。どんな新車でも心を込めて維持している車でも、慰謝料というものを受けることができないのです。法律上、基本的には物を壊された場合、その物の修理額などに限られます。車のコンディションが以前と違うなんていう場合でも、多くの場合、全く元の状態に戻すということはなかなか難しいのです。これが法律で引かれた線なのですね。ところが、愛車を壊されたとなると、非常に感情を害される場合が実は多いわけで、私なんかも気分が落ち込んでしまったことなどもあります。クライアントの方なども、納得できないと私に気持ちをぶつけられる場合も多々ありますが、法律論ですから、私も諦めてくださいと最後に言うしかないのですね。こういった場合、私がクライアントのお話しを聞くことで、気分が和らげば良いな、といつも思うのです。 交通事故などのケースでは、往々にして相手方が「申し訳ない」という表現や素振りをしていなかったことに感情を害される方々もいらっしゃいますが、この点にしても、アメリカ社会では一般的に、事故のときには、「謝ってはいけない」。謝ればそのことが非を認めてしまうという考え方が一般的だから仕方がない部分というのもあるのですね。最近、カリフォルニア州の法律も改正されましたが、基本的に陳謝は過失を認めたと考えられる場合が多いのです。この点は文化的に日本とアメリカでは違うところだな、と実感させられます。その違いを説明して納得していただくということを私はするように努めていますが、なかなか異文化を理解するのは難しいのでしょうね。 交通事故というのは小さくても、大きくても、突然災害が起こったような状況になるので、個人にとっては非常に迷惑な話です。相手方に頭を悩まされるということもあるでしょう。弁護士を使ってなんとかしたい、と思っても、ご自身の心の傷は癒えないかもしれません。弁護士はその手助けはできるかもしれませんが、実際の心の持ちようは一人一人にかかっているのです。私はその気持ちを理解できるように毎日がんばるしかないですね。 私も数年前、どうしたものか一年に3度ほど事故に遭いました。すべて私に過失はないと認定された一般に言う「もらい事故」でした。一回は、私の秘書と裁判所から帰る途中に、同じ裁判所からでてきた弁護士に止まっているところを後ろからぶつけられました。次に、夜遅く事務所から帰る途中にお尻を掠る程度に信号無視の車に当てられました。これは当て逃げでした。3回目は自宅に帰宅途中、これまた一時停止無視をしてきた車に当てられ更にこの車、逃げてしまいました。この時は、私もどうしようかと思いましたが、目撃していた車が助けてくれて、追いかけました。一旦、この当て逃げ車は停止したのですが、また隙をみて遁走しました。警察に電話をしても、危ないから追跡をやめなさいというだけで、何もしてくれません。ナンバープレートの番号もきっちりおさえていたのですが、持ち主は車を売っただけで何も知らず、保険にも入っていなくて結局自分の保険で修理した記憶があります。ずいぶん悔しい思いをしましたが、まあ大した体の痛みも無かったですから、忙しく仕事をして忘れることにしましたけど。まあ、人生こういう時もあるのですね。まあ、人生は楽しい方がいいですから、辛いことはできるだけ心に残さない心構えが大切なんでしょうね。 Comments are closed.
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November 2024
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