本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 前回からLimited Liability Company、有限責任会社について考えはじめました。前回は、主にどのようなメリットがあるのかということを考えましたが、今回はどのように有限責任会社が運営されていくのか、前回に引き続き考えていきましょう。前回は株式会社である株主の代わりにメンバー(社員)と呼ばれる人達が有限責任会社では存在することを考えて紙面がなくなりました。 このメンバーは株主と同じように、有限責任のみを負います。すなわち、会社に対して投資した額を上限として、会社や第三者に対して責任を負うことになります。 では運営について考えていきましょう。 基本的には会社と同じように、マネージャーという運営・経営者を設定して、そのマネージャーがメンバーを代表して運営するという形にできます。また、メンバーが全員で運営することも可能です。特に、少人数のメンバー制であれば有効かもしれません。多数決などで経営を決めていくのですね。 もし、なにか責任が生ずるような問題があれば、運営している人が責任を負います。マネージャー制ではマネージャーが責任を負います。メンバーによって運営されている場合には、メンバーが責任を負います。 この場合、メンバーが責任を負うという理由は、ただ出資したからという訳ではなく、会社の運営をしていたからという理由で、決して有限責任の原則が崩されている訳ではありません。二つ違う責任の所在があるわけです。マネージャー制を利用する場合、通常のメンバーは運営に関しては投票権は予定されていません。マネージャー(複数可)が会社の運営に関しては投票して進めていく形になります。 有限責任会社のメンバーシップを譲渡したい場合などもあるかもしれません。この場合、株式会社とほぼ同じように扱われます。たとえば会社の定款で会社のメンバーシップを譲渡することについては、他のメンバーの一致した承諾が必要というように設定することもできます。少人数でLLCを運営するにあたっては非常に大事な定款条項ですが、株式会社でも有限責任会社でも有効に機能します。 有限責任会社を運営するにあたり、毎年の書類の作成などは、株式会社とほぼ同じです。すなわち、会社の役員構成に関する書類、メンバー総会を開いたという議事録などです。有限責任会社だからといって特別な書類が要求されるということはまずありません。 ではメンバーは誰がなれるのか考えましょう。有限責任会社は州によって異なる法律で規律されていますが、一般的に株式会社と違う点があります。株式会社では投資者を募り、一般の株主とは違う優待をする優先株式というものが存在します。つまり、簡単に言えば、会社の運営に口出しをして欲しくないが、投資をすることにより株を取得して、株式公開された場合には、何倍にもなってかえってくるから投資をしてください、という命題のもと発行されている株です。この優先株式というのは、会社の運営に関する投票権がなかったり、取締役を選出する権利が制限されていたりします。 このような優先株式というのは有限責任会社では基本的に発行することができません。 つまり、パートナーシップの色が濃い団体だからなのですね。 以上の運営に関することは、初期のメンバーもしくは、仮のマネージャーなどが決定して、書面にしなくてはなりません。基本的に各州で有限責任会社を設立した場合、州政府に登録する書類等が法律で定められています。通常、Articiles of Organizationという書類を州政府に登録しなくてはなりませんが、この書類は株式会社で言うArticle of Incorporationという書類と同じようなものです。この書類は非常に基本的な項目、たとえば会社名、住所、メンバー制かマネージャー制かなどを登録します。 しかし、日本で言う「法人登記」のように、細かく各メンバーやマネージャーが誰になるかを書いたりする必要はなく、日本で法人登記に慣れ親しまれている方はちょっとびっくりするのではないでしょうか。また、日本の登記システムのように絶対的記載事項に関しては非常に緩やかな設定がされていますので、このアメリカにおける登録書類を「登記」と呼ぶにはいささか問題があります。そこで、基本定款などと呼んで区別をしています。 州に登録する基本定款の他に、有限責任会社内での規則、つまり会社の憲法のようなものをつくらなくてはなりません。たとえば、メンバーとなる方法やマネージャーの選任方法、銀行口座の開設、各マネージャーの責任範囲、総会の開催などの条項が含まれます。株式会社でいうところのBy-Lawsですが、有限責任会社ではOperating Agreementと呼ばれています。日本語に訳すと、By-LawsとOperating Agreementは付随定款という言葉が最適だと思います。すなわち、上述して基本定款は州に提出しなくてはいけないですが、付随定款は州への提出義務は無いものの、会社の根幹をなす条項が多く含まれていますので、日本で言う定款の役割となんら変わりがないからです。会社の憲法と考えてください。 以上の二つの書類が根本的に必要な書類ですが、そのほかに、会社設立時の議事録なども必要になってきます。 有限責任会社が解散する場合はちょっと株式会社と違ってきます。上述した定款ではっきり定められていない限り、一人のメンバーが有限責任会社を抜けたいと思った場合、会社は財産を整理して解散しなくてはなりません。これはパートナーシップの要素を非常に強く持っているからなのです。このように一人のメンバーが抜け、会社の解散を防ぐためには付随定款に、メンバーが抜けたり死亡した時には他のメンバーが買い取るという条項を追加したりします。 以上が、有限責任会社の運営にかんするまとめですが、基本的には運営方法は株式会社と非常に近いものがあるにもかかわらず、パートナーシップという面がちらほら見られるということがおわかりになったのではないでしょうか。 前回考えたように税金面では通常の株式会社よりも優遇されますので、時に小規模なビジネスをお考えの方はぜひ利用されると良いと思います。 Comments are closed.
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