本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== 今回は、国際ビジネスの契約上非常に大切な条項とその実務について考えていきたいと思います。 契約書における裁判管轄権(Jurisdiction)と法律の選択(Choice of Law)に関して考えましょう。二国間以上のビジネスにおいて契約書を作成する場合、問題が発生した場合、どの国のどの裁判所で紛争の解決をし、どの国の法律を適用しようかという論点が発生します。例えば、日本とアメリカの企業が契約を締結しようとするとき、できれば自国の法律を使い自国の裁判所で紛争は解決したいということを駆け引きする場合です。もちろん、自分のホームで闘う方がアウェイで闘うよりも心理的・経済的にも有利に働くと考えるのが普通です。ところが、この論点の駆け引きがヒートアップしてしまうと、実際の契約内容とは直接関係ない部分で物別れになってしまう可能性があり、あまり建設的ではありません。 一休さんではありませんが、裁判管轄権と法律の選択の問題を解決するために、いろいろな形でクリエーティブな解決策があります。もちろん、大事な契約書に関して、最悪の事態、つまり訴訟になったときの経験がある弁護士に相談する必要がありますが、企業としても、ある程度のチョイスを用意しておくと、交渉がスムーズにいくことがあります。基本的に以下のポイントを参考にしてください。 まず、裁判管轄権や法律の選択に関する条項のみを見ないで、実際どのような契約の内容なのかを大きな目で見ることが必要です。ものの売買契約、供給契約などでは、契約におけるどちらの当事者がより危険を負担にする事になるのかを考える必要があります。例えば、ものを買う側の当事者としては、ものを受け取りどのようなものかどうかを確認し、瑕疵(カシ)や債務不履行がなかったことを確かめてから代金を支払うという契約であれば、裁判を起こしてまで相手方の債務不履行を争うというシチュエーションにはなり難いわけです。そのような場合には、相手方に裁判管轄権や法律の選択条項を譲ったとしても危険を負担する可能性は非常に低い訳です。 次に、アメリカの裁判所を第一審としての裁判管轄として契約上指定したとしても、法律の選択が第三国、例えば日本などの法律を適用するなどとした場合には、見た目には、当事者間で五分五分のようにも見えます。ところが実際の法廷係争になったときに非常に時間もコストもかかる可能性があります。アメリカの裁判所で、日本の法律を適用しようとする場合には、州の裁判所では陪審裁判を前提とすると非常に難しい場合があり、説得力を欠く場合があります。そういう意味では、実質的に統一した方が両当事者にとって有利という場合がたくさんあります。 第三に、裁判の管轄を決めるということに関してですが、ゼロ・サムという硬直な形で紛争解決を図ることは両者にとって不利益をもたらす可能性があります。契約書というのはいろいろな形で条項を決める事ができますから。まず、陪審裁判は除外するという形で、契約を締結することができます。いかんせん、一般の陪審員にとって契約書の条項の解釈を行うというのは実際的ではありませんし、陪審による裁判の結果というのは往々にして、不安定な場合があるからです。 次に、契約によって生じた損害とその他の場合(不法行為)によって生じた損害を分けて、それぞれの紛争解決方法を指定するという方法もあります。 また、裁判で解決する位であれば、仲裁に持っていくという方法もだいぶポピュラーになってきました。私が最近相手方と詰めた事例では、テレビ会議を開きながら、日本とアメリカでリアルタイムで仲裁をしようという方法も取り入れ、法律の選択も、インコターム(INCOTERM)などの国際通商に関する中立的な手続を使うという形で仲裁を行おうという試みもありました。また、アメリカや日本でまず仲裁をし、不服ならば他の形での解決策をするという二段、三段にもなる方法を指定するということもフレキシブルで良いと思います。また、仲裁をすることにより、裁判で闘うよりも将来の関係がぎくしゃくしなくてよかったという話もよく聞きます。 以上が、非常に基本的になりましたが紛争解決をするにあたり、考えておきたいポイントです。企業の法務部が裁判管轄や法律の選択ということで交渉を行う場合には、大きな目で契約の内容を考えて、さらにフレキシブルな解決方法を詰めていくというのが良い関係を築く第一歩なのでしょうね。 それではまた来月新しいトピックを考えていきましょう。 Comments are closed.
|
MSLGMSLGのニュース等をアップデートしていきます。メールマガジンへの登録は、ホームからお願いします。 アーカイブ
November 2024
|
All Rights are Reserved, 2000-2022, Marshall Suzuki Law Group, P.C. All Photos were taken by Takashi Sugimoto Privacy Policy English Privacy Policy Japanese |