本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆したコラム等のアーカイブです。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
==== もうだいぶ前になりますが、犬の飼育場にかんする事件を扱ったことがありました。日本に輸出する犬をしばらくアメリカ側管理しているビジネスがあったのですが、犬が怪我をしたり、病気にかかったりして、日本側で引き取り手がいなくなってしまったのですね。そんな事件にかかわっていたのです。詳しいことは書きませんが、事件はこじれて、日本側では引き取らない、そしてアメリカ側では引き取ってもらわなくては困るということで、押し合いへし合いになりました。 また、時間が経つにつれ、両当事者とも「いらない」という態度をあらわにしてきました。何度も交渉を続けましたが決裂、ミーティングも平行線になりっぱなしです。 日本側の主張は、いったん病気や怪我をしてしまうと「商品価値」がないというのですね。私は勝手にそんなに深刻な病気や怪我だと最初は勘違いしていました。 事件の進行にあわせて、その問題の焦点となっている犬を見に行くことになり、出張をしました。その飼育場にはたくさんの犬がいました。私や他の弁護士が入っていくと、警戒したのか「わんわん」の大合唱です。アメリカだから「バウワウ」でしょうか。しっぽをふっているやつもいれば、じっと見ているやつもいます。一通り、日本側の「引き取りたくない」という立証のための飼育場の衛生面や設備などを観察しました。 びっくりしたのは、思っていたほど汚くないし、逆に管理に重大な過失があったとは一見しては見えなかったことです。もちろん口には出しませんが、目にとまる点をじっくり検分しました。 次は問題となっている犬を観察しました。ところが、すべての犬は元気なんですねぇ。大きいのも小さいのもしっぽをふって人なつっこく振る舞っています。怪我をした犬というのも元気に走り回っていました。病気で毛が抜けたという犬もほとんど治っているようです。「証拠」であるし「商品」であるからと触らせてはもらえませんでしたが、遊べるものならすぐにでも遊んであげたい犬ばかりでした。 出張から帰ってきて、記録を整理していると、どうみても犬の「商品価値」というものは、病気もなし、怪我もなしというまったくパーフェクトな状態でないと劇的に下がってしまうという記述を見つけました。私はそれを見て考え込んでしまいました。 犬の「価値」って何なんだろうって。なんでも、コンテストなどに参加するには「厳しい」基準があるんだそうです。人なつっこいだけではダメなんですね。「犬の世界」というのは厳しくて、例えば一回ドッグフードの宣伝に出ると何年間かは他の広告の対象にはなれないなどというルールもあるのです。これでは「人間の欲の世界」ですよね。裁判の記録を読めば読むほど気が滅入ってきてしまいました。検分してきた犬たちのことが頭から離れなくなってしまったのですね。人間が犬を「商品」として扱うために、人間の欲のために、裁判をしているのです。考え込んでしまいました。犬にとってはいい迷惑ですよね。 私は動物が一般的に好きなのですが、特に犬が大好きです。私の家では私が生まれたときから、雑種のゴローちゃんというのがいて、私が赤ちゃんの時に突然病気になったらしいのですがゴローちゃんは家の人に吠えて知らせてくれたそうです。私が良く覚えているのは、シロちゃんという秋田犬のことです。私が小学生の頃からもらわれてきて、家の庭でよく走り回っていました。毎日、朝晩は私が散歩に連れて行き、近かった多摩川の河原で時間を忘れて遊んだものです。いつも一緒にいました。そのシロちゃんが私の家が引っ越すのを境にもらわれていきました。最後にもらわれていく朝、私がドッグフードをいつものようにあげると、おいしそうに食べましたが、悲しそうな顔をしていました。車の後部に載せらたシロちゃんは、見送る私の顔をじっと見ていました。以後、シロちゃんとは会っていませんが、もう他界したのではないでしょうか。 今でも夢でシロちゃんがよく出てきます。一緒に遊んでいたり、ご飯をねだっていたり。シロちゃんがいなくなった時を境に、私はもう犬を飼えなくなってしまいました。お別れをするのがあまりにも辛すぎます。あんな思いをするのはもうだめだと思います。年をとって、私の方が先に死ぬくらいになったら、また飼いたいと思っています。 話を戻して・・・そんなバックグラウンドがあるため、この事件に対して私は自分がなぜか「冷めている」部分があるなと思いました。結局は「お金で」片づきましたが、事件が当事者間で解決しても、なんとなく私の心にはしこりが残っていました。人間たちは満足していたみたいだけど、犬たちはどうなっちゃったんだろう・・・。しばらく経って、その飼育場に人を介して連絡してもらいました。話ではなんとか飼い主が決まったようで、安心したのを覚えています。あの人なつっこい犬たちが今でも幸せに暮らしているといいな、なんて思い出します。 Comments are closed.
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