米国法において(少なくともカリフォルニア州法によると)、Recitalは契約法上、法的な効力を認められている。Recitalには特に法的な効力はないという無責任な解説も散見されるが、それは間違いである。したがって、Recitalの内容については、署名する前に十分に確認および吟味しなければならない。
Recitalのなかに、いつくかの事実を述べたセンテンスが包含されるのが米国における契約書の実務としては一般的だが、この各センテンスの前にWhereasと記載されることがある。契約書に限らず法的な文書、格式張った公的な文書には、このWhereasからはじまるセンテンスが多くある。 Whereasは一般的な使用法では比較をするときに出てくる。「東京は雨である「が」大阪は晴れていた」という文章の「が」に相当する使い方である。しかし、現在、米国の法律文書において、Whereasをこの「が」という意味で使うことはない。結論からいうと、Whereasを法律文書において訳す場合は、「ここに[事実関係]であることを確認する。」としておけば良い。 ところで、Whereasのこの用法は、米国でも法律文書以外には出てこない特殊なものであり、日本語に直訳することはできない。したがって、Whereasが現在使われている状況を把握しなければならない。 まず、現在、米国で法廷活動をしていて、たとえば口頭において、和解内容を両当事者が裁判所の面前で陳述したとしよう。このような場合、まずWhereasという言葉は使わない(サンフランシスコ州裁判官として執務している筆者の一人も、Whereasを裁判所内の和解内容として記載したことがない)。裁判所においては、すでに意思も確認できる場が用意され当事者も揃っているので、形式張らないでも、裁判官の合いの手とともに、内容さえ確認すれば良い。そうすると、わざわざ書面においてWhereasを使うことには、法廷に不在であっても、書面において、事実関係を「確認する」という意味合いがある。 次に、現在では、法律文書におけるWhereasには一定期間「継続している(していた)事実関係」を確認するという意味合いがある。離婚の調書などでは、Whereasと書かれていれば、夫婦関係についての変遷が記載されていることもわかるし、株主総会、取締役会決議などでも多用されるが、審議された事実関係の内容がわかる。そして、そもそも事実関係を記載する趣旨は、それが契約内容の一部を構成している以上、事実関係に間違いがないかを「確認する」ためということになろう。 上記から考えると、現状において、Whereasという単語が出てきた場合には、「ここに(この契約書、または書面において)[事実関係]を確認する。」と訳すことが妥当といえる。 そして、繰り返しとなるが、契約書のRecitalsに書かれている確認事項(Whereas)については、一定の法的拘束力が認められている点に留意が必要である(詳細はRecitalsの項参照)。 Comments are closed.
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November 2024
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