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【小説シリーズ】陪審喚問の時(The Grand Jury)

4/1/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆した小説です。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
毎週概ね月曜日に、20回に分けて配信します。今回は第10回目です。

=====================



第10章 休日 (Recess)
 
 この土曜日は、昼頃まで寝てしまいました。なんか雲に乗っているような夢を見ていて、ほんわか寝ていました。起きると、またもや真治君は勉強していました。リビングのソファに座り何か読み物をしていました。弁護士よりよく読んでいますね、頭が下がります。私は、ぼさぼさの頭を掻きながら真治君に昼飯は何か食べたのかと聞きました。「え、何も食べてませんよ。先生が起きるのを待ってたんです。」
「それじゃあ、何か外にブランチでも食べに行こうか。」
「賛成、賛成。」
「それにしても、よく勉強してるなあ。」
「今は、勉強で気がまぎれるし。」
「何食べたい?」
「何でもいいけど、すごくお腹が減ってます。たくさん食べたいな。」
「よっしゃ、それじゃ行こう。」
「どこ行くんですか。」
「着いてからのお楽しみ、ってところかな。」
 二人で、さっさと着替えて、車を走らせゴールデンゲートブリッジを渡りました。そのゴールデンゲートブリッジを渡ったところにあるサウサリートという街に着きました。もう霧も引いて天気もよくなり、観光客が多いサウサリートは人でごった返していました。真治君は久しぶりに事件から離れてドライブをして、また、街を離れて楽しそうでした。駐車場からレストランがあるホテルまで店を見ながらだらだら歩きました。観光客用に鮮やかなポスターや絵葉書を売っているお店や何か怪しげな彫刻を怪しげな値段で売っている店を覗き見したりしながら、真治君と私は忙しい街から少し離れて、小高い丘の上にあるレストランに入りました。入り口のホストが席に案内してくれました。
「すごい。海だ。」
 このレストランは、丘の上にあるために海が一望できるのです。天気がよければアルカトラズ島や遠くに見えるベイブリッジもくっきりと見えます。気分転換をするには最高の場所なのです。真治君を海に向かって座らせ、私も海の方をしばらく見ていました。
 席に座ってちょっとすると顔見知りのウエイターが頼みもしないのにシャドネーの白ワインを二杯持ってきました。
「はい、ビル。元気そうだね。」
「忙しいですか?」
「うん。事件もひっきりなしに入ってくるしね。肉体労働してるよ。あ、この子まだ未成年だからお酒はまだだめだわ。何か、他のもの飲む?」
「そしたら、アイスティーでももらおうかな。」
二人で乾杯をしました。
「ここはね、昼はビュッフェ形式になっているんだよ。だから、お皿を持って好きなもの取ってきな。お腹いっぱい食べても、怒られないからね。」
「そりゃすごいや。」
海では白いマストを張ったヨットが何台も行き来しています。真治君はお皿いっぱい食べ物を持ってきました。カニやエビ、それにパテから野菜からもうなんでもありという感じです。彼の食欲はたくましいものになってきました。
「すごいとってきたね、食べきれるかい。」
「はい、お腹が減ってますから。それにしても本当にきれいですね、ここ。こんなところもあるんですね。」
「僕も気分転換にはこのピュッフェを食べに来るんだよ。素敵なところだろ。」
「本当は僕じゃなくて彼女と来たいんじゃないですか。そういえば、先生彼女いないんですか。」
「たくさんいるよ、でも時間がないから会えないだけさ。うるさいよ、早く食べろって。」
二人でもうこれ以上食べられないというところまで食べ、レストランを後にしました。休みの日でなければできないので、真治君と二人で街をぶらぶらしました。サウサリートには、たくさんのおしゃれなお店があります。もっとも私とはあまり縁がありませんが。それでも、真治君は楽しそうでした。
「この辺ね、お父さんとよく来たんだ。だから、すごくなつかしい。」
「そうなんだ。」
「お父さんは本当はサウサリートに家が欲しかったみたい。」
「きれいなところだもんね。」
「また来られてよかった。食事もおいしかったし。」
真治君と私は歩きつかれて車に戻りました。
「あ~あ、疲れちゃったね、真治君。君が運転できたらしてもらうんだけどな。」
「でも、もう16歳だし、取ろうと思え取れるんですよね。でも保護者がいないからな…。」
「それじゃぁ、今から運転練習しに行こうか?」
「えっ」
「ゴールデンゲートパークのはずれにいけば大丈夫さ。」
真治君はとてもうれしそうでした。私が運転しているのを目を凝らしてじっと見ています。さっき通ったゴールデンゲートブリッジをもう一度渡り、サンフランシスコ市内に戻ります。橋は結構混んでいましたが、晴れた空に真っ赤な橋が映えてきれいです。市内に入ると、海に沿って車を走らせます。海際の空き地で私のボルボを停めました。車のエンジンを切り、真治君を運転席に座らせます。私も助手席に座ったところで真治君に声をかけます。
「まず、自分がアクセルとブレーキを踏みやすい位置にシートを合わせてごらん。それから、バックミラーを見やすい位置に設定するんだ。」
見守っていると、結構器用に合わせます。
「よし、キーをイグニッションに差し込むんだ、そうそう。そして時計回りにキーをひねってごらん。」
ボルボのエンジンはうなりを上げて始動しました。真治君は感嘆しました。
簡単に車の運転の仕方を教えると、真治君に発進するように伝えました。まだ慣れていないので、がっくんがっくん走り出しました。次第に真治君はスムーズに運転できるようになりました。なかなか止める気配もないほど熱中しています。
「もうそろそろ帰ろうか。」
「あ、はい。」 
ブレーキを踏んで、席を再度交代した後、私は家に戻るために車を東に走らせました。
「車の運転って案外簡単なんですね。」
「そりゃね。簡単にしなきゃ大変だよな。特にこんな車社会ではね。」
「でも、気を緩めると大変だからね。」
「今度、一件落着したら免許取りたいな。」
「おぉ、そうしなよ。協力するからさ。」
「免許が取れたら、まず先生をドライブに招待しなくっちゃ。」
「どうしようかなぁ、こわいなぁ… ははは。」
今日はのんびり過ごし、真治君もだいぶリフレッシュできたようです。真治君と外で事件にかかわらないことで笑いあったのは久しぶりです。その夜はぐっすり寝ることができました。
 
日曜日は朝から真治君と私は黒いスーツを身につけました。昨日とは一転して真治君の顔は暗く、私も澄みきった空とは対象に心は沈んでいました。真治君のお父さんのお葬式です。言葉少なに真治君は私の車に乗り込みました。私もあまり語らずに車を走らせます。サンフランシスコ市内にあるフュネラル・ホーム(葬儀場)の駐車場に車を停めて私はスーツを正しました。真治君は車から降りようとせず、シートに座ったままでした。
「真治君、さあ、行こう。」
「僕…行きたくない。」
私は助手席側にまわり、ドアを開け、すわっっている真治君の肩をつかみました。
「真治君、行こう。お父さんが待っている。」
「…。」
「誰よりも君に会いたいんだよ。」
唇を噛んだ真治君の肩を抱きながら葬儀場に向かいます。葬儀場は人でごった返していました。私は真治君を守るように葬儀場の一番前の席まで進みます。もう話すことのない真治君のお父さんが入っている箱から一番近いところに真治君を座らせ、私は後ろの方の席に引き下がります。
「淳平…。」
ジムが声をかけてきました。
「ジム、来てくれてありがとう。」
「真治はどうだい。」
「うん、だいぶ落ち着いてきたみたいだけど、まだいろいろ難題が山積みだ。」
「何かできることがあったら言ってくれ。」
「本当にありがとう。」
私は周囲を見まわしました。真治君のお父さんの葬式には多くの弔問客が来てくれました。いらないことにメディアもカメラを引きずって、日本からも報道陣が来ているようです。幸いにメディアの人は葬儀場には入れないようです。
「ジム、今日、ジャック・ロビンスの親族が来ているかわかるか?」
ジムはきょろきょろしていましたが、肩をすくめて、
「わからないな」とつぶやきます。
その時、私の肩を後ろから軽くたたかれました。マックブライドです。
「これはこれは、マックブライド捜査官。」
私は振り返り、少しばかり笑顔を見せました。
「小山弁護士、ご苦労様です。」
「今日はわざわざ。まさか捜査ではないですよね。」
「事件とは別です。」
「ありがとう。」
私たちは簡単な挨拶をして、握手を交わしました。
式がはじまりました。日本に比べて、式の進行も明るく、真治君のお父さんの新しい旅立ちには悪くありませんでした。葬式を通して、もう誰も頼る人はいないと悟った真治君はずいぶん立派に振舞いました。日本で言うと喪主ですよね。挨拶も淡々と述べていました。
式場の後ろの方に立っていた私は感心して彼の一部始終を見ていました。ゴシップも式場の所々で聞きましたが、何も問題は発生せず、式は無事に終わりました。
一日がかりの行事を済ませた真治君を乗せて言葉少なに車を運転して家に帰ります。私も疲れました。真治君は無言で書斎に引きこもりました。しばらくして彼の号泣が胸を打ちました。


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