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【小説シリーズ】陪審喚問の時(The Grand Jury)

3/11/2019

 
本記事は、本ブログ作成前(2000年代)にMSLGのメンバーが執筆した小説です。現時点の法律や制度を前提にしたものではありませんので、ご留意下さい。
毎週概ね月曜日に、20回に分けて配信します。今回は第7回目です。

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第7章 証拠 (Evidence)
 
いやはやブリトーに満足した私は、銀行の駐車場から車を出しました。何気なくバックミラーを見ると、さっき私の車の後から入ってきたクライスラーの車がついて来ます。白人の男二人組です。こんなに午後早く二人組の男というのもなんだね、と思いつつ車を、ファイブ・スター・パーキングがあるサンフランシスコの郊外、サンマテオに走らせました。
フリーウェイ(高速道路)に入ろうとしたとき、必ず二台か3台の車を挟んで、さっきサンフランシスコの町で気づいた銀色のクライスラー・スリーMがついて来るのを見て、尾行だと確信しました。このままでは、また近いうちに頭を殴られてしまうかもしれません。私は、減速し、サンフランシスコの野球場があるあたりのランプでフリーウェイを下りました。どうしようかなと考えて、目に付いたマクドナルドのドラブスルーに入りました。銀色の尾行していたスリーMは躊躇したようですが、私がドライブスルーに入るのを見届けて、その出口付近で、待っている様子でした。さっきブリトー食べたばかりなのにそんなに食べるわけないじゃないですかね。私はドライブスルー出口で私が出てくるのを待っている尾行者を尻目に、後続車が来ていないドライブスルーを思いっきりバックして遁走しました。再度フリーウェイに入り、一番左側の高速車線をスピード制限である65マイルを大きく超えて、突っ走りました。とはいうものの、私の車では100マイル出すのが精一杯です。しばらく高速走行しても銀のスリーMが見えないので、やっと一息つきました。
しばらく走行してサンフランシスコ空港に近くなりました。方向音痴の私は勘のみでランプを選び、フリーウェイを下りました。どこにしようかな、という勘は司法試験の時の択一試験で養われたものといってよいでしょう。広大なファイブ・スター・パーキングは、当たり前ですが、空港の近くにありました。空港に行く人たちのためにあるのですね。入り口から入ろうとすると、中国系の係の人が、まるで広東語を聞いているようなアクセントの英語で、何日くらい停めるのだということを聞いてきました。「停めるわけじゃなくてね、」というと顔をしかめましたが、「お金を払いにきた」というと顔をほころばせました。単純でよろしい。請求書を見せて、決して安くないデポジットを払うと、車を見に行きました。ところがこれまた一大事で、大きな駐車場でどのベンツを探せばいいのやら。請求書にはライセンスプレートの番号が書いてありましたから、延々と数字遭わせゲームをしていました。
20分ほどさまようと、薄く埃をかぶった福本ベンツを見つけました。モデルチェンジ前のオムライスの型のような大きな黒いベンツです。周囲を見まわした私は、ドア付近にも他と同じ位の埃が積もっているのを確認し、ポケットに入れておいた鍵を差し込みました。まだ誰も手をつけていないようです。ドアを開けた瞬間、けたたましいサイレンが鳴り響きました。車の盗難防止用のサイレンです。私は早送りのフィルムのように動きながら方々ストップボタンを探しましたが、結局鍵にボタンがついているのを発見しました。灯台下暗し。その鍵についているベンツのマークを押すと、盗難防止用のサイレンは鳴り止みました。
ちょっとの間、誰も何も言ってこないことを確かめてから、車のあらゆるところを何か証拠はないかと探しました。結構こういうのってどきどきします。お宝は助手席のシートとオートマチックのギアボックスの間に挟まっていました。後輪駆動のベンツはトランスミッションのコンソールがばかでかいため、運転席から、助手席側のシートとギヤボックスの隙間が見えず死角になるのです。そこに手帳型のコンピュータはささっていました。
お宝のパーム・パイロットを手に入れると、元通りに施錠し、ボルボに戻りました。ごっくり息を飲み込み、パーム・パイロットのカバーを開けてみます。あれ、ガラスが割れています。スイッチを入れてみるのですが、液晶が非常に見えにくくさっぱり読めません。スイッチを何回も入れたり切ったりしましたが、液晶が傷ついているためか内容がまったく読めません。多分、助手席とギヤボックスのコンソールの間に落ちたときに、圧迫されて傷ついてしまったのでしょう。カバーも革でふにゃふにゃですしね。しばらくテクノロジーを独り言で罵倒していましたが、あきらめました。それでも、このパーム・パイロットの中に、大事な情報が入っているのです。なんとかしなければ。
気を取り直して、パーキングを後にしました。車内で千穂さんから釘をさされていので、カニングハム弁護士に電話を入れましたが、あいにく留守電に拾われました。簡単なメッセージを残しました。車を走らせていましたが、とにかく早急にパームを修理しなくてはならないを感じます。JgodとVgodのことを早く知りたいのです。ちょうど空港の近くにコンピュUSAという大型のコンピュータ屋さんがあるのを思い出しました。フリーウェイを下りたあたりで尾行車がいないかどうか確かめるため、いろいろな方向に曲がったり、住宅地を通ったりしてコンピュUSAにたどり着きました。尾行車はいないようです。
コンピュータ・ショップの店内は非常に明るいです。様々なコンピュータ機器が店内に陳列されていますし、ソフトウェアも豊富に並べられています。店の左奥の方に「Repair Center(修理センター)」と書かれた看板が掲示されているところがありました。私は他に興味があるものがたくさんあるにもかかわらず、欲を振り切って修理センターに行きました。
受付に誰もいないので少々の時間待たされると、ちょっと太り気味の若いアジア人系の男の子が現れました。このショップの従業員全員が着ている制服の赤いチョッキを着ています。
「May I help you?(何をしてさしあげましょうか?)」
「えっとね、パームパイロットを修理してもらえますかね。」
私は持っていたパームをカウンターに置きました。
「こちらでご購入の品ですね?」
彼はそのパームを見ながら私に尋ねました。私はちょっとひるみました。
「えっと、去年のクリスマスにプレゼントでもらったものだから…。多分ここで買ったと思うんだけどね、ははは。」
「そうですか…。」
いやはや、White Lie(ホワイト・ライ:善意でついた嘘)なので許してください。
「とにかく、お金は払うから早急に修理して欲しいんだよね。」
「えっと、ちょっとお待ちください。」
また待たされました。彼が帰ってきて、どんなに早くても1週間はかかることを教えてくれました。文句を言っても仕方がない。修理をしてもらわないと困りますから、お願いすることにしました。所定の用紙に記入して、係の人はパームの状態を紙に書いていきます。
「ひどいですね、画面が割れているじゃないですか。どうしたんですか。」
「いや、ちょっとね、落としちゃったんだ。」
「保証期間内なら新しいものとすぐに取り替えますが。保証書をお持ちですか。」
「いや、持ってないです。」
「それは、残念だ。」
「とにかく修理を頼みます。」
「修理の進行状況はこの電話番号にかけてくれればわかりますから。」
そう言って彼は修理の伝票に書いてある電話番号をボールペンで丸で囲いました。
私はその伝票を財布の中にしまい、もう事務所に行くのが億劫になったので家に戻ることにしました。あたりはもう夕日が差しています。空にはサンフランシスコ空港に着陸する飛行機が旋回して下りてきます。
 
自宅に帰ると、真治君は居間で宿題をしていました。私はパームについては真治君に黙っていることに決めました。
「お、がんばってるね。」
「おかえりなさい。」
「早かったんですね。」 まだ午後6時です。
「いやはや、疲れたよ。学校どうだった。」
「はい、先生も心配してくれて、友達も元気付けてくれました。」
「裁判のことは言ってないだろ。」
「別に言っていません。」
「言う必要はないからね。次回の出廷は明後日だから、その日は休みを取ってもらわなくちゃならないけどね。」
「はい」といった真治君の表情が少し沈みました。
「事件のことは僕が何とかするから、とにかく勉強、勉強。」 
私は話題を懸命に事件から遠ざけようと努力しました。それを察した真治君はまたペンを走らせはじめました。
私はスーツを脱ぐと、ベットに横になり、今日の尾行のことを考えていました。天井を見ながら、一体誰なんだろう、と考えます。私を襲った暴漢と同一人物では…、この事件に関して私を狙い始めたのか…、などと憶測をしていますが、答えは出ません。答えが出なければ徒労ですから、次にしなくてはいけないことを考えました。
とにかくどのような組織であるにせよ、真治君を落とし入れようとしている感じがします。真治君の起訴が取下げられたり無罪になってしまえばFBIにしてもほかの容疑者を探して帳尻を合わせようとするでしょう。FBIはいまだに捜査続行中だと言いますが、そのことを額面通りに受け取れませんね。結局、真治君を起訴取下げ扱いにしないで事件を進めているのですから、FBIでさえも私の考えている背後組織というものがいまいち掴めていないのでしょう。ただ、あれだけ大量のヘロインが福本家から見つかったことは尋常ではありません。とにかく麻薬にかかわっている組織について解明することが、真治君の潔白を晴らすことだと思いました。そのためにはあのパームの修理を待たなくてはいけないようです。お腹がすきました。ベットから起きてリビングに足を運びます。
「真治君、何食べたい?」
「なんでもいいけど…。」
「何でもいいっていうのがいちばん困るんだよなぁ。それじゃ、餃子にしようか。」
ということで、私が作って冷凍しておいた餃子に決定しました。煙がすごかったですが、私の焼き具合は悪くありませんでした。
「すごい、おいしいですね。」
真治君はパクパク食べています。
「そうでしょ。」
「料理できるんですね、先生。」
「君くらいのときはお金がなかったから、どんなバイトでもしていたからね。中華料理屋でもやっていたのさ。」
食事を終えて、後片付けを終えて、真治君はシャワーに入りました。私はソファにどかっと座り、テレビをつけました。ちょうどニュースの時間だったようで、ローカルなニュースを放映していました。しばらくボッと見ていると、空港での爆発騒ぎについて言及しています。焼け跡がテレビに映し出されていましたが、爆発は相当な火薬の量を伴っていた様子で、カルーセルの一部のメタル部分がめくれあがるようになっている姿が見えます。床も一部抉り取られています。死者の中にはメキシコの要人も含まれていました。爆発現場から麻薬が発見されたこと、その麻薬が福本氏のスーツケースから発見されたことが報道されています。ただ、どのような背後関係があるかはFBIの調査中だということです。画面が変わって、爆発で死んだ遺族がレポーターにコメントしています。事故に巻き込まれたことを呪い、いかに不運であったかを印象付け、犯人を一刻も早く見つけて欲しいと懇願して泣き崩れていました。私はテレビを消しました。この爆発騒ぎのツケが真治君に向けられるのだけは避けなくてはいけない。それが私の弁護士としての使命だとひしひしと感じました。シャワーの音が止まり、しばらくすると真治君がバスタオルで頭を拭きながらでてきました。
「先生、僕、眠いから先に失礼します。」
「おー、よく寝るんだよ。明日も学校がんばれよ。」
「おやすみなさい。」
「おやすみ。」
私も両手を挙げて、大きなあくびをしました。いやはや、この何日かは車で移動しっぱなしです。車で移動していると知らないところで疲れが溜まるものです。まだ10時くらいですが、私も寝てしまおうとまずシャワーをあびました。熱いシャワーが心地よい。
シャワーからでて寝る段階になって、公道に面したカーテンを閉めようと思い窓際に来ると、銀色のクライスラー・スリーMがちょっと離れたところに停まっています。内部の電気は消えているため、よく見えません。今日尾行してきた車と同一車種です。
「家まで見張られているのかな…」と思いつつ、床に入りました。泥のように寝ることができました。

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