訳例:有効期間延長条項
契約書を締結する際には、通常その契約自体の有効期限が設定されているが、その他にも、契約に定める期間が過ぎても、効力を延長したい条項がある場合がある。一回限りの動産売買などの単純な契約であれば、敢えて、特定の条項を延長する必要性が高くない場合が多いが、例えば、表明保証、免責、支払、適用法令、裁判管轄、または、秘密保持などに関する条項は、主たる契約内容が実現した後(もしくは失敗が確定した後)も、効力を延長する必要性が高い場合が多い。このことから、Survival Clauseによって、それらの有効期限を明記する必要性が出てくる。 一見するとこれらの条項の継続性は自明に思えるため、Survival Clauseというのは、契約書のドラフトでなんとなく入れる慣習的なものと誤解されがちである。しかし、実際には、以下に述べる通り、この条項の解釈を巡って紛争となる場合がある。適用法令をよく理解して各契約に則した記載としなければならない。筆者は、契約書をレビューする際、Survival Clauseを見るとドラフトをした人の力量がある程度把握できるとすら思っている。 例えば、Survival Clauseというのは、訴訟法上(または実体法上)の出訴期間(statute of limitation)(日本の時効と似ているが、同じではない。)と密接に関わっている。さて、カリフォルニア州上、書面契約上の債権の出訴期限は4年である(Cal. Code Civ. Proc. §337)。契約書上に「表明保証の期間は契約の履行が終わったときから1年」という条項があったとき、出訴期間との関係はどうなるであろうか。 このような条項が問題となったWestern Filter Corp. v. Argan, Inc事件では、一方当事者は、表明保証の違反について、1年の期間内に相手方当事者に通知はしたものの、裁判は提起していなかった。そこで、相手方は、Survival Clauseは出訴期間を短縮するものであり、1年の間に訴訟が提起されていない本件では、訴訟を提起できないとして争った。これに対して、裁判所は、契約書のSurvival Clauseが出訴期間に言及していないため、Survival Clauseの期間は出訴期間を示しておらず、表明保証違反の事実がは1年以内に発生すれば、請求は認められるとした(Western Filter Corp. v. Argan, Inc. (9th Cir. 2008) 540 F.3d 947.)。この裁判例から読み取れるように、Survival Clauseをドラフトするときには、出訴期間等の関連法令も検討することが望ましく、もし出訴期間の制限も意図するのであれば、Survival Clauseにその旨を明記しなければならない。 Comments are closed.
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