訳例:契約当事者の法的関係
契約当事者は、三者以上いる場合もあるので、「Parties」を機械的に「両当事者」と訳すのは賢明ではない。また、「Relationship」については、あくまでも法的な関係を明らかにするのが契約書であるので、単に「関係」とだけ訳すよりも「法的関係」と訳すほうが望ましい。 さて、なぜこのような条項があるのかというと、大きく分けて、法的関係が明確でないと(1)裁判において予定外の特別法の適用があり得るから、(2)課税当局による予定外の課税があり得るからである。 (1)について、よく問題となるのが労働法である。日本でも同様だが、アメリカでも、いわゆる労働紛争において、当事者の関係が、独立した請負関係であるのか、雇用関係であるのかという点が争われることが多い。一般に、労働法の適用がある雇用関係の方が雇われる側が守られている。そのため、紛争になると、雇われる側は「雇用」だと言い、雇った側は「請負」だと主張する。そのような疑義を防ぐため、企業間契約では、予め「雇用ではない」ことを明記しておくことが望ましい。ただし、カリフォルニア州では、いわゆるギグ・エコノミー(例:Uber、Lyft等の配車サービス)の発展に伴い企業が請負契約を濫用としているのではないかと懸念が高まっていることを背景に、雇用契約をより広く認める今般の裁判所の判断基準(テスト)を法定し、個人に対する請負契約を制限する方向の法案(Assem. Bill 5, 2019–20 Reg. Sess.)が先日州議会を通過したことに注意が必要である。 同様に、相手方に、自社の業務の一部を担わせたり、ブランド名を使用させる場合、業務内容によっては、表見代理、無権代理などの問題も生じるリスクがある。本条項は、代理権の授与は一切ないことを明確にする趣旨でも設けられる。 このように、アメリカでは、将来疑義が生じないように、当事者間の関係や代理権の有無について、予め明確に契約書に盛り込んでおくことが一般的になっているのである。 (2)については、課税当局(特にアメリカ内国歳入庁)の立場から見て、契約当事者にどのような関係があるかが、課税の際に重要となる場合がある。その場合、契約書の当事者の法的関係の規定が参考にされることがある。契約書の文面を弄れば実態に反して課税を逃れられるというものではないが、不用意な文言を用いた場合に課税当局に課税の口実とされる恐れはある。したがって、確認的な規定であるとはいえ、文面を練って盛り込まなければならない。なお、どのような文言が適切かは、各国(州)の課税当局ごとに判断が別れる可能性がある。課税当局は契約当事者ではないので、準拠法条項や裁判管轄条項に縛られることもない。事前に適用法令を把握をしておく必要があるとともに、大規模案件であれば関係各国の税務専門家の助言を得ることが望ましい。 Comments are closed.
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