「Recitals」と検索エンジンを引くと、間違った解説がかなりあったので、どのように訳すかを含め、すっきり整理しておきたい。法律家とはいえ、よくリサーチをせずに一般的なセンスで考えると間違っている良い例である。
米国で使用する契約書(英文契約書)には(主に最初のページに)Recitalsと書かれたセクションが頻出する。 1 Recitalsというのは、「Re」と「Cit(e)」という2つの音節(音節についてはまた別稿で)が入っていることからも明らかなように当事者が関係する「過去から今まで(契約締結時まで)のこと」を書いている。それだけである。色々難しいことを解説しているが、実務家にとっては、Recitalsというのは、過去から今までのこと、今現在進行しているビジネスの関係を将来まで取り決めるのが契約本文であることを覚えておけば良い。したがって、契約本文に過去のことは入れない、Recitalsには将来のことは入れない、というのが決まりになり、ルールとしてはこれを覚えておけば十分である。 2 Recitalsについて、上記1が実務家としてシンプルに抑えておけば良いポイントであることから、実質的Recitalsの訳とすれば「この契約に至る経緯」とするのが最良である。「まえがき」など決して訳してはいけない。一体なにの「まえ」なのかまったくわからず正確性が担保されない。他の訳し方も、実務では表現としては不足である。中途半端な訳をするなら、リサイタルと英語で書くほうがまだ良いかもしれない。 3 Recitalsは、あたかも法的効力がないような解説をするウェブサイトや書物も多くあるが、とんでもない間違いである。米国実務経験の乏しい法律家は、Recitalsは「一般的なまえがき」なので、法的効力はなく、(法的効力を持たせたければ)契約本文に組み込まなければならない、と平気で書いているが、明らかにカリフォルニア州では弁護過誤になる内容である。 まず、カリフォルニア州証拠法622条には、「契約書のRecitalsに規定された事実は約因を除き、真実であるとみなす(要約)」と規定されている。法的効力があるのだ。また、契約書の文言に疑義が生じた場合、Recitalsを解釈の基礎とすることができる(カリフォルニア州民法1068条)と規定されている。このように条文によって解釈の基礎とできると規定されているので、裁判において、Recitalsは事実審において証拠となり得るのである。 4 以上のとおり、米国では(少なくともカリフォルニア州の条文上は)Recitalsは(約因を除く)事実を真実とみなす効果を持つので、慎重に記述しなければならず、また、契約本文の解釈に疑義がある場合には、Recitalsは解釈の基礎となりうるため、Recitalsと本文に連続性がある書き方を心がけなければならない。 Comments are closed.
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