訳例:弁護士費用
弁護士費用(attorney fees)と訴訟費用(Litigation costs)は別物である。弁護士費用は弁護士の実働の対価であり、訴訟費用は、訴訟を遂行するに費やした実費と考えておけば良い。 なぜ、契約書には、弁護士費用の負担についての記載があるのか。弁護士費用は、弁護士に委任した本人が支払うのが原則である。当たり前のことだ。しかし、絶対ではない。例えば、交通事故や製造物責任のようなケースでは、条文上、不法行為者の損害賠償責任が認められると、弁護士費用についても勝訴した者が得られる(賠償される)と規定されている場合がある。また、契約当事者は契約書によって意思を予め合致させることができるから、そこで原則を修正することもできる。かくして、契約書に、弁護士費用の条項が設けられ、誰が負担するか(通常は敗訴者負担)等が規定される。 敗訴者負担というのは、契約した内容につき紛争となった場合、勝訴者(Prevailing Party)が支出した弁護士費用を敗訴者から回収できるというものである。(1)一方では、安易に裁判を提起することに対する歯止めになり、(2)他方では、正当な権利が害されていても、裁判をすることを躊躇させる場合がある。したがって、敗訴者負担の良し悪しについては現在もなお議論がある。 問題は、いかなる場合にPrevailing Partyとなるか、である。100億円請求して、1円買った場合は勝訴者と言えるのか? 金銭以外のものが訴訟の対象となった場合はどうか? 一般的には、額の多少にかかわらず、正味を検討して、勝訴者とするが、適用される条文や判例を確認しなければならないところである。カリフォルニアの場合、カリフォルニア州民法1717条が適用されるが、同条で規定されたPrevailing Partyの定義と矛盾する契約はできない点に留意が必要である。また、カリフォルニアでは、弁護士費用の負担を一方当事者の利益のためだけに設定することも原則として認められない(同条)。したがって、弁護士費用負担の条項を入れる場合、原則、双方向ということになる。加えて、請求額が25000ドルを超えていたにも関わらず、判決でそれ以下しか認容されなかった場合には、裁判所の裁量で(弁護士費用等を回収できる)勝訴者と認定してもらえない場合があることにも注意が必要である。 では、実際に、この敗訴者負担条項が使われる段階になるケースというのは多いのか、というと、ほぼ稀ということになる。ほとんどの民事訴訟、とくにお金だけが絡むケースでは、和解に至る。そうすると、敗訴者負担条項は、働かない。したがって、ADRが広く使われる現代では、弁護士費用についてよりも、調停、仲裁についての条項の交渉により力を入れるのが妥当であろう。 Comments are closed.
|
MSLGMSLGのニュース等をアップデートしていきます。メールマガジンへの登録は、ホームからお願いします。 アーカイブ
November 2024
|
All Rights are Reserved, 2000-2022, Marshall Suzuki Law Group, P.C. All Photos were taken by Takashi Sugimoto Privacy Policy English Privacy Policy Japanese |