訳例:「権利の譲渡(または移転)」、場合によっては、「契約上の受益に関する地位の譲渡(または移転)」
契約書や法律文書で「Assignment」という単語がでてきた場合に、機械的に「譲渡」と訳しているように見える訳文も散見されるが、それは危ない。もしかすると、「譲渡の禁止」と書かれている条項が多いので、「禁止条項」だから内容をあまり深く考えないでも問題ないと思われているのかもしれないが、このような思考停止は危険である。 Assignmentを訳すにあたっては、その対象を明確にしておく必要がある。実際、Assignmentに関して訴訟になる場合、「何が」譲渡されたのか、移転されたのか、という点が争われることもある(特に、銀行などを代理する場合に、少なくない)。 (1)まず、Assignmentで移転するもののは、通常、権利である。(2)そして、(1)の権利については、物そのものではなく、金銭またはその他の動産を法的手続を経て回復する権利が対象とされることが一般的である(Merchants Service Co. v. Small Claims Court, 35 Cal. 2d 109, 113-114 (Cal. 1950))。(3)さらに、移転する権利は将来の債権であってはならず、現時点で権利として確定できるものに限るという性質がある(ただし、確定していない将来の債権であっても、債権の発生とその後の譲渡を約束したものと扱われ、契約責任の問題に発展する可能性は残るため、注意が必要である)。 基本的には、権利だけを移転する場合をAssignmentと呼び、これは、契約当事者が変わるNovation(契約上の地位の移転)とは区別される。Novationにおいては、義務までも移転するというところが代表的な違いである。したがって、Assignmentを「権利義務の移転」と訳してはいけない。あくまでも、権利、あるいは、契約上生じた受益に関する地位の譲渡(または移転)と訳したほうが良い。 実務において、Assignmentに関する条項は、禁止条項であれ、一部許容条項であれ、契約当事者間のみならず、税法上も問題になり得るし、M&Aなどの場面でも問題となり得る。したがって、Assignmentの対象が何であるかを契約締結時に特定し、また、それが実質的に法律に沿っているのか(実効性があるのか)を確認しておく必要がある。 Comments are closed.
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November 2024
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