私が、今回の起訴で注目しているのは、34つの罪での起訴であること、そして、大陪審による起訴であることです。州の刑事事件では一般論ですが、重罪(Felony)の起訴は、検察が起訴状で起訴する方法と大陪審による方法を選択的に利用できます。重罪と言っても、単に重い罪ではなく、法定刑が一年以上と定められている刑のことを言います。軽罪(Misdemeanor)というのは、最高の法定刑が1年までの罪をいいます。今回の起訴も単に法定刑が1年以上の罪で起訴されたというだけであって、重大な罪という意味ではありません。
今回の起訴ですが、起訴状によらずに、わざわざ手間をかけて大陪審を使ったということに検察の意図があります。検察の内部で話し合い、州では通常起訴を決める検事がいます。その検事が起訴を決めれば、起訴状を書き裁判所に提出すると刑事事件となります。この起訴状による方が、検察にとっては手間が内部で留められるわけですし、簡便なのです。しかし、今回は大陪審を利用しました。大陪審というのは、一般の人が20名程度集められ、検事から事情を場合によっては何日も聞きます。一方的に検察側から話を聞いて起訴を決めるので、ある意味起訴されてしまうのはお約束とアメリカでは言われています。一般の人から構成される大陪審を集め、事件を説明して起訴を決めるわけですから、手間も時間もかかります。実際のところ連邦の刑事裁判では、大陪審による起訴が一般的ですが、州では起訴状によることが多いです。私も、自ら手掛ける事件をみると、州の刑事事件はほぼ、起訴状によるものがほとんどです。なぜ、検事局がわざわざ今回大陪審を使ったのかというと理由があります。一応、一方的とはいえ、検事だけではなく、一般の人たちの判断を経ているわけですから大陪審による起訴は、客観的なフィルターを通っているわけです。裁判所としても、大陪審による起訴の方が、フィルターを通していますから、簡単には起訴を問題にはしない傾向にあります。ニューヨーク州では、大陪審による起訴の場合、統計をみると無罪は1%、公訴棄却やダイバージョン(有罪を認めるかわりに代替の労務や定められた義務を履行する)になる確率は9%となっています。そうすると、大陪審を利用して起訴された場合には9割有罪になるわけです。このようなバックグラウンドがあるので、今回ニューヨーク州の検事は、起訴状で起訴せずにわざわざ、大陪審を経て、有罪を確実に取っていこうと思っているのです。刑事法廷を知っている弁護士であれば、大陪審を使っている意味をかなり深刻に受け止めるのです。 (これより先は、メールマガジンに登録された方のみお読みいただけます。) Comments are closed.
|
MSLGMSLGのニュース等をアップデートしていきます。メールマガジンへの登録は、ホームからお願いします。 カテゴリ
All
アーカイブ
October 2024
|
All Rights are Reserved, 2000-2022, Marshall Suzuki Law Group, P.C. All Photos were taken by Takashi Sugimoto Privacy Policy English Privacy Policy Japanese |