最近、連邦労働局はカリフォルニア州のIT系会社がH-1Bの平均賃金の規則に違反に関し、その会社に対し$48,193支払うよう命令しました。H-1Bではその地域の該当する職の平均賃金またはそれ以上の額をH-1Bの従業員に支払うよう定められています。このIT系会社はこの従業員に平均賃金を下回る額を支給しており、本来支給すべき額との差額を支払うよう命令されたものです。これは連邦労働局の労働賃金部局が調査し発覚したものです。
訳例:裁判管轄
Jurisdictionは契約書締結時に議論の対象となることが多い条項の1つである。まず、アメリカにおいて「Jurisdiction」という用語は、多義的であるが概ね「法によって司法制度が造られ、裁判所が設置され、そして、その裁判所が具体的な事件に対して権限を行使できること」を意味している。日本の「事物管轄」と「対人管轄」をあわせたような概念であるが、契約書で問題となるのは基本的にpersonal jurisdiction≒対人管轄である。それと関連し、しばしば混同される法律用語として「Venue」がある。「Venue」は「各裁判所の土地管轄がどこまで及ぶか」という地理的な話である。Venueについては、当事者の申し立てで変更が可能な場合もある。日本でも類似の制度として「合意管轄」や「同意による移送」がある。 アメリカ合衆国の中に各州があるため、どの州の裁判所とするかは土地管轄の問題であると誤解するかもしれない。しかし、どの州の裁判所に裁判を行う権限があるかは「Jurisdiction」の問題である。その州の中のどの裁判所で裁判をするかが「Venue」の問題である。 例えば、ある事件をカリフォルニア州の裁判所(カリフォルニア州政府の設置する裁判所)とネバダ州の裁判所(ネバダ州政府の設置する裁判所)のいずれかが管轄するかがJurisdictionの問題である。そして、カリフォルニア州が設置する裁判所がJurisdictionを持つ事件について、サンフランシスコの裁判所(即ちカリフォルニア州政府が設置するサンフランシスコに所在する裁判所)とロサンゼルスの裁判所(即ちカリフォルニア州政府が設置するロサンゼルスに所在する裁判所)のいずれに係属させるのか、というのがVenueの問題である。 なお、アメリカでは州の裁判所と連邦の裁判所との間も異なるJurisdictionとされているので、両者を混同しないよう注意する必要がある。 さて、Jurisdictionの条項を契約書に入れるときには、気をつけて吟味しないと、紛争になったときにその条項の内容を争われる可能性がある。規定の内容は様々だが、裁判管轄の場所及び対象となる紛争の設定を厳格に行わないと、契約書に記載された裁判所だけではなく、選択的に他の裁判所でも裁判ができると判断される可能性がある。 まずは、場所の設定だが、「Exclusive」という単語がキーワードになろう。排他的な裁判管轄の設定を意味する言葉であり、この単語をいれておくことで限定的な設定ができる。そして、カリフォルニア州のように広い州の場合には、単にカリフォルニア州(State of California)の裁判所とだけ指定するのではなく、Venueとして州より下位の区分である郡(county)も指定しておいた方が、実務的には便利である(ただし、当事者がvenueを決定することはできないとする裁判例もある点に注意。Alexander v. Superior Court (2003) 114 Cal.App.4th 723 .参照)。もちろん、複数の選択的な指定も可能であるが、その場合には、さらに慎重に文言を吟味する必要がある。実際に裁判管轄の場所の設定が専属的なのか選択的なのかで紛争が生じ、訴訟になっている例がいくつもある。 次に、裁判管轄の対象となる紛争を明記しておく必要がある。通常は「契約書に記載されている契約関係から生じる一切の紛争」といった書き方をするが、英語では「Arising out of」などという単語を使う必要がある。また、単に契約当事者から発生した紛争、という規定ではなく、当該契約から直接的・間接的に生じるすべての紛争をカバーするといった規定の方がより疑義が無く、望ましい。もちろん契約書の性質や、当事者がどの程度絡み合っているのかにもよるが、どの紛争を対象にして裁判管轄を設定するのか、吟味しなくてはならない。 なお、準拠法等との関係にも注意する必要があることは、本契約解説の「Governing Laws/Applicable Laws」でも述べた通りである。また、準拠法と同じく、理由なく自国での裁判に拘るのではなく、どの裁判所による裁判が最も本件契約から生じる紛争解決に適するかという観点からJurisdictionとVenueを選択する必要がある。 訳例:言語
書面による契約の内容について、基本的には、相手方に対して積極的に説明する義務は当事者にない(Brookwood v. Bank of America (1996) 45 Cal.App.4th 1667, 1674参照)。そして署名後「契約の内容がわからなかった、読んでいなかった」という抗弁は成り立たない (Randas v. YMCA of Metropolitan Los Angeles (1993) 17 Cal.App.4th 158, 163参照)。 したがって、契約の内容は予め理解しておかなければならない。そして理解すべき人は、原則的に署名をした人ということになる。言語によっては当事者の理解がおろそかになる場合もあろうが、契約書に署名をすれば、後日言語が違ったことは抗弁にできない。 現実問題として国際社会では英語がスタンダード化しているので、日米の企業が日本語で契約交渉を進める例は少なく、英語による場合が多い。活発な国際取引を背景に、契約で使用する言語についても、契約書で定める場合が多い。多くの場合、契約書の元文書は英語によって書かれて、他言語で書かれた契約書については、参照するのみで実質的な効力を持たない、という条項がある。両当事者が署名をして契約は成立するのであるから、通常は、英語の契約書と日本語の契約書が存在すれば、どちらか一方に署名をするはずであり、言語についての前記条項はいわば注意規定的な役割を負っている。より重要なのは、契約書以外に他の文書をもって契約を解釈することを禁止する条項および適用法令の条項である。 なお、American Community Survey(日本の国勢調査に相当)によると、カリフォルニア州では、英語を上手に話すことができない者が家庭で使用する言語のトップ5は、スペイン語、中国語、タガログ語、ベトナム語及び韓国語である。そこで、これらの言語で主に交渉される取引や事業を行う者は、一定の契約書については、相手方に対し、契約書を当該言語に翻訳したものを交付しなければならないこととされている(カルフォルニア民法1632)。 移民局は最近、H-1Bビザの申請書の提出先住所について変更があることを発表しました。
2019年10月1日以降、H-1Bビザの申請書を移民局指定の住所に送らなかった場合は、申請受付を拒否される可能性があるので、申請者は注意が必要です。 訳例:知的財産権
知的財産権のうち、特許は連邦政府が管轄しているが、著作権、商標など、連邦の登録が用意されているものでも、実際は州法上も権利が生じる場合がある。したがって、アメリカ関連の契約書のドラフトにおいては、連邦のみならず州の法律にも気を払わなければならない。 従業員が作成した著作物の著作権については、Work-for-Hireである場合には雇用主が原著作者となり、雇用主に権利が原始的に(最初から)帰属するが、そうでない場合は、作成者である従業員が原著作者になり、雇用主は従業員に帰属する著作権を後から譲り受ける(またはライセンスを受ける)必要が生じる。したがって、会社のために契約書をドラフトする立場にいるのであれば、知的財産権の条項は欠かせないし、著作権については、可能な限り、Work-for-Hireであること(及びその範囲)を明確に示す文言を含むようにすべきであろう。このことは、雇用契約書だけではなく、あらゆる契約書についてもいえることである。 なお、カリフォルニア州法上、従業員が雇用主に対して、発明に係る権利を譲渡する旨の規定は、その従業員が、雇用主の備品・物資・施設・企業秘密情報を使用せずに完全に自分の時間で開発した発明については、原則として適用されない点に留意が必要である。(カリフォルニア州労働法2870(a)) |
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