BZ JAPAN アメリカ生活ビジネス法基本講座 弁護士 鈴木淳司 02-23-03 もうこの原稿が印刷されることにはメジャーリーグが活発に報道されるころではないでしょうか。松井選手も加わり、日本人選手も増えて日本人にとっては見逃せないシーズンですね。私の家にはケーブルテレビがないので、映るチャンネルが限定されているので、見たいときにはバーなどに行かなくてはいけないので、今年はこの野球シーズンを契機にケーブル導入をしようかな、と考えています。でも、たくさんの人と見た方が楽しいということもありますよね。うむ、難しい問題です。皆さんはお元気ですか。
さて前回このコラムでは株式会社などの経営者が一般に言う「不正」を行って会社に損害を与えた場合には、個人的に責任を負うということを例を使って考えました。今回は、もう少し法律論が多くなってつまらないかもしれませんが、この経営者の責任というトピックを続けて考えていきたいと思います。
会社のお金を個人的な用途に使ってしまうとか、インサイダー取引をするなどといったいわゆる不正が明白にわかるケースもあります。これは前回考えました。 しかし、会社に対してどの程度まで、経営者が責任を負うのか微妙なケースも存在します。一所懸命仕事をしなくて会社の業績が悪化してしまう、などという場合もありえます。経営が悪化したからといってすぐに個人的に経営者の責任を問えるのか、というとそうでもありません。最近の不景気で皆さんも新聞などで業績不振などの活字をご覧になっているでしょうが、すなわち個人責任ということはあまりありません。経営者は常に株式会社の持ち主である株主に対して責任を負う可能性がありますが、どのような場合が考えられるのでしょうか?
日本の会社法等では、よく取締役の善管注意義務(会社法二五四条、民法六四四条他)とか忠実義務(会社法二五四ー三条他)というコンセプトが議論されます。あまり法的な論点まで突っ込んでここで書くことはできませんので、このコラムではこの善管注意義務と忠実義務とは、似たようなコンセプトで会社の利益を図るべき立場にいながら、任務に違反する行為と考えてください。ようするに、会社の経営者であれば、会社に対して忠実に仕事をして、できる限りのベストを尽くしなさいと規定されているのです。ですから、競業している同種の会社で働いたりすると問題が発生する可能性があるわけですね。会社の利益をまず念頭に置かなくてはいけないというのが経営者の役割であり義務なのです。
この日本法のコンセプトはアメリカでもほぼ同じ様に適用されます。しかし、アメリカは州毎に会社法が制定されていますので、各州によってどの程度の責任が取締役などの経営者に課せられるか違いがあります。カリフォルニア州などは取締役の責任というのは日本と同様なレベルで制定されているのですが、デラウェア州、それにネバダ州などでは、経営者の責任を最大限に免責するような形で法律が定められています。たとえば、ネバダ州では、会社の利益を鑑みて、取締役は職務を善意で遂行する、としか法律で定められていません。ということは、言葉を返せば「善意」であれば、取締役は責任を取らなくてもよいケースが多いですし、州によって取締役の責任には大きな違いがでてくる場合があります。上記のようにネバダ州では取締役にとって非常に有利な規定がありますから、忠実義務違反があった場合、カリフォルニア州では取締役は責任を負いますが、ネバダ州では責任を負わないのです。また、会社の利益に反する行為があった場合、カリフォルニア州では責任を問われますが、ネバダ州やデラウェア州では、取締役に責任は課せられません。
余談になりますが、アメリカでは「デラウェアやネバダ州で会社を設立するのが良い」という一般論があったりしますが、大きな会社はデラウェアに本拠地をおいて、取締役が責任を回避できるゾーンを広げるためにやっているのであって、新しく設立する会社で、取締役の責任というのが生じない場合や、逆に取締役を監視していたいなどという場合には、必要ないことかも知れないですね。州によっては会社を州に登録させることで州税を期待しているところも多く、規定にばらつきが生じるという現象が起きるのです。
以上、見てきたように経営者が故意に不正を働くというシナリオ以外はアメリカでは、州によって経営者の責任の程度に違いがでてくる訳です。会社の経営にかかわる経営者、それに会社の持ち主である株主などは、かならず自社を管轄する州の法律を理解され、どの程度まで経営者の責任が生じるのか知っておきたいところです。
それでは、次回新しいトピックを考えていきましょう。次回まで皆さんお元気で。