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■星、アリゾナにて ■ 「呑んでソウロウ」は法律のことはあまり書いていないのに評判は良いようで、ありがたいことです。 でも弁護士の「仕事」であるべきはずの「法律の解説」をせずに「飲み会の席で盛り上がっている」ようなことをしているのですから、弁護士の「あるべき姿」ではないかもしれません。 だからなんだって言われても、弁護士とはパーフェクトでなくてはならないというのは無理な話です、人間ですから。 でも、下品ではいけない、これも人間ですから。 生き方を持っていればそれは良いと思っています。 なんでこのようなはじまりで書きだしたかというと、俗にいう「医者の不養生」ということわざを、私が実践してしまったことを思い出してしまったからです。 今から考えれば笑い話ですが、私だって「うっかり」してしまうことがあるのです。 それは、刑事事件に絡んでアリゾナに出張しなくてはならなかったときのお話です。出張が決まったのは、その前日でいつものように、朝から晩まで、キリギリスを夢見ながらありのようにせっせと働いていました。 アリゾナ出張の飛行機は夜10時半くらいだったと思います。 一旦家に帰り、シャワーを浴び、次の日の9時の法廷に備えるべく再度スーツを着て空港に向かいました。 飛行機に乗ったとたんにグーグー寝てしまったことを覚えています。 目的地フェニックスに着いて、レンタカーを借りる段取りを事務所でつけてもらっていたので、レンタカー会社のシャトルバスに乗り、カウンターまでいきました。 カウンターの人としばらく交渉をしていたのですが、私の差し出した免許証をじっと見るなり、カウンターの人は黙ってしまいました。 「この免許証、期限切れていますよ」 「そんなことないはずなんだけどなぁ。」 私は、その免許証を見てみると、本当に期限が切れているのですね。 失態です。 早朝に行かなくてはならないのはフェニックスから100マイルは離れている場所ですから、レンタカーがなくては、どうすることもできないのです。 私は、保険も入れているし、何も文句は言われたことがないので、確かに更新はしたはずなんだけど、と主張はしてみたものの、アリゾナですからね、カリフォルニアではないので、チェックする手段もなくて、私は一人お通夜に参列した気分になってしまいました。 でも、お通夜と違うのは9時間後には、フェニックスの郊外で法廷に立たなくてはいけないということです。 告別式ではないのですね。 なんらかの方法で、その田舎町の刑務所がある場所にたどり着かなくてはなりません。 いや、帰りも無事に帰ってこなくてはなりません。 レンタカー会社の人は気の毒に思ってのでしょうか、フェニックスのダウンタウンまで乗せていってくれるとオファーしてくれたのですが、空港まで連れて行ってもらうように頼みました。 空港の方が夜中では、いろいろ方策が練れると思ったからです。 夏の夜中でした。 空港に再度着いて、どうしようかなぁ、と外の石でできたベンチに座り、星を眺めていました。 すごく綺麗なんですね。 帰りたいなぁとちょっと思ってしまいました。 それでも仕事ですから、なんとかしなければならない。 疲れていましたが、解決策を考え出すまでは「寝れない」と気合いをいれました。 ちょっとの間、星をみていましたが、予約していたホテルに向かうことに決めました。 作戦は(1)ホテルで送迎の人に聞いてみる(2)タクシーに頼んで刑務所・裁判所まで行ってもらう(3)ダウンタウンのバーで誰かに頼んでみる といったことを考えていました。 空港からタクシーに乗り、ホテルに向かいました。 そのタクシーの運ちゃんは、しきりに「俺が明日運転してやるよ」ということを言っていましたが、なんとなく嫌なやつだったので、断りましたが、非常に強引なやつで「行きだけでも乗せていってやるよ」とオファーしてくれました。「行きはいいけど、帰りはどうするんだよ」と言ったら、「大丈夫、その田舎町にもタクシー会社はあるから」と言ってくれました。 やっぱり、勘で「やめておこう」と思い、ホテルにチェックインしました。 その後、いろいろ考えたのですが、ホテルに聞くのがいちばんてっとり早いとおもって、フロントの暇そうな人たちと話をはじめました。 やっぱり私と似たようなもので良い案がでてこないのですね。 一番、若かったフロントの女の人が「ひらめいた」ようです。 ツアーバスを雇えば、待っててくれるし、時間にも正確だということに気づいてくれたのです。 名案ですね、私はその案に乗ることにしました。 値段もリーズナブルですし、裁判をやっている間も待っていてくれます。 次の朝、迎えに来てくれたのは、大きなセダンでした。運転手の人は私がスーツを着ているのを奇怪に思ったようです。 どこへ行くのかまず聞かれて、刑務所と私が答えたときはもっと奇妙な顔をしていました。 ツアー会社で働いていて、刑務所や裁判所に行くのははじめてだったそうです。 その刑務所がある田舎町にいってみてびっくり。 タクシー会社なんて絶対にないという感じの、月面のようになにもないところでした。 そこに刑務所と裁判所が隣接して建っているだけなのですね。事件はうまくいき、私のクライアントも保釈を許されて、でてくることができました。 しかし、その前の夜のタクシーの運転手の言うことを聞いて、行きだけ送ってもらったら、今頃死んでいたかもしれません。 空港で星をみながら、ちょっと心に余裕をおいたのがよかったかなと思っています。まあ、それにしても皆さんも出張などの時には免許証の有効期限には気をつけておいてくださいね。
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