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■悪徳弁護士■ みなさんお久しぶりです。 今回は、「悪徳弁護士」の思い出で一席。 弁護士という職業は何かつかみどころが無い職業ですから、皆さんにとっても噂などで判断するしか材料がないこともあるでしょうね。私だってどんな噂を流されているかわからないですが、自分の全力で事件にあたっているのですから、何を言われても別にしょうがないと思っています。 弁護士の仲間内で話していると、事実を知らないのにいろいろあらぬことをいう人がいるもんだな、と変に感心したりもします。 私は過去に「悪徳弁護士」呼ばわりされたことが二回あります。 一回は、弁護士になりたての頃、ある会社の労働問題に巻き込まれていましたが、その関係者と思われる人から名前を名乗らない電話がかかってきたときでした。 面と向かっていうことが出来ない人のたわごとです。 二つ目の「悪徳弁護士」呼ばわりは非常に思いでのある事件での出来事でした。 もう何年も前になりますが、私はある相続事件を担当していました。 全くといって良いほどアメリカでは身寄りのない日本人のお年寄りが遺言を残して、この世を去りました。 日本から親戚が駆けつけてくれました。 そのお年寄りの妹のA子さん、そして姪のB子さん、つまりそのお年寄りの弟さんの一人娘さんでした。 日本から到着してまだ間も無い時だったので、疲れが目立っていましたが、お二人ともせっせと残された品を片付けされていました。 私が行くと、日本語を話せるということでほっとされて、いろいろ今後のことについて暗く冷たくなった家の中で話し合ったことを覚えています。 私も代理人として事件を受任することにして、親戚の方に混ざって片付けに参加しました。 次の日になってやっと遺言が出てきました。 私の立会いのもと遺言を開くと、すべての財産をB子さんに相続させると書いてありました。 顔色が変わったのがA子さんです。「B子が全て受け取るのですか...。」 私は、表情を変えずに頷き、肯定しました。A子さんは「そんな、不合理な...。」とつぶやいていました。 私の仕事はこの遺言のおかげで相当簡単になりました。残された財産をまとめてB子さんに渡せば良いのです。 私は、B子さんに私がしなければならない仕事の内容と、B子さんの権利をわかってもらうために、なんとか二人になる時間と場所を見つけました。 B子さんはあまり貰える財産には興味が内容で、代わりに亡くなったお年寄りの話を随分してくれました。 B子さんの話からわかったことは、B子さんはマメにアメリカに来てお年寄りの面倒を見ていたこと、お年寄りとB子さんは相当関係が良く、たくさんの時間を一緒に過ごされていたようです。 お年寄りの調子が悪くなっても、B子さんがいろいろしてあげたのですね。 家の片づけを進めていくうちに私は、このお年寄りが受け取った私信を全て取ってあることに気付きました。 B子さんが若い頃からお年寄りに当てた手紙はすごい数になりました。 お年寄りは大事に何度も読み返していたのでしょう。A子さんや他の親戚が書いた手紙はあまり多くありませんでした。 しばらく、アメリカに滞在していたA子さんとB子さんでしたが、後を私に任せて、日本に帰ることになりました。 B子さんには、財産をまとめて裁判所の検認が済んだら、B子さんに全て財産が相続されることをはっきり伝えましたが、何度言っても歯切れが悪いのですね。 A子さんも私に何度もお礼を言って帰られました。 事件を進めていくうちに、お年寄りの近所の方とも仲良くなり、いろいろ話を聞くことが出来ました。 その中で、B子さんはよくお年寄りの面倒を見ると評判でしたが、A子さんは評判が悪く、ほとんどお年寄りには接触もしていなかったようです。 お年寄りが亡くなって日本から来たことさえびっくりしていたようです。 B子さんのことについても教えてもらいましたが、彼女は離婚をして、小さな美容院を経営しながら苦労して二人の子供を育てているということでした。 私はA子さんに対しても別に感情は無かったのですが、事件が終了する前に、私宛にA子さんから手紙が送られてきまして、A子さんに対する評価は変わりました。 私に何度もお礼を述べた後、故人の財産の分割を親戚のなかでどのようにして行なうのか詳細に記載されているのですね。 わたしはびっくりしてB子さんに連絡をしました。「一体どういうことですか?、財産はB子さんに行くんですよ?」B子さんは言葉を濁しながらも、もしB子さんが親戚と財産を分けなければ、親戚中から爪弾きにされてしまうということを漏らしました。 その後、相続も滞り無く終了し、B子さんをアメリカに呼びました。「子供さん達はいかがですか」と答えると、片親で仕事をしながら子供を育てる彼女は、にっこり笑いました。「お金は子供さんのためにも取っておいた方がいいのではないですか」という問いに、A子さんをはじめ、親戚中がB子さんにプレッシャーをかけているのが黙っているB子さんからよく感じ取れました。 「B子さん、やっぱり親戚の方々とわけてしまうのですか? 美容院を女手ひとつで経営するのはたいへんですよね。」 「それはそうなんですけど。」 「他の親戚の方は、家もあるし、一家円満じゃないですか。」 「それでも...。」 B子さんにとってもお金は必要ですし、相続の財産といっても分けるほど多くありません。 それでも、親戚の目というものはB子さんにとって無視は出来ない様子でした。 お年寄りにしたって親戚に分けてもらうために遺言をかいたわけじゃないですよね。 私は、B子さんに相続財産の大部分をアメリカに残しておくことを奨めました。 ためらっているB子さんでしたが、私は機転を聞かせて「確認書」みたいなものをつくってあげました。 それには、いろいろな経費がかかりで実際にB子さんが日本に持って帰るのは、相続財産の一部であるといった書類を作りました。 ウソではないですからね。 B子さんはお金をアメリカに残していくのですから。 B子さんがお金を本当にアメリカに残していったか定かではないですが、しばらくたって憤慨しているA子さんが私に電話を掛けてきました。 私の書いた確認書の「経費」やその他のあいまいな費用は何かと問いただしてきました。 私はA子さんの質問には答える必要はないので、的を得ない答えをしていました。 A子さんは、私がお金を使ったものだと勘違いしたらしく、「悪徳弁護士」と叫んで電話をガチャッと切りました。 わたしは電話を切ってにんまり笑っていました。 B子さんが子供達と幸せに暮らしていると良いのにな、と今でもふと思うことがあります。
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