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■出会い■

 みなさん、こんにちはお元気ですか。 私は出張で日本に行ったり、走り回っています。それにしても、時が経つのは早いですね。 もう年末が至近距離になってきました。私は今年はよく仕事をして、焦りというよりかは充実感の方が大きいですかね。 しかしなんだかんだ言っても、もうそろそろ年末に向けての調整をしなければいけない時期にきています。 働かれている方は決算関係がたいへんでしょうね。 また学生さんは期末試験に向けて勉強というところでしょうか。弁護士という職業も年末というと、裁判所との調整や、事件の解決には区切りが良いですから、にわかに忙しくなったりするのです。
 今回は、題名にもあるように「出会い」ということについて一席。 私の仕事は人間関係の調整ということが一番大きな内容ですから、いろいろな人との出会いがありますし、私にとっても人生で出会った人というのがひとつの大事な財産になっています。 もちろん出会いというのは時間的には一瞬のことですから、あまりロングランでは人生には影響は与えないかもしれません。 ところが、人と出会ってその人を知っていくと知らず知らずのうちに影響をどこかで受けて、どこかで人生が変わっているのかもしれません。 
 私が弁護士という職業をしているのも、今までにいろいろな人に出会え、いろいろな師に教えられてきたからだと思っています。 決して一人で今の自分がいるわけではないのですね。今でも仕事でつらいこともありますが、やはり周りにいる人に助けられていると実感します。人が一人で生きていけるという考えは10代ではありがちかもしれませんが、やはり中国の古い教えにあるように2本の枝が寄り添うようにできた漢字が「人」なのかもしれません。
 A君は日本では俗にいう「エリート」でした。 少なくとも大学受験までは。 有名高校をでたA君は日本で受験に失敗し、家族に対しても世間に対しても否定的になりました。部屋から出ずにひとりっきりになってしまいました。心も体も外の世界と切り離し自分一人でものごとを考え始めました。 親は困りあぐねて環境を変えればと思い、アメリカの学校に彼を送ったのです。 アメリカでの生活は楽ではありませんでした。 まず語学ができない、人間関係がうまくいかない。 それに社会から学校からなにもかも違う環境でA君は苦労しました。 だんだん活動的になってきたA君でしたが、心はまだ過去の失敗を引きずっていましたし、今まで親の元で味わった「甘え」がまだ残っていたようです。 それでもA君には友達もできはじめ、学校にも行き、普通に学生生活を送っていました。
 彼が私のところに相談に来たのはよくある「けんか」に巻き込まれた時でした。話を聞いていると、彼が一方的に悪いとは思えず、また内容もそれほどひどいものではありませんでした。 それよりもA君自身がなぜか暗いイメージを持った子だなぁと最初は思いました。 その反面すごく気を遣い心が優しい子だなと感じました。事件はさておいて「何かあるな」とは感じましたが、初対面ではなにもわかりません。 その後、事件も進行していきましたが、事件よりもその子の考え方それに将来ということがいつも私の念頭にありました。 きっかけができてくるとA君は私に心を開きだし、色々話してくれるようになりました。それでもなにか言わないことがあるような感じがしていました。 私は、もう弁護士の仕事の範囲を超えているかもしれませんが、じっくりつきあい、法律以外の事柄にも耳を傾けました。時間をかけるにつれて、A君がだんだん見えてきました。A君が育った環境、A君が歩んできた道、そしてA君の考え方など、私にも自分が若かった時のことと対比しながら理解をしていきました。不思議なもので、どんな事件でもクライアントのことを知っているとこちらの論理も説得力を増します。裁判官も耳を傾けてくれました。 私はA君が通ってきた人生の過程を説き、刑事事件も納得ができる形で無事に終了しました。
 A君を心配されて、日本からお母さんがいらっしゃいました。 私はA君のいないところで、無理をしいらない程度にA君の過去を聞くことができました。私が感じたのはA君とA君のお母さんは同じことを言っているのだけれども、みる角度が違うんですね。やはり親というと、親の立場。子供を一生懸命教育して育てていこうという立場もわかるのです。しかし、お母さんにも子供が何を考えているのかを理解してもらわなくてはなりません。私はお母さんに、A君が何を考えて感じているのかをできるだけ感情を除いて話しました。その後、お母さんは、A君と2人でじっくりと話をしてくれたようです。
 一段落ついてお母さんが日本に帰国されることになり私と会う時間を作ってくださいました。A君のお母さんと私はもちろんA君のことを話していました。
「お母さん、安心してください。 A君は私と初めて会ったときからは見違えるほど強くなり、しっかりしてきたと思います。」
「まだ、心配です、この先息子がどうなるか。」
「私がついていますから。何か相談事があったらいつでも電話をくれるようにいってありますよ・・・。」
 お母さんが、泣き始めてしまいました。
「先生、」
「はい。」
「息子が、もしもっと早く先生に出会えていたなら、こんな事件に巻き込まれなくてもすんでいたのにと申しておりました。 これからもどうぞ力になってあげてください。」
「もちろんです」というのがやっとでした。だんだん私に心を開いてくれたA君のことを思い浮かべながら、涙をこらえるのに必死でした。A君とのおつき合いは今でも続いています。

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