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■男の背中■ 何故か最近「び〜む」の刷り上った現物が私の事務所に届かなくなったので、私の原稿がどのように掲載されているのか見ていなかったのですが、この間久しぶりにマーケットに置いてあるのを見てみました。 内容もちょっと前とは変わったみたいですね。 私は電子メールで原稿を毎月書いているために、ちょっと逃すと、活字になったものを見ることができません。 自分で書いているのにおかしいですよね。それでも、ちゃんと読者の方はこの「呑んでソウロウ」を読んでくださっているようで本当に感謝しています。 これからもご愛顧のほどよろしくお願い致します。 この「び〜む」を読んでいる方々はほとんどの場合、日本からいらっしゃっている読者なのでしょう。 こちらには勉強しに来られたり、転勤で来られたりしているのでしょうね。 もちろん転勤されて来られたご家族なんかもたくさんいることでしょう。 自由気ままに生活できるアメリカ、特に服装なんかにも拘らないカリフォルニアですが、やはり仕事で来るとなるとそれなりの制約が課されます。 特にサラリーマンの方々にはお金を稼ぐというタスクと、家族を養うというタスクがありますから、責任感という意味では非常に大変なものが圧し掛かります。 私がどんなに弁護士として相談に乗るとしても、その依頼者の代りにはなれないというシチュエーションがたくさんあります。 日本人がアメリカに来て、アメリカの文化の中で会社を立ち上げ、そしてなんとか成功させていこうという事例は少なくないでしょう。 アメリカという土地は夢をくれますし、また希望をさえぎる壁もありません。 企業がアメリカに進出する場合、まず直面するのはお金がかかるということです。 必要以上の弁護士費用、会計士の費用そして賃貸に関わる費用など、両手では足りないくらいのお金が出ていきます。 そしてアメリカで事業を成功させることを任されて日本から送られる人達。 プレッシャーは考えられないものです。 日本企業が頭を悩ませる要素の一つに人事関係があります。 偏見やセクハラなどどのような企業においてもアメリカでは直面しなければなりません。 私は日本人の上司であるということだけでプレッシャーとなる事例を沢山見ています。 わがままな被用人、そして理解を超えた文化の差、現地にいるだけで気の遠くなる問題が待っています。 アメリカで人を雇うということは日本の本社でもわかってくれない場合もあり、アメリカにいる経営者としての日本人としてのサラリーマンと板ばさみになってしまうという事例がほとんどでないかと思います。 何年か前に、セクハラを受けたという女性を代理して、日本の企業を訴えたことがあります。私は、間違っていると思えば、弁護士として日本企業でも、その間違えを認めて悪いことは正すべきと信じています。 長い目で見た場合、日本の企業にその方が良いからです。 ある事件で原告の女性から事情聴取をして、セクハラに間違いないというケースがあり、日本企業相手に訴訟も辞さないという構えを取っていた事件がありました。 相手方となった日本の企業の責任者は日本人。そして実際にセクハラをした人はアメリカ人でした。事件を仲裁に持っていき、話し合いをすることになりました。そのアメリカ人は、ほとんど、言葉を口にせず、石像のように、黙っていました。私は、同僚の弁護士とともに、弁論を間髪おかずに繰り広げ、相手をやり込めようとしました。 私達原告側の弁論を受けて、口を開いたのは、そのセクハラをしたアメリカ人ではなく、日本人の代表者でした。その人は、会社が出来る限り、そしてその人個人が出来る限り従業員の面倒を見ようとがんばっていたということを中心に反論を加えました。内容的には、要するに会社側がどんなにその原告となった被用人に対し、充分な誠意を示していたかということを言いたかったのです。 その、日本人の代表者の理論としては、ちょっと的外れの感がありました。しかしその訴えられた会社を背負って会社のために必死になって弁論した姿には、心を打たれるものがありました。その人の立場からは自分の勤めている企業が一つの民事事件によって打撃を受けてしまうということが深刻な問題となることを理解していたのでしょう。 仲裁は、原告として満足のいく内容でしたがそれ以上に、私はその被告となった日本企業アメリカ現地法人における経営者の最後の潔さと日本人としての誠意を忘れなかったことに敬意を表しました。 仲裁人の判断を元にして和解が成立した後、去って行ったその日本人経営者の背中は、連れてきたアメリカ人弁護士より、威風堂々としていました。アメリカでの企業経営の難しさはありますが、日本人が問題を乗り越えてビジネスを切り開いていく姿は敵ながら一種、頼もしさを感じました。頑張れお父さん。
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