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■沈まぬ太陽 ブック・リビュー■

弁護士 鈴木淳司
 

 つい最近アメリカ弁護士会の会合に日本から出席された法学部の教授から山崎豊子さんが書いた「沈まぬ太陽」をいただきました。 週末を使い全5巻全3部の大作を一挙に読み終えました。 私の所属する日本の弁護士団体が主催するメーリングリストとでも相当話題になったり、日本全国でベストセラーとなっていたので、ぜひ読みたいと前々から思っていましたが、案の定、一度読み始めると本を手から離す時間がもったいなく夜更かしも気にせず読みました。読み終わってもお腹のなかにずしっと重い錘が入ったような余韻がしばらく消えませんでした。 この原稿を書いている今も思い出すと胸に込み上げてくるものがあります。 読んでいる間は涙をとめることができませんでした。

 作者の山崎さんが実際にアフリカで出会ったある人物を主人公となっている「恩知元」と名付け、この本が誕生しました。 フィクションとは題しているものの緻密な取材やインタビューで限りなくノンフィクションに近いフィクションに仕上がっています。 実際の人物と小説の中の人物との対象表まであるくらいですから。 恩知は日本の航空会社「国民航空」のエリートサラリーマンででしたがあるきっかけから労働組合の委員長になります。 経営側と対峙して労働者の環境や給与の改善に尽くします。 ところが、ストを断行するなど組織を糾そうとしたことにより会社側から足掛け十年カラチやナイロビといった極地に「流刑」に出されてしまいます。
不合理かつ腐敗した組織になぜここまで抵抗するのだろう? 政治や組織がらみの利権争いに巻き込まれつつ黙々と生き、不屈の精神で組織に対抗する恩知元。 対して言葉を失うほどの汚れた人間達。 人の命を預かる、それも日本のフラッグシップを掲げる航空会社が利権をむさぼる人間に食い物にされるのが常識となっている状態。 多数の声をまとめる政治家と逆で、弁護士という職業は少数でも正義があると感ずれば追求する仕事です。 この小説を読んで私は勇気を与えられ、弁護士を続けていける意義を教えてもらったと感じています。
この題材となった航空会社はこの小説が週刊新潮に連載されてから機内でこの週刊誌をのせないようにしたそうです。 そういった体質は治らないのでしょうか。 主人公の恩知さんの原型となった人は日本に帰任して閑職におかれ、その後再度アフリカ勤務を命じられました。 山崎さんが取材に行ったときにはまだアフリカに住まわれていたということです。
恐ろしい組織による抹殺だとつくづく思いましたが、このような不合理さが平気でまかり通っている日本の会社組織のイメージが焼き付いて離れません。 絶対に何かを吸収できる小説ですから読んでみてください。 お勧めです。

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